【連載小説】w 「あたしの道草」⑩
(十)
リエちゃんとあたしは、5階にあるアンダーウェアのショップに行ってみた。
実際にショップに来てみると、意外にカラフルで、下着っていうより水着みたいな感じ。壁にブーメランみたいに色とりどりのパンツが並んでいて、リエちゃんもあたしもちょっと恥ずかしくなったんだけど、なるべく気にしないように堂々と、当たり前のようにお店の中に入った。
でもやっぱり、よく見ると、なんか熱帯の爬虫類みたいなイメージのものが多いみたい。そういうブランドなのかな。
パパがこんなの履いているのは見たことがないし、こういうのは海外のダンサーが履いているイメージがある。
いろんな種類のアンダーウェアが並んでいる店内を軽く見渡して、リエちゃんは、あたしに囁いた。
「やっぱり買うのはネットにするわ、イメージとちょっと違うし、なんか恥ずかしくなってきた。今日はリサーチだけ」
「わかった」
あたしも、そのほうがいいと思った。だって意外に刺激的で選ぶ余裕はなさそう。
あたしは、なんだか裸の男の人たちに周りを囲まれているような気分になってた。
特に、男の人の下半身だけのマネキンが刺激的で、あたしはドキドキしてた。
「マリに聞いてもしょうがないけど、やっぱりボクサーパンツがいいと思うんだよね」
「え!」
あたしも男の人のパンツのことは、実はよく知らなくて、パパが履いてた海水パンツみたいなのや、弟のケンタの子供っぽいパンツしかイメージがなかったんだけど、例えばこのマネキンが履いてるのは、よく見るとボクサーっぽい感じもするね。こんなにピッタリとはしていなかったような気もするけど。
「そうだね、確かに」
と、あたしは答えて考えた。
弟のケンタは、いつもママが買ってくる白いブリーフっていうの? を履いてるけど、さすがにサカガミさんには、ああいうのは子供っぽいよね。でもダンサーやプロレスラーみたいな人が履いているような三角の小さいのは刺激が強すぎるっていうか、そんな気がする。あ、でも付き合ってるなら、関係ないか。
スポーツジムのお姉さんは、その下着をどうやって選んだかは教えてくれなかったから、その選び方はあたしにはわからない。
でも、男の人はどうやって自分の下着を選ぶのかな。
そこまで考えて、あたしは、リエちゃんに気になってたことを小さな声で聞いてみた。
「リエちゃん、パンツのサイズってわかるの?」
「え、うーん大体ね、、」
「へえ、そういうものなんだ、、やっぱりわかるものなの?」
「うーん、MかLとか? くらいじゃないかな、、」
なんだか生々しくて、あたしは顔が火照ってきた。
「マリ、なんでそんな真っ赤な顔してるの」
あたしは恥ずかしくて「へへ、、」って照れ笑いしたんだけど、やっぱり恋人同士だとそういうこともわかるんだね。
あたしがニヤニヤしているとリエちゃんは、あたしの顔を見て、ハッとしたように
「あ、マリ! まさかと思うけど 下着のサイズってそのサイズじゃないからね」
「え?」
「あんた、男物の下着のサイズってなんの大きさだと思ってる?」
「え? えっと、その、だから、、男の人の、、」
だから違うって! と、リエちゃんはもう一度言って、あたしの腕を引っ張ってショップの外に出た。
エントランスのとこまで来て、リエちゃんはアハハハ!を可笑しそうに笑った。
「マリ、あんた変なこと考えてたでしょ、違うよ! アハハ! LとかMってマリが考えてるそのサイズじゃないよ!」
あたしは、よくわからなくて、えーでもって言ったんだけど、やっぱりあたしは何か勘違いしてたみたい。
「ええ、じゃあ、LとかMってなんの大きさなの?」
ってあたしは、リエちゃんに聞いてみた。
リエちゃんは笑いをこらえながら、
「いや、だから、それはパンツの大きさでしょ! だから、、まあウエストとか腰回りとかじゃないかな、たぶん」
と言った。
そうなんだね、知らなかった。あたしはてっきり、、。
なかなかドキドキが収まらなくて、あたしは、あたしも人間で、人間も結局、動物なんだなあって思った。
キリスト教では、人間は動物と違っていて、動物を支配してもいいってなってるけど、人間も結局動物だと思うんだよね。生き物って意味では動物も人間もそんなに変わらないって思うんだよね。
でも、たまたまアルバイトで行った教会にいた神父さんは、キリスト教では、人間と動物は明確に違うって言ってた。動物は、人間に奉仕するためにいるんだって。
まあでも、あんな下半身だけのマネキンに囲まれてると、やっぱりちょっと刺激的でドキドキするよね。リエちゃんも言ってたけど、こういうのはネットで買ったほうがいいとあたしは思った。ネットならじっくり選べるしね。
リエちゃんは、まだクスクス笑ってる。そんなに可笑しかったかな。まあでも、プレゼント自体は買えたわけだし、とりあえずよかったね、リエちゃん。
「あたしの道草」⑪へ続く
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