【連載小説】w 「あたしの道草」⑪
(十一)
「ふーん、そうなんだねーあたしはてっきり、、、だってブラジャーは胸の大きさだから、、」
あたしは、今日2杯目のグレープフルーツジュースを飲みながらリエちゃんに言った。
あのあと、リエちゃんとあたしは、もうアンダーウェアのショップには戻らなかった。
あたしたちはそのままデパートを出て、駅前のコーヒーショップでドリンクを飲んでいた。
「まあ、そう言われてみれば、マリが勘違いするのも分からなくもないけど、、考えたこともないな、、いや、でも、やっぱ違うでしょ」
リエちゃんは、可笑しそうに言ってカプチーノを飲んだ。
「サカガミさんに聞いてみれば?」
「そんなこと聞けるわけないでしょ! まあ、とりあえずプレゼントは買えたから、、下着は無理にプレゼントしなくても大丈夫だし、、よく考えたらちょっと攻めすぎてる感じもするし今回はやめとくわ、、まあ、でもマリ、今日はありがとう、助かったわ」
リエちゃんは、そう言ってカプチーノのカップをテーブルのソーサーの上に置いた。
「いや、全然! あたしも楽しかった。でもリエちゃんって大人だよね、あたしは割とモテるんだけど、付き合うってなるとけっこう難しくて、、デートは何回もしたことあるんだけど、なかなかやっぱりそういう目で見れる人がいなくて、、あたしも誰かにプレゼントあげたいなあ」
「ん、まあ、マリは確かにモテるとは思うよ。私も何人かマリと付き合いたいって人を聞いたことがあるし、、でも、マリって結構、理想が高いんじゃない? 誰でもいいから付き合っちゃえばいいのにって思うけどね? 何事も経験だよ、、大体マリってどんな人が好きなの? 聞いたことあったっけ?」
リエちゃんにそう言われて、あたしはうーんって考えた。
あたしが好きな人のタイプ、、、。こういうことって何回か聞かれたことがあるんだけど、それまで聞かれる度にあたしは「ゲンズブール」って答えてたの。
フランスの俳優っていうか歌手の人なんだけど、日本では誰も知らないんだよね。
元々はママが好きだったんだけど、ママの影響であたしも好きになって、でもこれが本当に好きなタイプなのかっていうと、実はあたし自身も考えちゃうんだよね。だって、あたしは胸毛が苦手だから。
ママが若い頃にジェーン・バーキンに似てるって言われたことがあるらしくて、それでゲンズブールも好きになってっていうことみたいなんだけど、ママからしてもかなり年上なのに、あたしからしたらもう殆どご先祖様っていうくらい年が離れてるから、どうもなんかあたしみたいな若者が好きなタイプとしては、ゲンズブールを知っている人でもあまりピンとこないみたいなんだよね。あたしも、実際のところよくわからなくなってて、、。しかも、ゲンズブール自体がもう亡くなってるしね。
だからリエちゃんに「好きな人のタイプは?」って聞かれても、どう答えたらいいか考えてしまったんだよね。
あたしは、どんな人が好きなんだろう?
「とりあえず”年上”かなあ」
あたしは答えた。
「ざっくりしてるね、そういえば、なんかフランスのなんとかっていう俳優が好きって言ってなかったっけ」とリエちゃんが言ったからあたしは
「あ、そう、セルジュ・ゲンズブールね、確かに好きなんだけど、どちらかっていうとそれは母親が好きなんだよね、あたしには年上過ぎるから、、実際、もう亡くなってるしね、だから好きなタイプっていうと年上で、あと、大学関係以外かな」
と言ってみたんだけど、リエちゃんは、あたしの顔をしばらくじっと見て
「なるほどね、でも、それは好きな人のタイプとは違うんじゃない? 年上なら誰でもいいわけじゃないでしょ?」
と言った。
確かに、でもゲンズブールみたいな人がいたとしても、同じ大学の人だったら嫌だなあ。
「うーん、実際のところよくわからないんだよね、、あたしは自分がちょっと変わってるから、相手も変わってないと合わないんじゃないかなって思ってる。向こうでは変わってるのが当たり前だから、あたしもそんなふうに育ったから。あたしは、普通っていうのがよくわからないし、、大体、才能ある人って変わってる人が多いから、、」
リエちゃんとは、前にもこんな話をしたことがあるような気がする。リエちゃんは、とにかく誰でもいいから付き合ってみたらっていつも言ってる。
なるほどねえ、ってリエちゃんは言ってまたカプチーノを一口飲んだ。
「まあ、スズキさんがどうなるかだね、、私は意外といいんじゃないかなあって気もしてるけどね、、、向こうはマリのこと気に入ってるみたいだけど」
あたしも、実はスズキさんが気になってきてるんだよね。まだ顔も知らないし、どんな人かも、会ったこともないんだけどね。まあ特別な才能はなさそうだけど、だからといって悪い人ってわけでもなさそうだし、でも好きかといわれれば、当たり前だけどまだそんなことはないし、、とにかく可能性があるってだけでこんなにドキドキできるっていうことは、あたしもやっぱり動物っぽいね。
「あたしも、スズキさんにパンツをプレゼントしようかな」
「え?」
「いや、お近づきのしるしに、あたしも下着のパンツをスズキさんにプレゼントしようかなって、リエちゃんが羨ましくて、、あたし彼氏にパンツをプレゼントするのが夢なんだよね」
「いや、だから私は今回はプレゼントしないよ、、てか、あんたまだスズキさんと付き合うって決まったわけじゃないでしょ」
「そうなんだけど、だからお近づきのしるしに、、、」
「パンツを? プレゼントするの? マリ、あんたが言うと本気に聞こえるから、、一応言っとくけど、そういうことはやめた方がいいよ」
あたしとリエちゃんは、それから30分ほどそのコーヒーショップで話した。
リエちゃんは、色々やることが溜まってるから家に帰るって言って帰っていった。リエちゃんは、一人暮らしだからね。それだけでも羨ましいのに、彼氏までいていいなあ。
それから、スズキさんにパンツをプレゼントするのはやっぱりやめた。
リエちゃんに、初対面で下着をプレゼントされたらどう思うって言われて、想像したら笑いがこみ上げてきて、リエちゃんも「それヤバイでしょ!」って二人で爆笑。
確かに、付き合う前にそんなことしたら変だよねって納得。
「あたしの道草」⑫へ続く
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