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【連載小説】w 「あたしの道草」⑭

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(十四)

ガガガーッ! 

ガガガガーッ!

ガガガ、ガガガガーッ!

「ちょ、ちょ、マリ先輩!」

「なに? どした? 磯部コーハイ」

「試し弾きですから、そんないきなり激しい感じで弾くのはダメっすよ、マナー的に、、」

ねえ?、と磯部コーハイは、横にいた店員のお兄さんに言った。お兄さんが苦笑いをしているから、きっとそうなのかもしれない。

「そっか、ごめんなさい、、なにしろ弾いたことないからね、でもこういう前衛的な演奏もどこかで聴いたことある気がするんだよね」

店員のお兄さんが、ギターをアンプに繋いでくれて試し弾きをさせてくれるって言うから、あたしは例のSGギターを取ってもらって弾かせてもらっていた。

確かに、ジュリアンはもっと洗練された演奏をしていた記憶があるけど、そんな演奏はあたしができるわけないから、雰囲気で弾いてみたら、思いの外前提的な感じになって自分でもビックリ。アンプに繋ぐとこんなに大きな音が出るんだね。

「まあ、マリ先輩、最初は持った感じとか、重さとか、ちょっと音を鳴らしたときにシックリくるかとか、フィーリングを確認するんすよ、、どうですか、持った感じは?」

「いいね、とっても! 確かにあたしはギターはまだ弾けないから、フィーリングを確認するしかないね、その意味では、かなりシックリくる気がする」

「だそうです」

磯部コーハイは、横で見ていた店員のお兄さんに言った。

磯部コーハイに答えて「あ、はい」とその店員のお兄さんが言ったところで、後ろから別に店員さんが来てお兄さんになにか耳打ちした。

お兄さんは、ちょっと驚いたような顔をして耳打ちした店員さんを見て、あたしたちに「ちょっとすいません」と言ってお店の奥に行ってしまった。

店員のお兄さんが歩いていくのを見ていた磯部コーハイにあたしは言った。

「今度は磯部コーハイが弾いてみてよ、あたしはOK」

いやあ、オレが買うわけじゃないからなあ、と言いながら磯部コーハイはあたしからSGギターを受け取って、慣れた手つきでポロローンと鳴らした。

「磯部コーハイ、上手だね」

あたしは言った。

「コード鳴らしただけっすよ」

と言いながら磯部コーハイは、今度はどこかで聴いたことがあるような音階をギターで弾いた。

「あ、コレ聴いたことある!」

あたしは叫んだ。これ、ジュリアンも弾いてたような気がする。

「あ、知ってます? クラプトンっすよ、ギターの神様の」

「おお、けっこう有名人だよね」

たぶん、パパがドライブ中に掛けてた曲の中にもあったような気がする。

まあ、そうっすね、と言って磯部コーハイはさらに慣れた手つきで色々と音階をSGギターで弾いた。

「やっぱ、高いギターは弾きやすいっすねえ」

磯部コーハイは、SGギターを弾きながら言った。

「磯部コーハイ、ギター上手だね!」

一応、バンドやってますからね、と言って磯部コーハイは得意気に笑った。


それから磯部コーハイは、「やっぱいいわ」と言いながら、いろんな音階をSGギターで弾いていた。

「でも、マリ先輩、ギターを買うんなら”軽音”に入りませんか。マリ先輩が入るとみんな喜ぶと思いますし、それにそのほうがたぶん、ギターも早く弾けるようになりますよ、、あと、ライブもできますし」

SGギターをポロポロ弾きながら、磯部コーハイが言った。

「軽音って軽音楽部のこと? なるほど、いいかもね、、あたしは家に誰か来たときに弾いて自慢できればサイコーって思ってたんだけど、確かにライブとかしてみたいかも」

あたしは、ギターを持ってステージの上でジュリアンみたいに演奏している自分を想像してテンションが上ってきた。

「よし、決めた! あたし軽音楽部に入るよ、、そしたら磯部コーハイ、あたしにギターの弾き方教えてよ」

「え、あーいいっすよ、マリ先輩来てくれたらみんな喜びますよ、マリ先輩、よく話題に出るんで、、それに、アオヤマさんやハルヤマさん、コナカさんとか知り合いですよね」

「あ、そう、サクラちゃんやリンちゃんもそうだし、ワカナちゃんもリコちゃんも友達だからね、、でもこっちのサークルの合宿のときはいけないけどね」

「あの、、お客様」

さっきの店員のお兄さんがいつの間にか戻ってきててあたしに声を掛けてきた。

「あ、あの、このSGギター買います!」

「ええ!」

磯部コーハイが大きな声を出した。

「マリ先輩、27万円っすよ! ホントに大丈夫なんすか! そのへんに1、2万くらいのヤツありますよ」

「大丈夫、株を売るから」

磯部コーハイは、いやホント、マジか、、誰と話してるかわかんなくなるなあ、と言って店員のお兄さんを見て

「だそうです」

と言った。

店員のお兄さんは「あ、はい」と言って、ちょっとソワソワしながらあたしをチラっと見て、磯部コーハイに耳打ちするように小声でなにやら話しかけた。

「ええ! マジっすか!」

磯部コーハイは驚いたように言って、困惑したように、いや、まあ、大丈夫だと思いますけど、、ええ、、?とあたしの顔を見た。


「あたしの道草」⑮へ続く



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