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属人化は「性格」ではなく「設計」の問題|反・精神論 #13

ここまで、匠ストラクチャーのステップを順に見てきました。
けれど、どのステップを進めようとしても、
必ず同じ壁にぶつかります。
「この仕事は、あの人にしか分からない」——属人化です。
今回は番号を一つ進めるのではなく、全ステップに共通する
この壁を、正面から扱います。

「この仕事は、あの人にしか分からない」。
製造業の現場で、最もよく聞く言葉のひとつです。
多品種少量で、案件ごとに条件が違う現場ほど、
この属人化は深くなります。
そして、しばしば「熟練の技」として神聖視されます。

ひとつ、誤解のないように書いておきます。
日本の製造業を支えてきたのは、
まさにこの「熟練の技」です。
根底の技術の上に立つ、唯一無二の存在。

私自身、その価値を強く認識していますし、
技術だけでなく営業や業務にも
「熟練の技」に近い技能は確かに存在すると考えています。
そこは、安易に標準化してよいものではありません。

問題は、その本物の熟練の下に、
しばしば「エセ熟練の技」が紛れ込んでいることです。
本当は分類と設計で解けるのに、
「あの人にしかできない」とされている領域。

この連載で標準化の対象にするのは、
本物の熟練ではなく、この「エセ熟練」のほうです。

属人化の多くは、技でも性格でもありません。
分類、マスタ、採番が設計されていない、という構造の問題です。
同じ製品が違う品番で登録されている。
判断基準が誰かの頭の中にしかない。
受注と生産と請求で番号がバラバラ。
これでは、その人以外に引き継ぎようがないのです。

私は、属人化を3つの手順で解きます。
分類、命名、貫通です。
まず受注を「定型・準定型・特殊」に分類する。

次に同じものが違う名前で
登録されている状態を、命名規則で統一する。

最後に、受注から生産、請求まで同じ管理番号を貫通させる。
この順番が大事です。

◤ 「うちは特殊」の口癖を、私は1年分の受注で崩した

「うちは特殊だから、標準化できません」。
これは、私が最も多く聞いてきた言葉です。
ある現場でも、受注の半分以上が「特殊案件」と
呼ばれ、ベテランが一件ずつ判断していました。
「うちは特殊だから」が、口癖になっていた。

私は、その「特殊」を、
感覚ではなく数字で確かめたかった。
過去1年分の受注を全部出してもらい、
一件ずつ、定型・準定型・特殊に分類していきました。

地味で、骨の折れる作業でした。

分類し終えて、数字がはっきり語りました。
本当に特殊だったのは、全体の2割弱。

残りの大半は、条件の組み合わせが違うだけの、準定型でした。
準定型に降ろせた案件は、判断の手順を表にできました。

ベテランでなくても処理でき、
ベテランは本当に難しい2割に集中できるようになった。

「特殊だから」は、技術の話ではなく、
分類していなかったことの言い換えだったのです。

「標準化したマニュアルは、結局使われない」
という経験もあるでしょう。
使われないマニュアルは、
たいてい分類と命名が甘いまま手順だけ書いたものです。

分類→命名→貫通の順を踏めば、マニュアルは
「探せば必ず該当がある」状態になり、使われます。

「標準化すると、職人の価値が下がるのでは」という懸念もあります。
逆です。
雑用的な判断から解放されたベテランは、
本当に高度な仕事に時間を使えるようになる。

標準化は職人を否定するのではなく、
職人を最も価値の高い場所に集中させる手段です。

順番がなぜ大事か。
分類がないまま名前だけ統一しても、
どのまとまりに入れるかが決まらず、
また属人化に戻ってしまうからです。

分類して、命名して、貫通させる。
この順で進めて初めて、標準化は崩れずに定着します。

属人化を本人の優秀さの問題にするかぎり、
解決は本人の引退とともに失われます。
設計の問題として扱えば、組織に残る資産になります。

正直に言えば、ここには私自身の迷いもあります。
どこまでが「設計で解けるエセ熟練」で、
どこからが「触れてはいけない本物の技」なのか。

その線引きは、いつも明快ではありません。
私も何度か、標準化すべきでないものまで
型にはめようとして、現場の反発を受けました。

線引きを誤らないことが、この手法の一番難しいところです。
それでも、分類から始めれば、
少なくとも「何が本当に特殊か」は見えてきます。


第12話 https://note.com/human_crab7218/n/nd9932e929a94
第14話 https://note.com/human_crab7218/n/n31254f3711ae

✓ 今日できる一歩
・直近1年の受注を「定型・準定型・特殊」に分類してみる。
・「特殊」のうち、条件の違いだけのものがないか見直す。

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