無駄は探さない。「あるべき姿」から消す|反・精神論 #12
気づけば、同じ数字を3回入力している。
その無駄は、頑張りでは消えません。設計で消します。
業務改善というと、「もっと効率的に」と
いう掛け声で終わりがちです。
けれど、効率は気合で
上がるものではありません。
匠ストラクチャーの
STEP3、業務設計は、
いまの仕事の流れを正確に描き、
あるべき流れとの差を埋める作業です。
出発点は、現状の徹底的な可視化です。
誰が、何を、いつ行っているか。
どんな帳票を使い、どこで数字が決まるか。
これを一枚の流れ図にすると、
たいてい同じ発見があります。
同じデータを何度も入力している。
似た帳票が2種類並んでいる。
ルールが口頭でしか伝わっていない。
現状を描いたら、あるべき姿を設計します。
・重複する作業を一つにする。
・帳票を統一する。
・口伝のルールを書き出す。
・受注から生産、請求までの数字を一つにつなぐ。

視覚化するとわかりやすくなります。
これらは派手な改革ではありませんが、
効き目は確実です。
フロー図やマニュアルを作るときのコツは、
小学生でも分かるレベルまで噛み砕くことです。
「自分用のあんちょこ」ではいけません。
とはいえ、自分のやっていることを
全部おおやけにするのは、本人にとって
怖いことでもあります。
手の内を明かせば
「サボっていた」と思われるのでは、
という不安もある。
だからこそ経営者は、すべてを出すことは
ポジティブな行為だと伝え、
それを評価する必要があります。
隠さず出すことが得になると分かれば、
人は自発的に動いてくれます。
◤ 同じ数字を3回打っていた現場で、私が描いた一枚
ある現場で、受注情報の流れを一枚の
図に描いたことがあります。
描いてみて、私自身が驚きました。
同じ受注内容を、営業が表計算ソフトに打ち、
製造が別の管理表に打ち直し、
経理が請求システムにもう一度打っていた。
同じ数字を、3回です。
誰も悪くありません。
それぞれの持ち場で、それぞれが
真面目に入力していただけです。
けれど、転記のたびにミスが生まれ、
数字が合わない原因になっていました。
やったことは、単純でした。
受注を一度入力したら、製造と請求は、
それを参照するだけにする。
入力は、3回が1回になりました。
ミスは減り、ざっと見積もっても、
この一点だけで関係者の作業が月に20時間ほど浮いた。
年間で240時間、丸々1ヶ月分以上の
労働時間が消えた計算です。
派手な改革ではありません。
けれど、この種の無駄は、描いて初めて見えます。
頭の中だけでは、誰も
「自分が3回目を打っている」
とは気づかない。
一枚の図が、それを暴くのです。
私が見てきた範囲では、帳票を整理するだけで、
業務時間の1〜2割が戻ることも珍しくありません。
「フロー図なんて作る暇はない」
という反応はもっともです。
けれど、図は立派である必要はありません。
紙一枚に、誰が何をどの順で
やっているかを書くだけでいい。
完璧な図より、まず粗い一枚。
それだけで、重複と手戻りの大半は見えてきます。
可視化のハードルを、自分で上げないことです。
「うちの業務は特殊だから、図にできない」
という声もあります。
しかし、特殊に見える業務ほど、描く価値があります。
描けないのは複雑だからではなく、
誰も全体を把握していないから。
図にする過程そのものが、
属人化していた業務を表に出す作業になります。
ここで大切なのは、
「やっているつもり」と
「実際にやっていること」の
差を直視することです。
多くの現場は、自分たちの業務を
正確には把握していません。

描いてみて初めて、無駄の在りかが見えます。
見えない無駄は、消せません。
正直に打ち明けると、私自身、
長いあいだ「もっと効率的に」
と号令をかける側でした。
流れを描くより、声を張るほうが、
仕事をしている気になれたのだと思います。
何も変わらない日々が続いて、
あるとき、観念して紙とペンで流れを追いました。
書き進めるほど、自分が「改善しろ」と
言っていた当の現場が、実は一度も全体像を
持っていなかったことが分かってきた。
無駄は、現場の怠慢ではなく、
誰も流れを描いていなかったことの結果でした。
叫んでいた自分が、
いちばん流れを見ていなかったのです。
業務設計は、次の数値設計の土台になります。
流れが整理されて初めて、
どこで数字が生まれるかが見えるからです。
第11話 https://note.com/human_crab7218/n/n3f661bd71255
第13話 https://note.com/human_crab7218/n/nd02cbaa8102a
✓ 今日できる一歩
・主要な業務を一つ選び、
「誰が・何を・どの帳票で」を1枚に描く。
・同じデータを2回以上入力している箇所がないか探す。
