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社長がいないと、何も決まらない会社|反・精神論 #11

何でも社長に聞かないと決まらない。

それは社長が優秀すぎるからではなく、
判断が設計されていないからです。

成長していく会社で、よく起きることがあります。
判断がすべて社長に集まり、社長がボトルネックになる。
現場は「これは社長に確認しないと」と止まり、
社長は細かい判断に追われて本来の仕事ができない。

匠ストラクチャーのSTEP2、判断設計は、この状態をほどく作業です。

鍵は、判断の基準と権限を、言葉にすることです。
多くの会社では、判断基準が社長の頭の中にしかありません。

だから誰も代われない。これを外に出し、
「この条件ならこう決める」
「この範囲は現場が決めてよい」と明文化する。

すると、社長でなくても同じ判断ができるようになります。
判断基準表と権限委譲表。

この二つを作るだけで、現場の動きは変わります。
何を自分で決めていいかが分かれば、人は動けます。
前に「自分から動け」は権限の設計不足だと書きましたが、
その設計を、ここで具体的に行うわけです。

ただし、経営者側にも釘を刺しておきます。
判断を現場に渡す前提として、
社長自身の判断がぶれないことが要ります。
従業員は「あのときはこうだった、なぜ今はこの判断なのか」
という食い違いに、驚くほど敏感です。

経営判断が状況で変わること自体は当然です。
問題は、変化の基準に辻褄が合っているか。

判断基準表と権限委譲表を明文化していないと
判断がぶれやすく、企業への不信感につながります。

基準が一貫していれば、判断が変わっても現場はついてきます。
ぶれているのは判断ではなく、基準のなさなのです。

◤ 「3万円まで」の一行を引いた日
ある会社では、少額の備品ひとつ買うのにも、社長の決裁が要りました。
現場は承認を待って手を止め、社長は一日に何十件もの
細かい承認に追われている。

私は、その承認の山を1日分、横で見せてもらいました。
ほとんどが、数千円から数万円の、考えるまでもない買い物でした。
私は社長に、紙に一行だけ書いてもらいました。

「3万円までの消耗品は、現場責任者が即決してよい」。

社長は、ペンを持つ手を少し止めました。

「勝手に使われませんか」。

その不安は、よく分かります。
けれど、結果は逆でした。承認業務は大きく減り、
現場の手待ちは消え、そして責任者は、
以前よりむしろ慎重に金を使うようになった。

任されると、人は雑になりません。
自分の判断で決めた瞬間に、
その金は「自分ごと」になるからです。
線を一本引くだけで、社長依存は構造的にほどける。

私は、それを目の前で見ました。
「現場にそこまでの判断力はない」と感じる経営者もいます。
しかし、判断力は権限とともに育ちます。
決めさせないから、決められないまま育つ。

最初は小さな範囲から渡し、結果を一緒に振り返る。
それを繰り返すうちに、現場の判断力は確実に上がります。
任せないことが、判断力の育たない構造を作っているのです。

「権限を渡すと統制が効かなくなる」という不安はもっともです。
しかし、すべてを渡すわけではありません。
重要な判断は社長に残し、
日常的に繰り返される判断を現場に降ろす。

この線引きそのものが設計です。
線が引かれていないから、すべてが社長に集まってしまうのです。
判断が分散すると、現場に当事者意識が生まれ、意思決定が速くなる。

会社全体の反応速度が上がります。
これは、競合と戦ううえでの実質的な武器になります。

私自身、判断がすべて自分に集まり、
自分がボトルネックになっていた時期があります。
現場は確認待ちで止まり、
私は細かい判断に追われ続けた。
誰も代われない状態を、自分で作っていたのです。

判断基準と権限を言葉にして外に出したとき、現場が自走し始めました。
手放すのは怖かった。

もしかしたら、自分が握っていることが自分の存在価値だと
心の底では、思っていたのかもしれません。

けれど、手放さなければ会社は回らない。
ぎゅっと握っていた手を開いて、ようやく
それを知りました。

すべての判断を基準表に落とせるわけではありません。
前例のない一手、会社の命運を分ける決断は、
基準化できないからこそ社長に残る。
判断設計とは、社長が「本当に社長にしか下せない判断」だけに
集中できるようにすることです。

最後に
どれだけ基準を設定しても、基準を設定した本人である
社長が判断を誤ることはあるでしょう。
その時は従業員よりも大きな声で
謝るのです。会社に対し、従業員に対し。

立場的に社長の上はいません。
怒ってくれる人がいないのです。

だからこそ、自分から、心から謝る。
その1つの行動が信頼へと変わります。

従業員の為にも会社の為にも判断を誤ったら
心から謝ってください。



第10話 https://note.com/human_crab7218/n/nee221ed9884e
第12話 https://note.com/human_crab7218/n/nd9932e929a94

✓ 今日できる一歩
・社長に集まっている判断のうち、繰り返し型のものを3つ書き出す。
・そのうち1つを「この条件なら現場が即決」と基準化して渡してみる。

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