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「売上を上げろ」では、会社は動かない|反・精神論 #10

問題が多すぎて、どこから手をつけるか分からない。
その混沌を、分けて並べることから始めます。

経営の問題は、いつも混沌として現れます。
クレーム、売上の停滞、人の離職、資金繰りの不安。
これらが同時に押し寄せ、どこから手をつけるべきか分からなくなる。

匠ストラクチャーのSTEP1、構造診断は、
この混沌に秩序を与える作業です。

やることは三つ。
『分ける』、『並べる』、『関係づける』。
大きな問題を扱える大きさに分解し、
意味のあるまとまりに並べ、
要素どうしの因果や優先順位を明らかにする。

たとえば「売上が下がった」は、
「顧客数の減少」「単価の低下」「購入頻度の減少」に分けられます。
分けるだけで、見るべき場所が絞られます。

問題を扱える大きさに分解する

前回紹介した5つの構造――判断・業務・数字・市場という流れと、
それを支える情報基盤の土台――は、
この「分けて見る」ための枠そのものです。

◤ 「売上を上げろ」の号令を、私はいったん止めた「売上が下がった、なんとかしろ」。そう号令がかかっている現場に、私は入ったことがあります。号令は飛んでいるが、誰も具体的に何をすればいいか分からない。

空気だけが重い。
私はまず、その「売上が下がった」を分解させてほしいと頼みました。
顧客数か、単価か、購入頻度か。
三つに分けて、それぞれの数字を実際に並べてもらったのです。

並べてみると、答えは一目瞭然でした。

顧客数は減っていない。
単価も変わっていない。
落ちていたのは、購入頻度だけでした。

3つの分解

さらに掘ると、ある主力顧客の発注サイクルが、
じわりと延びていた。原因は、たった一点に絞られたのです。

「売上を上げろ」からは、何も具体策が出てきません。
けれど「あの顧客の発注頻度が落ちた」まで来れば、
やることは決まります。
なぜ頻度が落ちたかを、聞きに行けばいい。
分けて見るとは、漠然とした不安を、
対処できる課題に変える作業なのです。

「分けている時間があったら手を動かせ」
そんな空気があるかもしれません。
その空気こそ、構造診断が最も必要なサインです。
分けずに手を動かし続けて解決しなかったから、
今その問題が残っている。

一度だけ立ち止まって分けることは、
止まることではなく、正しく動き出すための助走です。

「分けるのは分かるが、面倒だ」と感じるかもしれません。
しかし、分けずに動くほうが、結局は遠回りです。
原因が特定できないまま打つ手は、
たいてい的を外し、時間と費用を浪費する。

最初の分解に半日かけるほうが、
見当違いの対策に数か月を費やすより、はるかに速い。

構造診断で気をつけたいのは、
最初から原因を決めつけないことです。
「たぶん営業の問題だ」と思い込むと、
その箱しか見なくなる。

実際には、別の箱に本当の原因が
隠れていることが少なくありません。
だからまず、漏れなく分けて、全体を眺める。
この段階で精神論は一切使いません。
「やる気の問題」と片づけた瞬間に、診断は止まります。

そうではなく、「この構造のここが見えていない」と、
欠落を具体的に指さす。それが構造経営の診断です。

分けるときのコツは、二つあります。

ひとつは、必ず数字で確かめられる粒度まで下ろすこと。

「営業が弱い」では確かめようがありませんが、
「特定顧客の発注頻度が3か月で2割落ちた」なら、
事実かどうかを数字で検証できます。

もうひとつは、分けた要素を一枚の紙に横並びにすること。

頭の中で分けても、すぐ元の混沌に戻ります。
紙に書き出して初めて、
「この要素とこの要素は、実は同じ原因から来ている」
といったつながりが見えてくる。
分解と可視化は、セットなのです。

分けるときの2つのコツ

正直に言えば、構造診断という発想を持つ前の私は、
見る前に答えを決めていました。
経験がある分、現場に入った瞬間に
「これだ」と当たりがついてしまう。
その当たりは半分は合っていて、半分は外れていた。
そして外れていた半分こそ、
たいてい本当の急所だったのです。

決めつけた箱を磨いているあいだに、
隣の箱が静かに腐っていく。
それを何度か繰り返して、
ようやく順番を逆にしました。
見立てる前に、まず分ける。
当てる自信があるときほど、
いったん全部を並べる。

構造診断の価値を、
私は失敗から学んだのです。

第9話   https://note.com/human_crab7218/n/nc4b6bf16ee7e
第11話 https://note.com/human_crab7218/n/n3f661bd71255

✓ 今日できる一歩
・今いちばん気になっている問題を一つ選び、
 3つ以上の要素に分解してみる。
・分解した中で「数字で確かめられる」ものを一つ選び、
 実際の数字を見る。


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