経営は、5つの構造でできている|反・精神論 #9
自社の問題が、漠然としていて掴めない。
そんなときは、経営を5つの構造に分けて見てください。
「うちは、何かうまくいっていない」。
経営の相談は、たいていこの漠然とした感覚から始まります。
どこが悪いのかは、本人にも言葉にできない。
ただ、うまくいっていないことだけは、確かに分かる。
この霧のような感覚を、具体的な課題に変える最初の一歩が、
構造に分けて見ることです。
経営を5つの構造に分解して診ます。
判断、業務、数字、市場、そして情報基盤の5つです。
大事なのは、この5つが同じ平面にバラバラに
並んでいるのではない、ということです。
前の4つ――判断、業務、数字、市場――は、
経営の「一本の流れ」です。
何を基準に決め(判断)、
その決定をどう実行に流し(業務)、
結果を数字で確かめ(数字)、
市場の反応を受け取って次の判断に戻す(市場)。
この流れがぐるりと回って、経営は前に進みます。
そして5つ目の情報基盤は、この流れと並ぶものではなく、
4層すべてを下から支える「土台」です。
マスタが整い、データが流れ、デジタルが現場に根づいている。
この土台があって初めて、上の4層がなめらかに動きます。
土台が歪んでいれば、どれだけ判断や業務を磨いても、
流れはどこかで詰まります。

◤ 「全部ダメ」と頭を抱えた経営者に、私がしたこと
ある経営者が、開口一番こう言いました。
「うちは、もう何もかもダメなんです」。
表情には、本気の疲れがありました。
以前の私なら、その言葉を真に受けて、
一緒に全部を立て直そうとしていたと思います。
けれど私は、いったんその「全部」を、
5つの箱に分けて聞くことにしました。
判断、業務、数字、市場、情報基盤。
一つずつ、具体的に何が起きているかを尋ねていく。
聞き終えて、私の手元のメモには、はっきりした濃淡が出ていました。
業務は、意外なほど整理されている。
数字も、追えている。
情報基盤も、それなりに動いている。
本当に赤かったのは、判断と市場の二つだけでした。
判断基準が社長の頭の中にしかなく、
顧客の声が設計に戻る回路もない。
この二つが、他の構造の努力まで台無しにしていたのです。
私は、その二つを指して言いました。
「全部ではありません。ここと、ここです」。
経営者の肩から、ふっと力が抜けたのが分かりました。
「全部ダメ」という感覚は、たいてい正しくありません。
本当は2つか3つの構造が弱く、そこが全体を引きずっている。
流れのどこが詰まっているのか、土台が崩れていないか。
分けて見れば、叩くべき急所が絞れます。
やみくもに全部を直そうとして消耗する前に、
まず5つに分けて、どこが本当に弱いかを特定する。
それだけで、打ち手は驚くほど明確になります。
「コンサルの分類法に当てはめられるだけでは」
と感じるかもしれません。
けれど、この5つは抽象的な理論ではなく、
現場で繰り返し詰まる場所そのものです。
・判断が滞る
・業務が流れない
・数字が見えない
・市場の声が戻らない
・土台のデータが汚れている
どれも、あなたの会社で実際に起きていることのはずです。
枠は借り物でも、埋める中身は自社の現実です。
私はこの5つの構造診断を含む一連の方法を、
「匠ストラクチャー」と呼んでいます。
匠は、守るべき技術と人を。
ストラクチャーは、それを支える構造設計を表します。
気合ではなく構造で経営する。
反・精神論を、実際に使える手順に落とし込んだものです。
次回からは、その中核である5つのステップを、ひとつずつ見ていきます。
正直に言えば、私自身、最初から
5つの構造で経営を見られたわけではありません。
次々起きる問題にもぐら叩きで対応し、
いつも火消しに追われていました。
問題を5つの構造に並べたとき、ようやく気づいたのです。
一つの構造ばかり手当てして、本当に欠けた構造を放置していた、と。
この枠を手にして初めて、
どこに力を入れるべきかが見えるようになりました。
第8話 https://note.com/human_crab7218/n/n48bd4bce70de
第10話 https://note.com/human_crab7218/n/nee221ed9884e
✓ 今日できる一歩
・自社を5つの構造(判断・業務・数字・市場の流れ+情報基盤の土台)に分け、
各々を10点満点で採点する。
・最も点が低いものを2つ書き出す。
それが当面の急所。流れの詰まりか、土台の崩れかを見極める。
