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【実践レポ】高校生が深海魚ゲームを本気で開発! ~XRで「遊んで学ぶ」新たな海洋教育コンテンツ制作への挑戦~

鳳凰高校サイエンスクラブでは、地域資源である深海魚とデジタル技術を組み合わせて、1年生(普通科未来探究コース)を中心に、遊んで学べる海洋教育コンテンツの独自開発をおこないました。

このnoteではDXハイスクール校としてデジタル技術であるXRをどのように活用しているのかといった視点から、既存のプロジェクトにデジタルを掛け合わせた事例を実践レポートとしてご紹介します。


はじめに(深海魚プロジェクト×XR技術)

タカエビと一緒に水揚げされる深海魚

鳳凰高校サイエンスクラブでは、南さつま市で水揚げされる深海魚の活用を目指し「深海魚プロジェクト」をおこなっています。深海魚は昭和40年代から続く伝統的なタカエビ漁で混獲されます。

混獲され未利用魚として扱われていた深海魚にスポットライトを当てるために、2021年度から南さつま市と連携して活動を行ってきました。

XRを体験する生徒

また、鳳凰高校では2024年度から文科省が推進する「高等学校DX加速化推進事業(以下、DXハイスクール)」に参画しており、学校としてデジタルを扱える人材の育成に力を入れており、現在は特にXR(VR・MR・ARを包括した言葉)活用を進めています。

2024年度はアバターを使った表現活動やMetaQuest3を活用した取り組みを中心に進めてきました。その結果、2025年度はデジタル活用に興味をもつ生徒たちが新設普通科へ多数入学してくれました。

その中でもゲームエンジンを扱える生徒や3Dモデリングに興味がある生徒、アバター表現に興味のある生徒が多数サイエンスクラブに入部してくれたこともあり、深海魚とXR活用の2つの取組みを融合できるようなコンテンツ制作が可能となりました。

第1章 なぜ、深海魚のXRゲーム?

2024年度の体験入学の様子(高校生が中学生のXR体験を案内している)

深海魚と鳳凰高校

2021年10月22日におこなわれた深海魚に愛称をつけるワークショップの様子

鳳凰高校ではこれまで南さつま市の地域資源である深海魚をテーマにプロジェクトを進めてきました。

深海魚は南さつま市沖の海域でおこなわれるタカエビ漁で混獲され、これまで廃棄されてしまっていました。

それではもったいないということで2020年8月に鹿児島大学水産学部と水産仲卸会社の(株)田中水産、そしてタカエビの産地である南さつま市の3者が産学官連携でタッグを組み、「かごしま深海魚研究会」が立ち上がりました。

2023年7月28日 深海魚を実際に食べてみる会を実施

鳳凰高校は2021年度からこの研究会の活動に参画し、「食」を重点テーマとして活動を実施しました。

プロジェクトスタート時はコロナ禍でもあり、制限がある中での活動でしたが、2年目、3年目と続けるうちに次第にプロジェクトの広がりが出てきました。

2023年11月5日に実施された「うみぽす甲子園2023」の決勝大会に出場したときの様子

これらの活動の積み重ねが社会的にも認められるようになり、その成果をコンテスト等で発表することで生徒の実績にもつなげることができるようになってきました。

2024年2月5日に実施した地元中学校での海の授業の様子

2024年度からはこれまでの「食」と合わせて「学び」の視点で南さつま市の深海魚にスポットライトを当てる活動にも注力しています。

2024年10月29日にかごしま水族館で写真の撮り方や解剖のアドバイスをいただく

深海魚を使った解剖教材をかごしま水族館にも協力していただきながら制作し、九州大学とコラボしたイベントを開催するなどして南さつま市内の小中学生に深海魚で南さつま市の海の豊かさや深海魚の魅力について学んでもらう活動もおこなってきました。

XRゲームと鳳凰高校

2024年度の体験入学で活動の成果を中学生に発表する生徒

DXハイスクール校として、2024年度からXR Meetup KagoshimamonoDUki合同会社と連携して、MetaQuest3やハイスペックPCなどのデジタル機器を活用した取り組みを行ってきました。

鳳凰高校のオリジナルアバターを話し合いながら制作している様子

上記団体に伴走支援をいただきながら生徒や教員向けのXR体験や、アバターを活用した学校紹介の動画コンテンツ制作をおこないました。

また、XR Meetup Kagoshimaが手掛けるタツノオトシゴXRというXRゲームも生徒に紹介していただきXRの魅力をさらに感じることができました。

タツノオトシゴXRを楽しむ鳳凰高校職員

タツノオトシゴを守るためにウニやアイゴをお寿司に変えるというユニークなゲーム設定はもちろん、臨場感のある音楽やそれに伴う没入感はゲームと一言で終わらせるのがもったいないコンテンツで、本校生徒はもちろん教員も夢中になっていました。

このコンテンツを本校生徒・教員や入学を検討している中学生にも体験をしてもらう過程で、このようなXRゲームを学校としても制作したいと考えるようになりました。

しかし、本校の普通科にゲームエンジンなどを使ったゲーム制作のノウハウがあるわけもなく、一からのコンテンツ制作はかなりのハードルがありました。

次の年の体験入学はタツノオトシゴXRに代わる学校独自のコンテンツを中学生に体験してもらいたいという願望はありつつも「本当にそんなことができるのだろうか」という不安もありました。

デジタルものづくりラボ(d-Lab)でMetaQuest3を試す新入生たち

そんな中、迎えた2025年度。本校普通科(特に未来探究コース)にはデジタルものづくりに興味のある生徒が多数入学をしてくれました。

さらに、Unreal Engineで一からゲーム作りができる生徒や、VRChatが大好きでUnityを学ぶ生徒がいることを知りました。また、3Dモデリング初心者の生徒が独学で学び、入学後たった3ヶ月の限られた時間で作りたいものが作れるようになりました。

これはやってみるしかない。

デジタル活用に興味がある生徒を集め、深海魚とXRを組み合わせたゲーム制作がスタートしました。

第2章 生徒たちの熱意が形に!深海魚XRゲーム「XR深海魚仕分け人」開発秘話

Unreal Engineで制作したものをMetaQuest3で試す様子

成長がブーストした制作過程

Blenderで教室のモデリングに挑戦する生徒

鳳凰高校ではDXハイスクールを活用して、生徒がいつでも自由に使えるデジタルものづくりラボ(以下、d-Lab)を整備しています。

d-Labではサイエンスクラブの生徒を中心に、放課後等の課外の活動(1日2時間程度)を活用してデジタルものづくりをおこなっています。

「深海魚をテーマにXRゲームをつくろう!」となる前も、生徒たちは自主的にd-Labに来て、自分が興味のある活動を行っていました。

ディスカッションをしながらゲーム制作をおこなう生徒

深海魚をテーマにしたXRゲームを制作するという方向性が決まってからは、「どうやったらゲームが面白くなるか、どんなモデルが必要か」を放課後に議論し、プロトタイプを作っては試行錯誤を繰り返しました。

また、GeminiなどのAIも活用し、ゲーム制作のノウハウについてアドバイスももらいました。

深海魚のモデリングを試行錯誤する生徒

ゲーム制作では、Blenderを活用して3Dモデリングする担当やUnreal Engineを活用してゲーム全体のプログラムをおこなうメインプログラマー担当、アバターを用いてゲーム内容を紹介する動画を制作する担当などに分かれました。

制作に関わった生徒たちはいずれも1年生のためサイエンスクラブが関わってきた深海魚プロジェクトについてはほとんど経験がありません。

深海魚の写真をもとにモデリングを試みる生徒

そのため、過去のサイエンスクラブの活動の記事やインターネットから情報を収集したり、実際に理科室で冷凍保存している深海魚を見たりするなどしてイメージを膨らませました。

これらの過程で生徒たちは、ゲーム制作に必要な情報を能動的に調べて収集したり、Unreal EngineやBlenderでこれまで自分ができなかったことを調べながら試行錯誤を繰り返したり、ゲームに必要な要素をチームでディスカッションしたりするなどチームとして急成長を遂げました。

そして約1ヶ月という短い期間で深海魚をテーマにしたXRゲームの第一号が完成しました。

遊んで学べるXRゲーム「XR深海魚仕分け人」

ゲームプレイ画面の様子

このゲームでは,1分間でベルトコンベアで流れてくる深海魚を正確に仕分け、それに応じたスコアを競います。仕分ける深海魚はタカエビ・スミクイウオ・アカカサゴの3種類です。

低確率で出現する黄金のタカエビ

極稀に黄金のタカエビが流れて来て、それを仕分けると大量に深海魚が流れてくる大漁タイム(フィーバータイム)に突入します。大漁タイムでは一定時間、ベルトコンベアを流れてくる深海魚の量が数倍に増えるため、ここでスコアを大きく伸ばすことができます。

ゲーム内にBlenderで制作した漁船やテトラポッドを配置

またXRゲームの舞台にもこだわっており、背景にはテトラポッドや漁船、かもめなどが見えるようになっていて、XRの中に漁師さんたちが働く漁港を再現しました。

「遊んでいるうちに南さつま市で水揚げされる深海魚の名前を覚えられる」
「南さつま市で働く漁師さんの仕事を体験できる」
「生の魚に触れることが苦手な人も海を感じることができる」

そのようなことを願いながら生徒はゲーム制作に取り組みました。

完成したゲームはサイエンスクラブのメンバーや教員、鳳凰高校コンソーシアムメンバーにも体験をしてもらい、フィードバックを得てそれをもとに改善を繰り返しました。

アバターになりきって制作した深海魚を紹介する動画

さらに、制作したXRゲームの説明に合わせてVRChatが好きな生徒がアバターを動かした動画を作成してくれました。

「動画を作って」という強制的なお願いではなく「こんなの作りたいんだけどアバターで動きつけられるかな?」と伝えると、こちらが何も言わなくても自主的に動いてくれたのが印象的でした。

このように自分の好きや得意を組み合わせて「深海魚仕分け人」は制作されています。

第3章 地域を巻き込む体験会で「面白い」「もう一回したい!」の声が原動力に

昨年度の体験入学で中学生にMeta Quest3を体験してもらっている様子

体験入学で未来の一年生にXRの魅力を発信

体験入学で中学生にXR深海魚仕分け人を体験してもらっている様子

XRゲームの制作チームはただつくるだけでなく、積極的に多くの人たちに体験してもらう機会もつくっています。

鳳凰高校の体験入学では来場する中学生に対し、今度は迎える立場としてXRの技術紹介や制作したゲームを体験してもらっています。

制作したゲームについて紹介する生徒

多くの人の前で自分たちが制作したゲームの説明をするのは初めての経験ですが、緊張しながらもゲーム制作の背景やゲームの内容を一つ一つ丁寧に説明をしてくれました。

一年前に体験入学でタツノオトシゴXRを体験してもらった生徒たちが、今度は自分たちのオリジナルコンテンツ「XR深海魚仕分け人」を未来の高校一年生たちに体験してもらっている姿はとても感慨深いです。

地域での体験会も実施!

XRゲームを体験する南さつま市の小学生の様子

さらに、南さつま市役所の1階にある市民ギャラリーで開催している鳳凰高校深海魚プロジェクトのパネル展でのXRゲーム体験会も企画しました。

体験会に来てくれた南さつま市内の子どもたちや大人の皆様に楽しんでいただくことができました。

「面白い」
「もう一回したい!」

と子どもたちが言ってくれたことが制作チームにとって励みになっているようです。

XRゲームを大人も楽しむ様子

さらに、現役のタカエビ漁師さんも駆けつけ、XRゲームの完成度に太鼓判もいただきました。

「誰もが面白いと思えるゲームをつくりたい」
そんな高校生の思いが深海魚XRゲームの原動力になっています。

累計体験人数は2025年8月22日時点でのべ503名となっており、背の低い子どもたちにも遊びやすくするために、途中でゲームのアップデートも加えています。

今後も多くの方に体験をしていただきゲームとしての完成度を高めて行く予定です。

第4章 XRと教育の未来 〜教育DXと地域の活性化に向けて〜

自動運転バスのラッピングデザインをXRを活用して発表する様子

デジタルの良さを生かす教育

授業内で3Dスキャンをした深海魚のモデル

深海魚プロジェクトや教育でデジタルを活用したいと考えたのは2024年度からです。

笹川平和財団「海洋教育パイオニアスクールプログラム」の一環で、Scaniverseというスマホアプリを活用して深海魚の3Dスキャンに授業で挑戦していました。

筆者(サイエンスクラブ顧問)は理科の教員なので、「本物に触れる」ことが一番解像度も高く、情報量が多いことは承知しています。

地元の図書館とコラボした深海魚の解剖教室の様子

しかし、現代の子どもたちには生の魚や昆虫が触れなくて恐怖すら感じる子もいて,そういった子たちにも楽しんで理科に触れてもらいと考えました。

またデジタルがこれだけ普及した世界で、積極的にデジタルの技術を使えるようになってもらいたいとも考えています。何も難しい技術ではなく、一つの教養としてデータを扱う術を身につけてもらいたいと考えています。

そういった思いから、教育を通じて子どもたちに効果的にアプローチするために、デジタルが普及した時代に生きるデジタルネイティブ世代に合わせた学校教育や授業の在り方monoDuki合同会社の鮫島歩さんと対話しながら試行錯誤してきました。

デジタルにはデジタルの良さがあり、リアルにはリアルの良さがあるため、「デジタルでなんでもできるよね」とか「リアルが一番だから無理してでも本物がいいよね」といった考え方になるのではなく、それぞれの美味しいところだけをつまみ食いしていけたらと考えています。

バーチャル上で考えたバスラッピングデザインを発表する生徒

その一つの取り組みとして個人的に印象に残っている事例が、昨年度南さつま市と連携しておこなった自動運転バスのラッピングデザインにXRを活用した事例です。

これまでの紙やペンに代わるものではありませんが、デジタルの良さを最大限生かして、立体のバスのデザインを立体で考えることは生徒からも好評でした。

学校を取り巻く環境がこれだけ変化している世の中で、学校の中の教育の方法も良いところをどんどん取り入れて変化させていく必要があると改めて感じました。

自己満足から一歩社会へ

ゲームの構想を練る生徒

実はUnreal Engineでゲームを制作した生徒はこれまでゲームはたくさん作ってきましたが、社会に向けて発信するようなゲームは作って来なかったようです。それはその生徒だけでなくサイエンスクラブに集まった生徒みんな同じです。

だからこそ、今回取り組んだ地域資源をテーマにしたゲーム制作は生徒たちにとって刺激となる実践だったように感じます。

自分もしくは友人同士で楽しむことも大切ですが、スキルを社会に活かす経験を高校生のうちに積み上げてほしいと考えています。なぜなら、それが社会で働く・社会に貢献するということに繋がるからです。

体験入学後の満足げな生徒たち

自分のスキルで目の前の誰かを喜ばしたり、社会で困っている誰かを助けたりするために、チームで刺激し合いながら成長する高校生活は彼らにとって貴重な人生の1ページになると信じています。

今回のサイエンスクラブの生徒たちが取り組んでくれたXRを活用した海洋教育コンテンツ制作は、制作側である生徒たちの成長とともにコンテンツを体験してくれた子どもたちの生物に対する意識の変容も促せるのではないかと考えています。

そういった意味で、深海魚に関するXRゲームの開発は深海魚プロジェクトの今後の大きな可能性を感じることができました。

これは、高校の教育をアップデートすることで、教育テーマとして取り上げる地域資源の活用法のアップデートも可能になるということを示唆していると考えています。

最後に

d-LabでXRを楽しむ生徒たち

今回の実践で改めて生徒たちの可能性は無限大であると感じさせてくれました。XRゲーム開発を通じて得られた生徒たちの成長を大切にし、ますます重要となる地域との連携をより深めていきたいと考えています。

また、この取り組み自体が従来のプロジェクト展開に一つの大きな選択肢を与えてくれていると考えています。XRという新たな可能性が加わったことで、別角度の切り口から生徒たちの活動をもっと魅力的にできると感じました。

「遊んで学ぶ」が今後も鳳凰高校サイエンスクラブの活動の重要な柱になり、深海魚プロジェクトだけでなく様々なプロジェクトにも良い影響を与えてくれることを願っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。生徒たちは今後も活動を通じて成長していくと思います。noteの更新頻度はそこまで多くはありませんが、定期的に更新をしていきたいと思いますので、この先の未来を見ていただける読者の皆様はフォローしていただけると幸いです。

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鳳凰高校サイエンスクラブ もし、この活動に共感してサポートいただけたらものすごく嬉しいです。サポートいただいたものは、次回の活動にすべて充てたいと思います。