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受験塾講師さくらママの日記ーこれは正しいのか?第一話多動症さらちゃんの受験①多動症といじめと中学受験

さらちゃんは、消化器内科の開業医さんのお嬢さんでした。私が出会ったのは、彼女が小学5年生の時です。
幼い頃に多動症(ADHD)と診断されていたさらちゃんは、塾の教室でじっと座って授業を受けることができませんでした。突然席を離れて窓辺に行ってしまったり、床の上に寝転がってしまったりすることは日常茶飯事。どの大手有名進学塾でも「他の生徒さんの迷惑になるから」と、保護者への数度の注意の末、退塾を余儀なくされていました。
学習成績も非常に厳しいもので、もうさらちゃんを受け入れてくれる大手有名塾はどこにも残されていませんでした。

そんな状況で困り果てていた時、うちの卒塾生のお母様から「さくら先生に相談してみたら」と紹介され、さらちゃんはお母様と一緒に私の元を訪ねてきたのです。
現れたのは、素直で愛らしい表情をした、子どもの可愛らしさに溢れたお嬢さんでした。

初めての面談の席で、お母様は多動症と診断されていること、塾をいくつも転々としてきたこと、成績が非常に悪いこと、そして体力がないことを話してくれました。
小学生にとって、中学受験はただでさえ大きな負荷がかかります。「これだけ学習上の課題を抱えていながら、どうしてそこまで中学受験を目指されるのですか?」と、私は率直に尋ねました。
すると、お母様の口から思いもよらない事実がこぼれ落ちたのです。
「学校でいじめに遭っているんです。暴力を受けていることもあり、命の危険を感じることすらあります。だから、地元の公立中学校にはどうしても行かせたくないんです」
「学校の先生には相談されたのですか?」
「しました。でも、先生が相手の子たちに聞くと、複数人で口を揃えて『みんなしていない』と答えたそうです。顔や腕、足など、目に見える部分には痕を残さないんです。服で隠れて見えないお腹やお尻、背中などに暴力を受けていました。久しぶりに娘と一緒にお風呂に入った時、私がみつけたんです……」
お母様はそのときの傷を写真に撮り、学校に掛け合ったそうです。しかし、先生の反応は冷ややかなものでした。
「うちの子は『こんな(多動な)子』ですから、先生にもまともに相手にされていないようです。『自分で転んだんじゃないですか。とりあえず注意して見ておきますから』と言われるだけで……。主人と一緒に相手の親御さんにも会いに行きましたが、向こうは割としっかりしたお子さんたちらしく、こちらが話す根拠が曖昧だと言いくるめられてしまいました」

お母様の話をじっと聞いていた私は、さらちゃんに向き直りました。
「辛い経験をしたね。さらちゃん、ここではそんな痛いことは絶対に起こりませんからね」
私がそう語りかけると、彼女は少し安心したように、小さく頷きました。

現状、彼女の学力は厳しいものでした。地元の進学校を上からA、B、C、D、E、Fとランク分けするならば、さらちゃんの大手模試の結果はどれも「Fランク」でした。それにもかかわらず、お母様は最難関である「A校」への進学を希望されていました。

私は、中学受験を希望されるご家庭には、必ず両親揃って面談に来てもらうことにしています。中学受験は、ご両親の意見が一致していないと絶対に上手くいかないからです。
特にお母様が周囲に影響されて、受験へ過剰にのめり込んでしまうケースは少なくありません。ママ友の話に刺激されたり、ご主人の反対意見に逆に火がついてしまったり、「母親としてのステータス」のためだったりと、要因は様々です。

しかし、ご主人の同意を得ていない受験は、往々にして後半に悲劇的な結末を迎えます。最大の理由は金銭的な問題です。母親だけで突っ走ってしまった結果、ご主人の金銭的援助が受けられず、自分の貯金を使い果たしてしまい、その結果、受験費用や入学金が払えず、最終的に子どもがせっかく血の滲むような努力をして合格を勝ち取ったにもかかわらず、それを諦めざるを得なくなった可哀想な場面を、私は若い頃に何度も見てきました。
だからこそ私は、入塾の際に両親面談を行い、特にお父様が受験をどう捉えているのか、バックアップの体制はどうなのかを念入りに確認するのです。
私への月謝のお支払いが少し遅れるくらいなら、いくらでも待てます。子どもが頑張れる環境を私が守ってあげられるなら、それでいいからです。しかし、子どもが必死に頑張って勝ち取った合格を、大人の金銭的な理由で「なかったこと」にされるのだけは、絶対に避けたいのです。

もし、最初から私立へ進学させる経済的・環境的な予定が立たないのであれば、中学受験自体をしないという選択肢もあります。その代わりに、公立の学習を3学年分ほど先取りして進め、高校受験、ひいては大学受験で開花させる方法もあります。私はその子の能力と家庭の状況を見極めながら、最適な提案をしたいと考えています。教育は各家庭によって違っていいのです。教育のゴールはもっと先にあるのです。子どもにとって、本人に起因しない大人の事情での不利益なことは起こってほしくないのです。

「お母様、中学受験はお父様との意見の一致が不可欠です。ですから次回は、ぜひご主人もご一緒にこちらへ来ていただき、面談をさせてくださいね」
消化器内科の開業医であるお父様を交えた次回の面談は、一体どのような展開になるのか。どうぞお楽しみに。


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