オリジナル漫画「scope」原作-37
【飛山篇】VS臓器売買組織(黄)第7話
寺野 「 いんぎゃぁぁああおおぅぅうう!!!! 」
刺された肩口を押さえ、天に向かって絶叫する寺野。思いの外、猛獣の咆哮のように激しくデカい嘶き<イナナキ>だ。 傷口からは血液がボトボトと滴り落ちている。
ギャクザン 「 い? 何なんだ!? この硬ぇ皮膚は… お前 …もしかしたら その臓器<ショウヒン>も高値で売れるかもなぁー!! べへへへェ!! 硬ぇとサバき甲斐があるってもんだぜ、とっととバラさせてくれよぅ、もぎ立ての臓器の新鮮な湯気がたまらねぇんだよ! じゅるじゅじゅる 」
寺野 「 痛ぁたたたた… 立て続けに乱暴な方だなぁ …あっ、血が。< ポタっ ポタっ… > 」
架空のメトロノームが血液に合わせカウントしている。
< ポタ、ポタ、ポタ > 一定のリズムにて床に滴る自身の血だまりを眺めていると、突如寺野の脳裏に被害に遭った人たちの悲痛な情景が浮かんで来た。部屋中に散乱している拷問器具であろう、禍々しい闇の機材。 有無を言わさず、麻酔無しで斬り刻まれる、被害者たち。 阿鼻叫喚の地獄絵図。
奇声をBGMに額に汗を掻き、これ以上の無い快楽の表情をしているギャクザン。 事務的に運び出され、冷凍保存される臓器の数々。 皮肉にもこの臓器で救われる命も多数存在してしまう。…吐き気と共にごちゃ混ぜにされた、これら一環の流れは、常人では目を背けたくなる光景のオンパレードである。
寺野 「 …ううぅぅ ど、どうやらあなたは、人の痛みってのを まるで分かって無いようですね? 」
ギャクザン 「 何言ってんだ? 処刑人に痛みなんか必要ねぇんだよ。必要なのは、いかに気持ち良くサバケるかと、いかに高値で売れるかしかねぇ。 」
寺野 「 どんなに常識が無い私でも、あなたの非常識度合ぐらいは分かりますよ。 …キサマぁ! い、命を無下に扱うんじゃない!!」
ギャクザン 「 けっ 説教かよ、くだらん。というか、そもそもお前何者だ??まさか霊安室から化けて出た、小汚ぇ幽霊じゃねぇよなぁ? べへへへェ!!」
寺野 「 私は、寺野辰男。頭髪と存在感こそ薄いですが、ちゃんと足はあるので幽霊ではありませんよ。そして、ここへ来た理由は…友人の復讐のため、世の被害者のため、そして最愛の家族を救うため …お前らを討ちに来たんじゃ! ボケぇ!! 。。ゲホっゲホっ 」
ギャクザン 「 復讐だと? べへへへェ!!…取って付けたようなクソみてぇな事しか言わねぇ奴は、切り刻んだるよ。お前はもう“商品”と見なさん。 」
寺野 「 望むところだ… あなたが居なくなる事で、今後救える命がいくつある事か… 嘆いても過去は戻って来ない、未来を切り開くのです!!」
ギャクザン 「 未来なんてつまらんモノ切り開くか、バカ。 もう 飽ぎだぁぁあああああああ!! 」
背負っていた大型ノコギリを手に取り、斬り掛かって来た。
< ガキンッ! > とっさに出した植物型拳銃 「BONSAI」 にて大型ノコギリを防ぐ、寺野。 いざ、初老丸出しの反撃が始まる。
ギャクザン 「 !? おまー それ特殊拳銃じぇねぇかーー!!! どこで手に入れやがった!! ご機嫌だなぁ この変態ヤローがー! 」
寺野 「 ふぅ ふぅ~ 危ないですねぇ… でもこのノコギリ切れないでしょ。 ガタガタで錆び錆びじゃないですか。 < クッ!> 」
< ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ! >
2つに分裂した大型ノコギリを両手に持ち、間髪入れずに斬り掛かって来るギャクザン。斬撃を防ぎつつ、反撃を試みる寺野だが、距離が近すぎるが故に拳銃を撃つタイミングが無い。さらに、顔面が接近するたびに、ギャクザンの飛び出たギョロ目が寺野の顔面スレスレを横切り、そのキモさから、相当な精神的ダメージも負っている。…実はこの時、ギャクザンも同様以上の精神的ダメージを負っていたという事は、寺野は知らない。総合病院の地下深く、変態と変質者の見るに堪えない攻防戦が、さらに激しさを増して行く。
( 「 Y総合病院 」 裏搬入口 / 条一狼サイド )
< ブロロロロロロォ >
草木も眠る丑三つ時、どこからともなく運搬トラックが現れた。 人目に付かないよう、車体が真っ黒に塗られた、怪しい大型トラック。裏搬入口に到着すると、慣れた様子で停車している。その光景を、物陰から監視している人影、…条だ。
条 「 おぉ お誂え<オアツラエ>のタイミングじゃねぇか! 全く運が良いぜ。 ニヤっ 」
指をポキポキ鳴らし、何やら企んでいる顔だ。
( 臓器売買系闇組織(黄)社長室前 / 飛山サイド )
颯爽と寺野と別れ、予定通り社長室前まで辿り着いた飛山。談話室にてエマージェンシーボタンが押されたが、深夜という点と舞の仕掛けたトラップにより、ほぼ構成員らの追手が来る気配が無い。 < 数人の構成員が廊下の奥で倒れている。 >
飛山 「 …いよいよ本番ってヤツか。 “全てを知る事”ほど、退屈な事は無いが、もういいだろ。 」
社長室の自動ドアが開く。< ウィンッ >
宇宙船の船内を彷彿とさせる近未来的な室内だ。侵入者に気付いた、酸素カプセルのようなベッドで寝ている大柄の男が姿を現す。< プシュュュー >
金髪/オールバックにスーツ姿のその男、臓器売買系闇組織(黄)代表:ブレスト・ギッパーだ。 24時間365日、高級スーツ姿の変わり者である。
B・ギッパー 「 何の前触れも無く、ここまで入って来るの初めてだな。まぁ座りなよ。それで用件は何?」
つるんとした流線形の椅子に座り、飛山に尋ねる。
飛山 「 随分と冷静だな。 話が早そうで何よりだ。 あんたが 臓器売買系闇組織(黄)代表だよね?」
長いテーブルを挟み、同様の椅子に座る。
B・ギッパー 「 そうだが、敢えて分かってる質問をする必要無いだろ? …復讐とか、もっと具体的な話をすればいいのに。 にっ 」
飛山 「 ………………………。 」
視線の冷酷さと鋭さが一気に増した。
B・ギッパー 「 なんだ なんだ、良い顔できるじゃん。 復讐ってのは、図星のようだな。 」
飛山 「 …あんたは、被害者の事、どれだけ把握してるんだ? 」
B・ギッパー 「 さてな、“商品”の事は下の者に一任してるから、売上金額以外はほとんど知らないねぇ。 まぁ、一部例外を除いてだけど。 」
飛山 「 なるほど。その一部例外ってのは、真相を闇に葬る系の取引なんだろ? 例えば、同業とか、国家の秘密機関とか。 」
B・ギッパー 「 ふ~ん、お前関係者なのか?? (まさか政府側の人間じゃないよねぇ。) …まっ そんな奴は直接出向くような面倒な事はしないか。 」
飛山 「 …両親の仇を探している。Labにて、極秘実験の被験体を志願した両親が、ある日不慮の事故で亡くなった。 正確には、そのように偽装され、何者かによって意図的に殺害された。当時ガキだったオレでも違和感しか感じない、何ともお粗末な偏向報道だったよ。 」
B・ギッパー 「 それで? 」
飛山 「 熊に襲われたかのように報道されたが、両親の遺体からは、明らかに人為的に臓器が取り除かれていた。 あんな緻密で鋭利な切れ口、野生の動物によるものであるはずがない。…もう良いだろ、 貴様らの仕業だよな? 」
B・ギッパー 「 う~ん、臓器がねぇ。…それ、実行したのは確かにウチだわ。それで? 」
飛山 「 …やはり、そうか。リスクを冒してでも、ここに来た甲斐があったよ。では、真相を聞かせてもらおうか? 」
冷静に受け答えしている言葉とは対照的に、凍気を纏っていた視線は一転して怒りと共に温度を急上昇させる。 B・ギッパーの方も挑発を繰り返すと同時に、セルフコントロールにて“血流”をうねらせ、静かに体内で準備運動を始める。
B・ギッパー 「 詳しい事は何も知らないねぇ。 あくまで、“実行したのは”って、言ったろ? 依頼者=首謀者は別だからさ。 」
飛山 「 ………………………。 」
B・ギッパー 「 それに、お前の両親の臓器は、今までに見た事も無いようにズタボロで、全く売り物にならなかったようだからな。 やれやれだよ。 」
飛山 「 !? 」
B・ギッパー 「 そんなところだ。 それでお前は覚悟出来てるんだろ? ここに来たって事はそう言う事だ。 それとも、見習い扱いでこっち側に付くか? にっ 」
飛山 「 …まさかな。 臓器売買が主目的じゃ無かったとは… とんだ的外れだったよ。怒りで完全に眼球が曇ってた。ビビッて誤魔化して、直視せず過ごして来たオレが悪い。 …ダッセぇな、我ながら。 …ホント救いようがねぇわ。 ……だが、 100歩譲ってもお前が悪い。」
B・ギッパー 「 おいおい、スッゲー目つきだな。 メデューサもチビって目を反らすレベルじゃん。だがよぉ、人を悪者呼ばわりしちゃいけないんだぜ、訴えてやろうか? ん? 逆に訴え返すって顔してるな?…こちとら法で裁けるようなレベルの小悪党じゃないんだ。にっ 」
飛山 「 …臓器が売り物にならないって事は、そもそも営利目的の売買ではなく、用済み処分の“ついで”だったって事だ。(やはりLabなのか?)真相は改めて突き止めるが、“実行した”お前らの罪は 果てしなく重いぞ。 言っとくけど、法で裁くようなヌルさは無いよ、オレのジャッジは。 …さぁ 今宵限りで廃業してもらおうか?人生を。 」完全に開いた瞳孔で、 B・ギッパーを見下すように睨みつける。
B・ギッパー 「 中々言うじゃない? 誰を相手にしてるのか、あんま理解してないのかな? ねぇ、プロの用心棒っての知ってる?おいっ! 」
飛山 「 ………………………。 」
B・ギッパー 「 …あれ?? おいっ! どうした? 出て来い!! コラぁーーー!!! 」
< カチャ カチャ カチャ!! >
何度呼び出しボタンを押しても、一向に反応する気配が無い。 手元にあるのは、事前に舞が細工していた偽ボタンである。
飛山 「 プッ 残念だったな、対策済みだ。そのプロの用心棒っての、見て見たかったなぁ。 でも、あっちはあっちで それどこじゃないかもね。」
B・ギッパー 「 …んだと? こいつ、いつの間に… こそこそと、訳の分からん小細工しやがって、何しやがった?? 」
飛山 「 さぁね、何のことか分からないよ。それで? 」
( 臓器売買系闇組織(黄)「 赤雨部屋 」 / 寺野 VS ギャクザン )
< ガキンッ! ガキンッ! ガキンッ! >
口元で深緑色のヨダレをじゅじゅるさせ、典型的な狂人のような表情で、大型ノコギリを斬りつけて来るギャクザン。特殊拳銃を取り出すも、防ぐ事に精一杯な、防戦一方の寺野。 少ない髪を振り乱しながら、必死に抗い続ける。
ギャクザン 「 ホラホラホラぁ 無駄な抵抗すんじゃねぇよ!とっととくたばれぃ、この変態ぎゃぁ 吊るして削いでやるからよぉぁ、色々な。べへへへェ!! 」
寺野 「 はぁ はぁ はぁ これでは撃つ事が出来ませんね… もう少し距離を取らないと。それにしても、キモ怖ぃいですね。うわっつ! 」
< シュッ! >
水面蹴りのように足元目掛けて斬撃を繰り出す、ギャクザン。 それを、まるで熱された鉄板の上を跳ねるようにピョンピョン飛んで避ける寺野。
< シュッ! ピョン シュッ! ピョン シュッ! ピョン!ピョン!! >
片方の足首に縄跳びを付けて、くるくる回しながら飛ぶ、ひとり遊びのようだ。
寺野 「 わっと! よっと! あっと! しょっと! あ、危なっ < ズルッ > 」
床に溜まった自らの脂汗に足を取られ、バランスを崩してしまう寺野。間髪入れず、アキレス腱に大型ノコギリが斬りつけられる。< ザシュッ ボギッ! >
錆びだらけで切れ味がすこぶる悪いため、裂傷に加えて殴打による打撲的ダメージも同時に食らってしまう。 さらに傷口からは不衛生な錆び等が混入し、化膿を併発しそうな非常に迷惑な武器である。悪質なファウルを貰ったサッカー選手のように、足首を押さえながら床に倒れ込む寺野。 < バタリッ >
ギャクザン 「 ビッヒヒヒぇぃ! アキレス逝っちゃったなぁ 身動き取れねぇか? じゃあ、せめて 痛み止めの麻酔打ってやるよぉ~ < プスッ > 」
懐に隠し持っていた2本の注射器を首元に刺す、ギャクザン。 極細の針のため、強靭な身体に関係無く、するりと注入されて行く。 次第に寺野の表情が影に落ちて行く。まるで睡魔に襲われた受験生のように、何とかしようという気持ちとは裏腹に、得体の知れない麻酔液の効力はてき面で、抗い虚しく、とろんとした白目を剥いている。どうやら、完全に気を失ってしまったようだ。
寺野 「 ………………………。 」
ギャクザン 「 こんなに硬え肉は初めてだぜぇ。サバき甲斐があるってもんだ。 べへへへェ!!」
両足をロープで括り、クレーン車のような機械で寺野を逆さ吊り状態にするギャクザン。大型の裁ちばさみのような刃物を持ち、悦状態に没入している。気を失い、だらんとした身体で依然として気絶している寺野。上半身が裸の状態だ。稼働スイッチを押し、精気無くゆらゆらと揺れながら下に降りて来る。< ウィーン > ギャクザンの顔面の目の前に、ちょうど寺野の顔面が来た位置でストップさせた。
ギャクザン 「 おーい、起きろぉ! …絶望の朝だ。 べへへへェ! サバきは五感で楽しむもんだぜぇ、生きて無きゃ楽しみ半減ってもんだ。 」
持っている裁ちばさみの側面を用い、“復ビンタ”の要領で寺野の頬を強く叩く。< ベチッ ベチッ …ベチッ! > 叩かれた勢いでぐるぐる回る寺野。
寺野 「 …うぐぅ はっ!ウンギャーーーー!! 」
ギャクザンのギョロ目と目が合う。
逆さ吊りの状態のまま、ぐるぐると回りながら気が付いた寺野、目の前のアリーナ席に陣取っているギャクザンのギョロ目。 回転と見た目のダブルで気持ち悪い。
ギャクザン 「 バッ モ~ニ~ン。気が付いたようだなぁ。どうだ? これからサバかれる心境ってのは? …安心しろよぉ 麻酔無しにしといてやるからさ。今ならオプションで、叫び放題も付けといてやるぜ。べへへへェ!! 」
寺野 「 何から何まで気持ち悪いですね。…こんな思いを何人の方がされたのか。本当に許しませんよ、あなた。 」逆さの状態で鋭く睨む。
ギャクザン 「 こんな状況で良く減らず口が叩けたもんだな。 …だが、すぐに泣き叫ぶだろうぜ。 おっさんの泣き声は見苦しいよなぁ 」
< ジャギ ジャギ ジャギ! >
背景に寺野を重ね、手に持った裁ちばさみでシミュレーション斬りをしながらニヤニヤ笑っている、ギャクザン。 人を殺さないギリギリの斬り刻み方を熟知しているようだ。 サバきを最後までとことん嗜む、反吐が出るほどのサイコ界のエリートである。
ギャクザン 「 せ、精神崩壊直後の、最後に絞り出される、言葉にならない断末魔がたまんねぇんだよ。 …興奮した鼓膜が、激しく踊り狂うんだぜ。脳まで響くビリビリ感、分かるよな?べへへへェ!!< ザクッ > 」
自分の太腿にハサミを突き立て、出血した血をペロっと舐めている。
寺野 「 ………………………。 」
あまりの狂気に、冷や汗を掻くが、睨みつける鋭い眼光は変わっていない。
ギャクザン 「 さてさて、ボチボチ始めるとしようか。…まずは脇腹からぁー!!!! 」
ハサミをナイフのように握り込み鋭利な先端を突きつけて来る。
寺野 「 ヒヤっ!!」
身体をとっさに捻ってハサミをかわす寺野。 完全にかわし切れず、脇腹に裂傷を負ってしまう。< ブシュッ >
ギャクザン 「 ヒャッハハ 踊れ踊れー!! そらっ!それっ!! 」
ハサミに付いた血を舐めて興奮している。
寺野 「 痛ぁたたた。くそぅ どうにかしてロープを解かなくては… ぐはっ! 」
連続のハサミ攻撃に、致命傷は避けつつも、斬り刻まれる寺野。
ギャクザン 「 中々良い色に染まって来たじゃねぇか。 いっそのことお前の家族も招待出来れば良かったなー 家族処刑もまた、たまんねぇんだよ。斬り刻まれる子供をどうする事も出来ず、自身が斬り刻まれる順番を待つ母親。べへへへェ!! 」
寺野 「 …キサマ いい加減にせいや。 この世に、居なくて良い人間なんて居ない。 …キサマ以外はな!!」
怒りで全身から血が噴き出している。
ギャクザン 「 うおっほー! !噴水じゃ 噴水!! 汚っねぇ ヒャッハハ すこぶるいい気分だぜ!!さぁ 次は、本格的に行こうか!」
噴き出る寺野の血を浴びて大喜びしている、ギャクザン。脇腹を狙っていた今までと違い、身体の中心を狙って突っ込んで来る。< ダ・ダ・ダ・ダ・ダッ! >
ギャクザン 「 えぐったぁーーー!! …イッ !? 」
< シュッ! ブチンッ! >
手でも足でも無い“何か”が、寺野の背後から一瞬伸びたかと思った刹那、ロープを瞬時に断ち切った。そのまま落下する勢いを利用し、両膝をギャクザンの顔面目掛けて突き立てる。< グシャ!! > 突っ込んで来た勢いがカウンターで追加され、激しく床に叩き付けられる、ギャクザン。大ダメージを負い、ヒクヒクと痙攣している。瀕死の状態で何とか立ち上がると… こめかみに突きつけられる銃口。< スチャッ > 特殊拳銃を突き付けた寺野が見下ろしている。
寺野 「 ぜぇ ぜぇ ぜぇ …どうです? 赤の他人に命を管理されてる気分というのは? 」脱がされたパーカーコートを羽織り、渋い表情の寺野。
ギャクザン 「 くっ …拳銃か。そんな即効性のある武器なんて興ざめだぜ。 …た、楽しみが半減するじゃねぇか。グボッ 」 ギョロ目がダルダルになってる。
一瞬怯んだ隙に、手のひらに溜めた吐血を寺野の目に向けて投げつる、ギャクザン。< ベチャッ! > 見事命中し、視界を奪われてしまった… かのように思われたが、直撃したのは寺野のメガネであった。 血がべったりと付いたメガネを投げ捨て、凛々しい表情で特殊拳銃「BONSAI」を構えた。
“スキャナーマガジン”を親指で操作し、特殊弾丸を選択する 【 枯渇弾(depletion)】
ギャクザン 「 …なんだよ、せっかくならサバいてくれよー 麻酔無しでさぁ。セルフ断末魔なんて夢のようじゃねぇか べへっ ベへへェ!! 」
寺野 「 あなたの命令には従いませんよ。 ましてや希望など、聞く耳は持ち合わせてません。 …しかし止めまで刺す必要があるんでしょうか? 」
ギャクザン 「 モタモタしてんじゃねぇよー!! オラぁッ 」
床に落ちている大型ノコギリを拾って、斬り掛かって来る。
寺野 「( 闇相手に躊躇は禁物でしたね、条。)…残念ながら、あなたは今日でリストラです。飛べ!空虚な休日_ライフレスホリデー!! 」
< ポンッ ポンッ ポンッ >
枯渇弾にて、松ぼっくり型のグレネード弾がギャクザン目掛けて連射される。
< ズドドドドッ!!>
落下と同時に大爆発を引き起こす。衝撃によって、大きく吹き飛ばされるギャクザン。
枯渇弾の効果により 心身共に枯れ果ててしまった様子で、異様に生々しかったギョロ目も真っ赤に充血し、カラカラに枯れ果てている。僅かに息があるようだが、自身を動かす全てのモチベーションが枯渇してしまったため、もはや身動きを取る気力すら沸く事はない。
まさに、生ける屍のカラッカラゾンビ状態、国立サハラ砂漠公園の砂場に、3ヶ月放置された猫のフンのようだ。
寺野 「 何もかもが理不尽に奪われてしまう気持ち、少しは分かりましたか? 悔いる気持ちが無いのなら、明日無き人生を延々と過ごすと良い。…あれっ? “味気の無くなったガムを、顎がぶっ壊れるまで延々噛み続けるがいい。” の方が決まりましたかね? 」
投げ捨てたメガネを拾い、ポケットから出したハンケチで血を拭う、寺野。 何やらもぞもぞしている。 …どうやら闇との戦いと並行して、もう一人の敵、尿意とも戦っていたようだ。 あからさまに歯を食いしばり、ドラキュラ伯爵のようにパーカーコートをバサッと翻すと、トイレを目指し、颯爽とその場を立ち去って行った。その後、この戦いが一勝一敗になったかどうかは、本人のみぞ知る。
( 「 Y総合病院 」 裏搬入口 / 条一狼サイド )
日中使用している搬入口とは別の、地下へと直納できる悪しき搬入口が大きく口を開く。
< ガゴンッ ゴガガガァ >
搬入トラックがゆっくりと昇降リフトに乗る。
< ウィーン ガゴンッ >
しばらく降ると、地下搬入口へと辿り着いた。
< ピピー ピピ― >
バックしながら搬入口にトラックを付けると、背面の貨物扉を開ける。
< ギギギーッ >
( トラック貨物内へと視点が切り替わる )貨物内にゆっくりと明りが差し込んで来る。
条 「 …さて、張り切って参りましょうかぁ ニヤっ 」
暗がりの中、ハンドルのようなものを握り、ワクワクしている表情の条。
< キュルルルル ブロォォオオーーーン!!! >
貨物扉を開けた途端、ウィリー状態のフルスロットルの車が飛び出して来た。豹尾の愛車に乗った条である。
構成員 「 な、なんだ!? ウギャァァアアアア!! 」
搬入の受け入れ準備をしていた構成員たちを容赦無く轢き倒す、条。
条 「 お邪魔するぜぇ。あ?一応土足じゃねぇだろが? …長居するつもりはねぇ、最速で終わらせてやるから許せよ、な? 」
( つづく )
