【Log.3-02】七不思議の幽霊が、俺たちの恋路を応援してくるんだが
怪奇同好会へようこそ
~変人先輩と巻き込まれ俺の、受難な日々~
BLコメディ×オカルトミステリー / 全6話完結
現れたトイレの花子さんは、まさかの「ガチ勢腐女子」だった!? 物理的な強制力で迫られる『壁ドン』の強要。俺たちの貞操と距離感が、っっっっっっっっっっっっっっっっっっ危ない!
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第2章:トイレの花子さんは「壁ドン」がお好き
旧校舎は、本校舎とは渡り廊下で繋がっている木造建築だ。
歩くたびに床がギシギシと鳴り、夕日が差し込む廊下は、いかにも「出そう」な雰囲気を醸し出している。
「雰囲気あるな。ここなら演出なしでも客が泣いて逃げ出すぞ」
「笑い事じゃないですよ……。えっと、まずは3階の『音楽室』と、突き当たりの『女子トイレ』の点検か……」
俺が点検シートを確認していると、ふと、背筋に悪寒が走った。
チリリ……。
どこからか、鈴のような音が聞こえる。
それと同時に、廊下の気温が急激に下がった。
「……先輩」
「ああ、いるな」
先輩が眼鏡の位置を直し、スッと俺の前に出る。
廊下の突き当たり。女子トイレのドアが、ひとりでにギィィ……と開いた。
そこから這い出してきたのは、おかっぱ頭の少女の霊――いわゆる『トイレの花子さん』だ。
だが、様子がおかしい。
普通なら、血まみれだったり、恨めしそうに睨んでくるはずだ。
しかし、その花子さんは、頬を紅潮させ、キラキラした目で俺たち(正確には、俺と先輩が繋いでいる手)を凝視していた。
『……アラ? ……アラアラアラ?』
花子さんが口元を押さえ、黄色い声を上げた。
『イケメン先輩ト、健気ナ後輩クン……? キタコレ……!』
「……はい?」
「なんだ、随分とファンキーな霊だな」
俺たちが呆気にとられていると、花子さんは指をパチンと鳴らした。
その瞬間。
ドンッ!
背後から見えない力に突き飛ばされ、俺は壁に背中を強打した。
よろけた俺の目の前に、先輩が倒れ込んでくる。
俺の顔の横に、先輩の手がダンッ! と叩きつけられた。
至近距離で重なる視線。
いわゆる、少女漫画でよく見る『壁ドン』の体勢だ。
「わっ、先輩!?」
「……っと、すまん。不可抗力だ」
先輩が離れようとした、その時だ。
『動いちゃダメェェェ!!』
花子さんが絶叫した。
同時に、金縛りのような重圧が俺たちを襲い、先輩の体勢が固定される。
『イイ……スッゴクイイ……! その身長差! 驚く受けの表情! 庇う攻めの包容力!』
「……受け? 攻め?」
『アタシ、ずっと待ってたの! この旧校舎で、尊い男子たちがイチャつくのを! 令和の男子高校生、最高ォォォ!!』
花子さんは恍惚の表情で身悶えしている。
俺は戦慄した。
こいつ……ただの地縛霊じゃない。
腐女子だ。それも、年季の入ったガチ勢だ。
「……悠斗。どうやら彼女は、我々の関係性を『鑑賞』したいようだな」
「分析してる場合ですか! なんかすごい圧で固定されてるんですけど!」
「ふむ。霊的な干渉を解くには、相手を満足させて成仏させるのが一番だが……」
先輩は真顔で俺を見下ろし、少し困ったように、でも瞳の奥で楽しそうに笑った。
「『もっと近づけ』と言っているようだぞ?」
「はあ!? ……ちょ、先輩、顔が近っ――」
先輩の顔が近づいてくる。
整った鼻筋と、長い睫毛(まつげ)が目の前に迫る。
花子さんの『キャァァァァ!』という歓喜の悲鳴がBGMとして響き渡る中、俺は文化祭の準備どころではなく、貞操の危機を感じていた。
(続く)
▼怪奇同好会シリーズ第一弾はこちら
因習村の生贄に選ばれたんだが~相手が変人先輩(男)な件~
