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【Log.2-05】呪いの手錠で繋がれたので、先輩とトイレまで一緒です

怪異の数だけ、愛が深まる!? 変人先輩×苦労人後輩がおくる、恐怖と爆笑のオカルトBLコメディ【怪奇同好会シリーズlog.2】全6話完結

襲いくる悪霊から逃れるため、二人が選んだ手段は「シンクロ」すること。 共に過ごした時間、共有した呼吸。強制同棲で培った絆が、今、奇跡を起こす! 「逃げるな悠斗、俺に合わせろ!」 愛の共同作業で、悪霊を浄化せよ!

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第5章:シンクロ率100%の共同作業

「ハァッ、ハァッ……! 先輩、もう無理……!」

 真夜中の神社。俺たちは砂利を踏みしめ、本殿の裏手へと追い詰められていた。
 息が切れる。足がもつれる。
 何より、手首を繋ぐ「組紐」が邪魔すぎる。俺が右に避けようとすれば先輩が左に動き、互いに引っ張り合って転びそうになるのだ。

『逃ガサナイ……逃ガサナイ……ッ!!』

 背後から、女の霊が地面を這う音が迫る。

 ズズッ、ズズッ。

 その速度は異常だった。人間離れした動きで距離を詰め、黒い髪の毛が生き物のように伸びて襲いかかってくる。

「くっ!」

 先輩が木刀で髪を払うが、キリがない。
 無数の髪が俺たちの足首に絡みつこうとする。

「悠斗、下がってろ! 俺が盾になる!」
「無理ですよ! 1メートルしか離れられないのに!」

 俺たちは完全に手詰まりだった。
 逃げれば絡まる。戦えば足手まといになる。
 このままじゃ二人まとめて呪い殺される――そう覚悟した時だった。

「……いや、違うな」

 先輩がふと、足を止めた。
 眼鏡の奥の瞳が、冷静に状況を分析している。

「逃げるから息が合わないんだ。……悠斗、覚悟を決めろ」
「はあ!?」
「迎撃するぞ。俺の動きに合わせろ。今の俺たちならできるはずだ」

 先輩は俺の手首をグイッと引き寄せ、背中合わせの体勢になった。
 背中に先輩の体温と、ドクンドクンという心臓の音が伝わってくる。

「無理言わないでください! 合わせるって言ったって……!」
「できるさ。お前は今日一日、俺の何を見ていた?」
「え?」
「授業中も、トイレも、風呂も、寝る時も。お前はずっと俺のそばにいて、俺の呼吸を感じていただろう?」

 先輩の言葉に、俺はハッとした。

 そうだ。

 歩く歩幅。ページをめくるタイミング。呼吸のリズム。

 嫌というほど味わわされた「強制同棲」のおかげで、俺の体は無意識に先輩の次の動作を予測できるようになっていたのだ。

「……来るぞ、右だ!」

 先輩が叫んだ瞬間、俺の体は思考するよりも早く動いていた。

◆◆◆

 ヒュンッ!  鋭い髪の槍が、俺たちの右側を突き抜けた。
 俺と先輩は同時にステップを踏み、最小限の動きでそれを回避していた。

「次は左下!」
「はいっ!」

 先輩が跳ぶ。それに合わせて俺も跳ぶ。
 着地の衝撃を膝で殺し、そのまま回転して次の攻撃をかわす。

  ――軽い。

 驚くほど体が軽い。
 さっきまで邪魔だった組紐が、今は邪魔に感じない。
 むしろ、紐を通じて先輩の意思が直接流れ込んでくるようだ。

 右へ、左へ、前へ、後ろへ。

 まるで示し合わせたダンスのように、俺たちの動きは完全にシンクロしていた。

『ナンデ……ナンデ当タラナイノヨォォォ!』

 女の霊が苛立ち、全方位から髪の毛を放ってくる。
 だが、今の俺たちには止まって見えた。

「悠斗、しゃがめ!」
「了解!」

 俺が低く屈むと同時に、先輩が俺の背中を飛び越え、上空からの一撃を木刀で弾く。
 着地と同時に俺が立ち上がり、先輩の背後をカバーする。

「……すげえ。全部見える」
「言っただろう? 俺たちの相性は最高だと」

 背中合わせのまま、先輩がニヤリと笑う気配がした。

 その時。

 カッ!!

 二人の手首を繋ぐ紅白の組紐が、眩い黄金の光を放ち始めた。

「うわっ、熱っ!?」
「いや、これは……浄化の光か!」

 紐が熱を帯び、バチバチと火花を散らす。
 だが、それは痛みを伴う電流ではなく、溢れ出す力が形になったものだった。
 紐がぐんぐんと伸び、光の帯となって俺たちの周りを渦巻く。

「シンクロ率100%到達! 今よ、二人とも!」

 突然、境内の茂みから詩音(しおん)が飛び出してきた。
 いつの間にいたんだ! しかもビデオカメラ回してる!

「その紐は今、最強の武器になったわ! 二人の愛の力でその霊を縛り上げなさい!」
「愛とか言うな! ……先輩、どうします!?」
「決まっている。共同作業だ!」


◆◆◆

 先輩が俺の手を強く握りしめた。
 言葉はいらなかった。
 俺たちは同時に地面を蹴り、女の霊に向かって駆け出した。

『キィィィィィ!』

 霊が最後の突撃をしてくる。
 俺たちは直前で左右に大きく別れた。
 ピンと張った光の組紐が、霊の進路を塞ぐ。

「いっけぇぇぇぇ!」

 俺と先輩は、呼吸を合わせて腕を振り抜いた。
 光る紐が鞭(ムチ)のようにしなり、女の霊を螺旋状に絡め取る。

『ギャアアアアアッ!? 熱イッ、眩シイッ!』

「これで終わりだ! 悪霊退散ッ!」
「成仏してくださいッ!」

 俺たちの叫びと共に、組紐から爆発的な光が放たれた。
 それはただの攻撃ではない。
 「二人で一つ」という絶対的な絆のエネルギーが、孤独な霊の嫉妬心を塗り替えていく暖かな光だった。

『……ア……アタタカイ……』

 女の表情から、鬼のような形相が抜け落ちていく。
 何かに導かれたように顔を見上げた。

『コレで……成就した』

 こちらに穏やかな笑みを向けてきた。
 そこにいるのは清楚で凛とした人間の女性の姿だった。

『ありがとう……』

 シュゥゥゥ……。

 光の中で、霊の姿は霧のように解け、夜空へと消えていった。

   ◆◆◆

4

 静寂が戻った境内。
 俺たちは肩で息をしながら、立ち尽くしていた。

「……やった、か?」
「ああ。見事な連携だったぞ、悠斗」

 先輩が汗を拭いながら、俺の方を向く。
 その顔は達成感に満ちていて、月明かりの下でやっぱり無駄にカッコよかった。

「先輩こそ……意外と頼りになりましたよ」
「意外とはなんだ。惚れ直したか?」
「はいはい、そうですね」

 軽口を叩き合い、俺たちは自然と笑い合った。
 ふと、手首を見る。
 あんなに激しく光っていた組紐は、今はただの古びた紐に戻っていた。  そして――。

 パラリ。

 乾いた音を立てて、結び目のないはずの紐が解け、地面に落ちた。

「……あ」
「解けた……」

 俺たちは顔を見合わせた。
 シンクロ率100%。
 詩音の言った解除条件を、俺たちは満たしてしまったのだ。

「……終わったんですね」
「そうだな」

 自由になった手首をさする。
 解放感があるはずなのに。

 なぜだろう。

 急に1メートル以上の距離ができた空間が、ひどく寒々しく感じられた。


(続く)


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因習村の生贄に選ばれたんだが〜相手が変人先輩(男)な件〜



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