【Log.2-03】呪いの手錠で繋がれたので、先輩とトイレまで一緒です
怪異の数だけ、愛が深まる!? 変人先輩×苦労人後輩がおくる、恐怖と爆笑のオカルトBLコメディ【怪奇同好会シリーズlog.2】全6話完結
帰宅すら許されない悠斗は、真堂先輩の実家(神社)にある「離れ」に泊まることに。 そこで待っていたのは、先輩の意外なプライベート空間と、避けられない「一緒にお風呂」イベント!? 裸の付き合いで、二人の距離はさらに加速する――。
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第3章:離れ(愛の巣)で同棲はじめました
放課後。
地獄の公開授業と同伴トイレを乗り越えた俺たちは、夕暮れの道を歩いていた。
向かう先は、村の高台にある古社――真白先輩の実家だ。
「……はぁ。マジで泊まるんですか」
「当然だ。俺とお前は一蓮托生(いちれんたくしょう)。物理的に離れられない以上、我が家へ招くほかない」
先輩は上機嫌で鼻歌を歌っている。
俺はため息をつきながら、スマホを取り出した。
まずは最大の難関、母親への連絡だ。
昨夜はクラブ合宿と誤魔化したが、二日連続は厳しい。
『もしもし、悠斗? どうしたの?』
「あ、母さん? ……えっと、今日なんだけど、友達の家に泊まることになって……」
『あら、珍しい。誰のお家?』
「えーと、その……」
俺が言い淀んでいると、横からスッと先輩が顔を寄せ、俺の手ごとスマホを奪い取った。
「お義母(かあ)さん、初めまして。先輩の真白です」
「ちょ、返せ!」
『あらあら、元気な声ねえ』
「はい。悠斗くんは今夜、私が責任を持ってお預かりします。……ええ、もう離したくないくらい、深く結ばれていまして」
語弊がある! 言い方がねっとりしてる!
先輩は俺の抗議を無視し、「では、朝食は和食派ですか? なるほど、卵焼きは甘めがお好きと。リサーチ完了しました」などと談笑して電話を切った。
「……完璧だ」
「何が完璧ですか! 母さん、完全に勘違いしましたよね!?」
「細かいことは気にするな。さあ着いたぞ、ここが俺たちの愛の巣だ」
目の前には、立派な鳥居と、その奥に広がる広い境内。
そして、本殿の脇にある、風情ある日本家屋――「離れ」があった。
「普段は来客用に使っているが、今は俺の私室になっている。気兼ねなく寛(くつろ)げ」
先輩に手を引かれ、玄関をくぐる。
中は意外にも、綺麗にリノベーションされていた。畳の香りと、最新の空気清浄機。
奥には巨大なゲーミングPCモニターと、壁一面の本棚。
そして――
「……先輩」
「なんだ」
「あの棚にあるファイル、背表紙に『悠斗・観察記録 Vol.1~3』って書いてあるんですが」
俺は戦慄した。
本棚の一等地に、盗撮写真とおぼしきファイルが鎮座している。
「ああ、気にするな。俺のライフワークだ」
「捨てろ! 今すぐ焼却しろ!」
俺がファイルに手を伸ばそうとすると、バチッ! と紐から警告の電気が走った。
くそっ、紐の長さのせいで、先輩が動かないと俺も動けない!
「暴れるな。汗をかいただろう? まずは風呂だ」
「えっ」
先輩はファイルを華麗にスルーし、タオルと着替えを取り出した。
そこには、真新しいパジャマ(俺のサイズ)が用意されていた。
「……準備良すぎません?」
「いつかこういう日が来ると思ってな」
「確信犯だ……」
◆◆◆
脱衣所。
ここからが本番だ。
俺たちは互いに服を脱がなければならない。
「……あの、先輩」
「ん?」
「俺、片手で脱げますから。見ないでくださいよ」
「何を今更。男同士だろう」
先輩はさっさと自分のシャツを脱ぎ捨てた。
引き締まった筋肉質な体躯(たいく)が露わになる。腹筋が割れている。悔しいがいい体だ。
対する俺は、もやしっ子ではないが、先輩に比べれば貧弱だ。
「……うう」
俺は背を向け、もじもじと制服を脱いだ。
繋がれた右手が不自由で仕方がない。
ようやくパンツ一丁になり、浴室の扉を開ける。
「よし、入るぞ」
湯気の中、俺たちは洗い場に並んで座った。
プラスチックの椅子を2つ、隙間なく並べて。
「近い……」
「仕方ないだろう。離れると感電するんだぞ。全裸で感電死なんて、末代までの恥だ」
先輩はシャワーを出し、俺の頭にお湯をかけ始めた。
「わっ、自分でやります!」
「片手じゃ無理だろ。貸せ」
先輩の大きな手が、俺の髪をわしゃわしゃと洗う。
シャンプーのいい匂いがする。
指の動きが妙に手慣れていて、気持ちいいのが腹立つ。
「悠斗、首元が洗えてないぞ」
「ひゃっ!?」
敏感な首筋を指でなぞられ、俺は変な声を出してしまった。
浴室に声が反響する。気まずい。死ぬほど気まずい。
「……先輩、背中。流しますよ」
俺は誤魔化すように言った。
先輩は素直に背中を向けた。
広い背中だ。この背中に、俺は何度も助けられたんだな……と、少ししんみりした、その時。
「おい悠斗、もっと下だ。腰のあたりを重点的に頼む」
「注文が多いな!」
「あー、そこそこ。上手いぞ。将来いい嫁になれる」
「嫁じゃねえ!」
バシッ、と背中を叩くと、先輩が笑った。
その笑顔が、湯気越しに見ると無駄に色っぽくて、俺はカアッと顔が熱くなるのを感じた。
「……のぼせた。早く出ましょう」
「そうだな。長湯して失神されたら、運ぶのが大変だ(紐のせいで)」
◆◆◆
風呂上がり。
お揃いのパジャマを着て、俺たちは畳の上でゴロゴロしていた。
もちろん、距離は50センチ以内だ。
先輩がドライヤーで俺の髪を乾かしている時、俺のスマホが震えた。
『詩音ちゃん』からの着信だ。
「あ、詩音ちゃん? どう、何か分かった?」
『……お疲れ様、悠斗くん。今、資料を読み解いたわ』
スピーカーモードにすると、詩音の冷静な声が部屋に響いた。
『その心中紐、物理的な破壊は不可能だけど、術式を無効化する条件が見つかったの』
「本当か!?」
『ええ。条件は――【二人の精神同調率(シンクロ率)100%】よ』
シンクロ率?
俺と先輩が顔を見合わせる。
「どういうことだ?」
『文字通りよ。二人の心が完全に一つになり、呼吸、思考、感情が一致した瞬間、紐は解ける。……逆に言えば、心がすれ違っているうちは、一生外れないわ』
詩音は恐ろしいことをサラッと言った。
「一生……!?」
『ちなみに、古文書によると、過去にこれを解いたカップルは、戦場を共に駆け抜けた夫婦か、死の淵から生還した恋人たちだけみたい』
「ハードル高すぎだろ!」
俺が絶望していると、先輩がふっと笑った。
「なんだ、簡単なことじゃないか」
「はあ?」
「俺とお前の仲だぞ? 既にシンクロ率は90%を超えているはずだ」
「どこから来るんですかその自信は! 迷惑がってる俺が見えないんですか!」
俺が叫ぶと、詩音が『……あ』と声を漏らした。
『ごめん、言い忘れてた。その紐、夜になると副作用が出るらしいの』
「副作用?」
『紐に込められた怨念……じゃなくて「想い」が強すぎて、持ち主の霊が現れることがあるって』
その瞬間。
部屋の電気が、チカチカと点滅を始めた。
気温が急激に下がる。
窓の外から、ヒュオオオ……という風の音が聞こえる。
「……おい、悠斗」
「な、なんですか先輩」
「お前の背中、なんか重くないか?」
先輩の視線が、俺の背後に釘付けになっている。
恐る恐る振り返ると――。
俺の枕元に、白装束を着た髪の長い女が座っていた。
その目は血走り、じっと俺(の手首の紐)を睨みつけている。
『……アタシノ……』
『……カエシテ……』
「出たああああああ!!」
「生霊(いきりょう)か!?」
俺たちは抱き合って悲鳴を上げた(距離ゼロメートル)。
どうやら今夜は、シンクロ率どころの話ではなさそうだ。
(続く)
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因習村の生贄に選ばれたんだが〜相手が変人先輩(男)な件〜
