【Log.7-03】イケメン幽霊と本気の決闘(バトル)してみた
🎤〈 怪奇同好会へようこそ 〉🎤
~変人先輩と巻き込まれ俺の、受難な日々~
BLラブコメ×オカルト / 全3話完結 / シリーズ連載中
前話のあらすじ:白黒つけるため、詩音の提案で「豊穣祭」のステージ対決をすることに。 ラップ! ダンス! イケメンコンテスト! 神社の倅vs元侍の、プライドをかけた頂上決戦。
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第3章:頂上決戦 in 豊穣祭
当日。
舞台は、商店街の中央広場。
毎年恒例の「豊穣祭」だが、今年は様子が違っていた。
「詩音……これ、規模おかしくない?」
「地域の過疎化対策で、同好会も協力要請されてたのよ。ちょうどよかったわ」
普段はジジババのカラオケ大会と化すステージの周りに、隣町からの女子高生や、噂を聞きつけた主婦層が殺到し、異様な熱気に包まれていた。
『さあ始まりました! イケメン頂上決戦! 「どっちが本物の男」開幕です!』
MCの煽りに、黄色い歓声と野太い声援が混ざり合う。
『第一の勝負、イケメンウォーク! 先行は、地元が生んだハイスペック神主・”神社の倅”真白ぉぉ!』
ポップな音楽と共に、真白先輩が現れた。
長めのオータムコートを羽織り、ポケットに手を突っ込んで、完璧なモデル歩きでランウェイ(ただのベニヤ板)を進む。
センターでくるりとターンし、コートの裾を翻しながら、バチコーン! とウィンクを飛ばした。
「きゃあああああ! 真白先輩いいいい!!」
「抱いてええええ!!」
凄まじい女子高生の悲鳴。さすが顔だけはいい。
『続くのは! 完璧なルックスに謎めいた経歴、その名もレイ!』
対するレイ。
彼は、ヨージヤマモト風の黒を基調とした和洋折衷モードファッションで現れた。
歩き方は、モデル歩きではない。上体を一切ぶらさない、完璧な「なんば歩き」。それが逆に、能舞台のような幽玄な色気を醸し出している。
「ぎやあああああ!!! レイちゃーん!」
「日本男児ィィィ!!」
おばさま達の断末魔のような叫びが響く。レイは胸に手を当て、古風で優雅な一礼(おじぎ)をした。所作が美しすぎる。
『おっと! おひねりは禁止! おひねりは禁止です! 入れ歯を投げないでください!』
MCが絶叫する中、第二ラウンドへ。
『続いてダンス決戦! 先行はもちろん真白!』
重低音の効いたヒップホップが流れる。
先輩は不敵に笑うと、見事なステップを踏み出した。神楽(かぐら)の舞で鍛えた体幹は、ブレイクダンスとも相性がいいらしい。
キャップを空中に放り投げ、片手倒立でキャッチ。
「Yo! 真白Yeah!」
観客を煽り、下手へ下がりながらレイを指差して挑発する。
『受けて立つのはレイ! どうするこのビート!』
レイが静かに前に出る。
ヒップホップのリズムに合わせ、彼は――「すり足」で床をダンダンと踏み鳴らした。
それは、舞踊であり、演武だった。
見えない薙刀を振り回すような鋭い腕の動きが、ビートに奇跡的にハマっている。
「いよぉ〜っ! 」
Yo! ではなく、歌舞伎のような合いの手。
しかし、それがめちゃくちゃカッコいい。最新のダンスと伝統芸能のフュージョンだ。
『最後はラップバトル! マイクチェックワンツー!』
もう何でもありだ。
真白先輩がマイクを握る。
「Yo! Yo! 俺は神社の倅、祓い清めるこのStyle、お前はただのPast、俺はFuture、悠斗の隣は俺のNature!」
意外と韻が踏めている。
対するレイ。彼はマイクを扇子のように持ち、朗々と声を張り上げた。
「――春高楼(こうろう)の、花の宴(えん)〜〜♪」
『まさかの詩吟ンンンン!?』
スローなトラックに乗せた、燻し銀の詩吟ラップ。片肌を脱ぎ、筋肉質な背中を見せつけながら、魂の叫びを轟かせる。その迫力に、会場中の空気が震えた。
『さあ、いよいよ緊張の判定です! どっちが本物の男か!』
拍手の音量を測定する。
真白先輩への黄色い歓声。レイへの地鳴りのような拍手。
結果は――。
『こ、これは判定不能! 祭り始まって以来の大盛り上がり! この勝負、引き分けぇぇぇ!! どちらも『本物のいい男』決定です!!』
ドカーン! と紙吹雪が舞う。
ステージの上で、肩で息をする二人の男。
レイがニヤリと笑った。
「……お前、なかなかやりよる」
「ふん。お前こそ、古臭い割にはノリがいいな」
夕日が差し込むステージで、二人はガシッと固い握手を交わし、互いの肩を組んで観客の声援に応えた。
まさに、昨日の敵は今日の友。美しい男の友情――。
「え……やば。こっちもアリかも」
詩音がボソリと呟いた。
その瞳は、怪しい輝きを帯びている。
「レイ×真白……いや、真白×レイか? 時代を超えたライバル同士の愛……尊い……」
「詩音、思考がダダ漏れだぞ」
「悠斗くん、あなたはもう用済みかもしれないわ」
「ふざけんな! 一件落着……じゃねえんだよ!!」
俺のツッコミは、祭りの喧騒に虚しく吸い込まれていった。
こうして、ストーカー幽霊は「地域のアイドル」としての地位を確立し、俺の平穏は完全に崩壊したのだった。
祭りの後。
俺たちは、商店街の端にある自販機の前でたむろしていた。
すっかり日が落ち、冷んやりとした秋風が火照った肌に心地いい。
「ぷはーっ! 踊った後のコーラは最高だな!」
真白先輩が、空になった缶をゴミ箱に投げ入れた。
見事な放物線を描いて、カランと音が鳴る。
「……しかし、納得がいかぬ」
その横で、レイが微糖コーヒーのプルタブを上品に開けながらぼやいた。
「なぜ引き分けなのだ。あの観客の反応、どう見ても私の詩吟の方が心に響いていたはず」
「はあ? 耳腐ってんのか? 俺のライミングの方が最先端(ドープ)だっただろ」
「否。貴様のラップとやらは軽薄だ。私のソウルには遠く及ばない」
「ああん? やるか? 今ここで延長戦やるか?」
二人は鼻先を突き合わせて睨み合う。さっきのステージ上の友情はどこへ行ったんだ。
「はいはい、そこまで」
俺は二人の間に割って入り、溜息をついた。
「もう帰りますよ。明日は普通に授業あるんですから」
「ちぇっ。悠斗が言うなら仕方ねえな」
「うむ。愛しい妻の言いつけだ。従うとしよう」
「妻じゃねえっての」
呆れる俺を見て、詩音がくすくすと笑う。
「ふふ。でもよかったじゃない、悠斗くん。ボディガードが一人増えて」 「……胃痛の種が二つに増えただけですよ」
そうボヤきながらも、俺はどこか安堵していた。
幽霊だの転生だの、非日常ばかりの毎日だけど。こうしてバカスカ言い合いながら帰るこの時間は、悪くない。
「じゃあな、悠斗! 明日の部活、遅れんなよ!」
先輩がバシッと俺の背中を叩く。
「いっつ……! 分かってますよ」
俺は痛む背中をさすりながら、二人の方へ向き直った。
「それじゃ、お疲れ様でした」
俺がぺこりと頭を下げ、くるりと背を向けて歩き出した、その時だ。
「……おい」
不意に、真白先輩の声が落ちた。
いつもの軽口とは別の、底のほうが冷えてる声。
「え、なんですか?」
振り返りかけた俺の動きが、途中で止まる。
先輩の目が――俺じゃない“何か”に、一瞬だけ焦点を合わせたからだ。
「……いや」
次の瞬間、先輩は笑った。
さっきまでの祭りのテンションのまま、何事もなかったみたいに。
「今日の悠斗、一段と美味そうだと思ってな」
「……はあ!? キモっ! 通報しますよ!」
「ガハハ、冗談!」
先輩は詩音とレイを連れて、夜に紛れていく。
俺は、背中の皮膚だけが遅れて凍っていくのを感じながら、首を傾げた。
……今の笑い、俺に向けたものじゃなかった。
風が、ひゅう、と鳴いた。
まるで「そこにいる」とでも言うみたいに。
(怪奇同好会シリーズ 第1部 完)

(怪奇同好会一同)
【あとがき】最後までお読みいただき、ありがとうございます!
このエピソードで『怪奇同好会シリーズ』本編は完結です。
第2部以降は不定期更新です。次の観測ログが取れたら、またここに残します。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
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