「靴を蹴飛ばすおばあ」から書き始めてみた【カンヌへの道-14】
沖縄で俳優として活動しています。
いっちーこと伊藤駿一です。
このシリーズ「カンヌへの道」は、「カンヌ国際映画祭主演男優賞」というあまりに遠いゴールに向けて、「演劇は世界を平和にする」という信念のもと、俳優としてもがく日々を正直に綴っていくシリーズです。今日はその第14話。
「靴を蹴飛ばすおばあ」から書き始めてみた
少し前に、こんなことを書きました。広報の仕事で「あなたの文章は"解説"になっている。広報は、人の感情を揺らすことだよ」とアドバイスをもらった、という話です。詳しくは説明するほど伝わらない。文章のアドバイスが俳優の伸び代に【永久保存版】に書きました。
その時は「なるほど、伸び代だ」と思って、終わっていました。でも、頭で分かったのと、実際に書けるのは、別の話なんですよね。
今日は、その続きです。解説になっていた文章を、実際に書き直してみました。何をどう変えたら「揺れる」文章になるのか。やってみて、自分なりに、ひとつ掴んだことがあったので、書いておきます。
最初に書いた文章
僕が任されたのは、ある子どもの居場所を紹介する投稿でした。「にぬふぁぶし」という、毎週金曜日だけ開く場所です。
最初、僕はこう書き始めました。
「毎週金曜日の夕方だけ、那覇のある一室が子どもたちでいっぱいになります。『にぬふぁぶし』。沖縄の方言で『北極星』という意味です。小学生から高校生まで、無料でごはんを食べて、宿題も見てもらえる場所です」
丁寧に、順番に、その場所を説明しています。間違ったことは書いていません。でも、正しいけれど、たぶんここで多くの人は、そっとスクロールを進めてしまう。自分には、関係のない情報だから。読み終わって「いい場所だな」とは思っても、そこで止まる。心は動かない。これが「解説」でした。
書き直した文章
それで、入り方を全部変えました。書き直した冒頭が、これです。
「靴を直さない子がいると、上地さんは、本当にその靴を蹴飛ばすそうです。『踏んづけてもいいってことね』って。子どもが『俺の靴が!』と怒ると、すかさず返します。『大事でしょ? 大事だったら、ちゃんと直しなさい』」
「靴を蹴飛ばす」のところで、ちょっと、手が止まりませんでしたか。
これは、取材で代表の上地さんが、実際に話してくれたことです。同じ場所の話なのに、入り方を変えただけで、ぜんぜん違う。靴を蹴飛ばす、という強い言葉に、まず「ん?」となる。でも読んでいくと、その奥に、ちゃんと愛があるんです。「あなたが大事だから、厳しくする」。沖縄の言葉で「カナサルナーカーブチカキリ」と言うそうです。
正直に言うと、書き直したものを自分で読み返して、つい最後まで読んでしまいました。自分で書いたのに、です。
変えたのは、入り方だけだった
面白いのは、書いてある情報が、ほとんど変わっていないことです。場所の名前も、何をしているところかも、同じ。変えたのは、入り方だけ。
「伝わるように」とだけ考えていた時の僕は、たぶん、全部を順番に、正しく並べようとしていました。最初に名前、次に場所、次に中身。教科書みたいに。
でも、感情を揺らすって、もしかしたら、こういうことなのかもしれません。自分が取材して、一番「えっ」となった事実を、最初に差し出す。きれいに整える前に、まず、自分の心が動いたところを置く。
靴を蹴飛ばすおばあちゃん。それが、僕が取材でいちばんびっくりした話でした。だから、それを最初に持ってきた。たったそれだけで、「ん?」が生まれて、つい先が気になる文章になった。……気がします。まだ、仮説ですけど。
あなたが何かを伝えるとき
これ、広報とか演劇に限った話じゃない気がするんです。
何かを誰かに伝えたいとき。商品の説明でも、自己紹介でも、報告でも。つい、最初から順番に、漏れなく説明したくなる。正しく伝えようとするほど、そうなります。
でも、もし「ちょっと興味を持ってほしいな」と思うなら。自分が一番「これすごい」「えっ」と思ったところを、いちばん最初に出してみる。たとえば自己紹介でも、肩書きから入るより、自分の一番へんな経験から話し始めたほうが、たぶん相手は身を乗り出します。順番を変えるだけ。それだけで、相手の「ん?」が動くかもしれません。
正しく伝えることと、気になってもらうこと。僕はずっと、この二つを同じものだと思っていました。でも、たぶん、違う。そして俳優の僕がこれから磨くのは、後のほうなんだと思います。
考えてみたら、舞台も同じかもしれません。お客さんの心を最初に掴むのは、説明じゃなくて、一番強い一瞬。その"入り方"を、僕はいま、文章からも教わっています。
その先にある「にぬふぁぶし」を、6月6日、舞台にしました。靴を蹴飛ばすおばあちゃんの、その奥にある、愛の話です。もしこの入り方で「ん?」と気になってくれたなら、続きは、客席で。
読んでくださり、ありがとうございました。
最後まで読んでくれたあなたへ
カンヌへの道も、演劇で世界を平和にする仕組み作りも、気が遠くなるほど先の話です。これからも今日のような分厚い壁に、数え切れないほどぶつかるはずです。
だからこそ、あなたが最後に押してくれる「スキ」の一つひとつが、「この熱のまま、もっと遠くへ行け」と僕の背中を押す最大の原動力になります。
もしよければフォローして、この長い旅の「一番の目撃者」になってくれませんか。いつか必ず辿り着くその景色を、一緒に見たいです。
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稽古の様子、記事を書いたきっかけ、書けなかった話——
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【挑戦その1】「地域を応援する演劇」シリーズ、上演中
沖縄の食堂や自治会を舞台に、笑って、泣けて、ちょっと優しくなれる。そんな群像ハートフルコメディを連続で上演しています。地域の居場所やコミュニティを応援する取り組みでもあります。
直近の公演:『にぬふぁぶし』6月6日(土)上演
迷った時、上を見れば、いつもそこに光がある。
—— 金曜日の食堂で、子どもたちが見つけた居場所 ——
那覇の子どもの居場所「にぬふぁぶし」を舞台にした、01 ENTERTAINMENT、チーム恵比寿の俳優たちによる群像ハートフルコメディ。
ある金曜日の17:00〜19:30、居場所のない人たちが、沖縄のおばあの厳しくて温かい食卓で「帰る方角」を見つけていく物語です。
日時:2026年6月6日(土) 13:00開演 / 16:00開演(2ステージ)
※当初6月7日(日)で告知しておりましたが、6月6日(土)に変更となりました。以前の日程でご予定くださっていた方、あらためてご確認いただけたら嬉しいです。会場:壺屋演劇場かさね(沖縄県那覇市壺屋)
上演時間:約70分
料金:大人2,000円 / 学生1,000円 / 小学生以下無料
主催:01 ENTERTAINMENT / チーム恵比寿
脚本:伊藤駿一・金井優
演出:西平寿久
▼ チケットのお申し込み・お問い合わせは下記のいずれかから
・Googleフォーム:https://forms.gle/52R7Zjs6CWisFGk86
・公式LINE:https://lin.ee/jbUrdeB
次回公演:『自治会パンデミック!』
「地域を応援する演劇」シリーズの次の公演です。1100世帯を抱える自治会で、実際に動くのはたった数人。崩れかけた自治会に、1人の若者が現れる——SNSやビジネスの力で改革が進む裏で、長年支えてきた人たちの「居場所」が消えていく。「数字か、つながりか」。対立する価値観の中で揺れる地域の、笑って泣ける群像劇です。
日時:2026年7月4日(土) 14:00開演 / 18:00開演、7月5日(日) 13:00開演 / 17:00開演(全4ステージ)
会場:壺屋演劇場かさね(沖縄県那覇市壺屋2-23-26)
料金:一般2,000円 / 学割1,000円 / 小学生以下無料(当日券は一般・学割ともに +500円)
脚本:かないゆう
演出:西平寿久
主催:01 ENTERTAINMENT
メイン出演:チーム大黒天 / Special Thanks:チーム恵比寿、01 ENTERTAINMENT(土曜クラス)
▼ チケット予約・お問い合わせは公式LINEから
https://lin.ee/jbUrdeB
【挑戦その2】「出張一人芝居」はじめます!
沖縄本島内であれば、どこへでも行きます。
観客が何名でも構いません。「たった1人」からでも、見たいと手を挙げてくださる方がいれば、あなたのためだけに、指定された場所へ伺って全身全霊で演じます。
「いっちーの一人芝居を見てみたい」「うちの場所でちょっと演じてみてよ」と思ってくださる奇特で温かい方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください!
▼出張一人芝居の詳細や、企画に込めた想いはこちらから
▼出張一人芝居のご依頼・ご相談は公式LINEから(上のLINEリンクと同じです)
https://lin.ee/jbUrdeB
