【悲報】サロンに落選したんだが【時空BBS:芸術板】
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【速報】サロンに落選したんだが
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1 マネ ◆Manet【フランス/画家】
エドゥアール・マネ。
一八六三年。サロン(官展)の審査結果が出た。
落選した。
俺だけじゃない。今年の応募作のうち、三分の二以上が落選だそうだ。
さすがに騒ぎになっている。
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2 モネ ◆Monet【フランス/画家】
クロード・モネです。
マネさん、お疲れさまです。
私も落選組です。
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3 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>2
モネか。名前が紛らわしいな。
何度も間違えられるだろう。
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4 モネ ◆Monet【フランス/画家】
>>3
はい。手紙の宛先を間違えられたことが何度か。
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5 ルノワール ◆Renoir【フランス/画家】
ピエール=オーギュスト・ルノワール。落選しました。
審査員は目が腐ってるんじゃないかと思いましたが、
まあ愚痴を言っても始まらない。
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6 セザンヌ ◆Cezanne【フランス/画家】
ポール・セザンヌ。エクス=アン=プロヴァンス出身。
落選。当然だと思っている。
俺の絵が今のサロンに受け入れられるはずがない。
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7 ドガ ◆Degas【フランス/画家】
エドガー・ドガ。
私は一応サロンにも出しているし、入選したこともあるが、
今年のこの落選率は異常だ。審査基準が硬直しすぎている。
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8 マネ ◆Manet【フランス/画家】
いい面子が揃ったな。
さて、ここからが本題だ。
皇帝ナポレオン三世が動いた。
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【速報】落選展が開催されるらしい
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9 マネ ◆Manet【フランス/画家】
落選者の数があまりにも多いため、皇帝が「落選した作品も展示する場を設ける」と決めたらしい。
「落選展」だ。サロン・デ・ルフュゼ。
場所は公式サロンの隣の部屋。
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10 ルノワール ◆Renoir【フランス/画家】
>>9
落選した作品を、わざわざ展示する?
それは……ありがたいのか、晒し者なのか、どっちだ。
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11 ドガ ◆Degas【フランス/画家】
>>10
両方だろう。
「見てやるから文句を言うな」という皇帝の政治的判断だ。
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12 セザンヌ ◆Cezanne【フランス/画家】
>>11
だが、展示の場が得られるのは事実だ。
俺は出す。笑われてもいい。
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13 モネ ◆Monet【フランス/画家】
>>12
セザンヌさんの覚悟、すごいですね。
私も出します。見てもらえるだけでも意味がある。
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14 マネ ◆Manet【フランス/画家】
俺も出す。「草上の昼食」を。
裸の女性が、着衣の男性と一緒に野原で食事をしている絵だ。
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15 ルノワール ◆Renoir【フランス/画家】
>>14
マネさん、それは……サロンが拒否した理由、なんとなくわかる気がする。
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16 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>15
なぜだ。ティツィアーノやジョルジョーネの古典的構図を現代に置き換えただけだ。
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17 ドガ ◆Degas【フランス/画家】
>>16
「だけ」ではないでしょう。
古典なら神話の衣を着ている。あなたのは現代の男女がそのまま描かれている。
それが問題なのでは。
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18 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>17
現代を描いて何が悪い。
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【実況】落選展、開幕
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19 マネ ◆Manet【フランス/画家】
落選展が始まった。
人が来ている。かなりの数だ。
だが……雰囲気がおかしい。
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20 モネ ◆Monet【フランス/画家】
>>19
「おかしい」というのは。
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21 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>20
笑いに来ている。
明らかに「落選した絵を見て笑う」ために来ている客が多い。
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22 ルノワール ◆Renoir【フランス/画家】
>>21
やはりそうか。
見世物小屋みたいになっているのか。
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23 セザンヌ ◆Cezanne【フランス/画家】
>>22
覚悟の上だ。笑わせておけ。
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24 マネ ◆Manet【フランス/画家】
俺の「草上の昼食」の前に人だかりができている。
批評家が怒鳴っている。「不道徳だ」「品位がない」と。
一般客は面白がっている。
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25 ドガ ◆Degas【フランス/画家】
>>24
批評家の怒りは、裏を返せば無視できないということですよ。
本当にくだらない絵なら、怒りすら生まない。
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26 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>25
ドガ、お前のそういう冷静さは助かる。
だが正直に言うと、堪えている。
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27 モネ ◆Monet【フランス/画家】
>>26
マネさん……。
私たちの絵が笑われるのは、まだ「見えている世界」が違うからだと思います。
私たちが見ている光を、まだ彼らは見ていない。
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28 セザンヌ ◆Cezanne【フランス/画家】
>>27
モネ、いいことを言う。
だが「いつか見える」保証はどこにもない。
俺たちが間違っている可能性だってある。
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29 ルノワール ◆Renoir【フランス/画家】
>>28
セザンヌ……お前、自分の絵を信じてないのか?
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30 セザンヌ ◆Cezanne【フランス/画家】
>>29
信じている。だが確信はない。
確信がないまま描き続けるのが、画家だと思っている。
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【乱入】審査員サイドの言い分
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31 カバネル ◆Cabanel【フランス/画家・サロン審査員】
アレクサンドル・カバネル。サロンの審査に関わっている画家だ。
諸君の怒りは聞こえている。だが、審査員として一つ言わせてもらいたい。
サロンには基準がある。
技術的な完成度。構図の品格。古典的教養に裏打ちされた主題。
それを満たさない作品を通すわけにはいかない。
基準を緩めれば、サロンの権威が崩れる。
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32 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>31
カバネル。お前の「ヴィーナスの誕生」は今年のサロンで大評判だそうだな。
裸の女神が波の上で横たわっている。
俺の絵は「不道徳」で、お前の裸体画は「芸術」。
違いは何だ? 神話という言い訳の有無か?
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33 カバネル ◆Cabanel【フランス/画家・サロン審査員】
>>32
言い訳ではない。伝統だ。
神話の裸体には文脈がある。意味がある。
君の絵の裸体には、文脈がない。ただ裸の女が座っている。
それが問題なのだ。
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34 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>33
「文脈がない」のではない。「新しい文脈」だ。
お前たちが認められないのは、新しさの方だ。
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35 ドガ ◆Degas【フランス/画家】
>>33
カバネルさん。一つ聞きたい。
あなたの基準では、技術があっても主題が新しければ落選する。
つまり「何を描くか」を審査員が決めている。
それは芸術の審査なのか、それとも検閲なのか。
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36 カバネル ◆Cabanel【フランス/画家・サロン審査員】
>>35
検閲ではない。品質の保証だ。
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37 セザンヌ ◆Cezanne【フランス/画家】
>>36
品質の基準を決めているのは、あなたがただ。
あなたがたの基準が正しい保証は、どこにある。
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38 カバネル ◆Cabanel【フランス/画家・サロン審査員】
>>37
……歴史と伝統が保証している。
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39 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>38
その歴史と伝統は、新しいものが現れるたびに書き換えられてきたはずだ。
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【決意】俺たちは自分の目を信じる
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40 モネ ◆Monet【フランス/画家】
カバネルさんの言い分も、わからなくはありません。
基準がなければ審査はできない。
でも、基準の外にも良い絵はある。
私は光を描きたい。朝と夕方で同じ風景が違って見える、あの一瞬を。
それがサロンの基準に合わないなら、サロンの外で見せるしかない。
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41 ルノワール ◆Renoir【フランス/画家】
>>40
モネ。俺もそう思う。
サロンに認められなくても、俺たちの絵を好きだと言ってくれる人はいる。
その人たちに届ける方法を考えよう。
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42 ドガ ◆Degas【フランス/画家】
独自の展覧会を開くという手もある。
サロンの権威に頼らず、自分たちで場を作る。
金はかかるが、不可能ではない。
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43 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>42
十年後、それが実現するかもしれないな。
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44 セザンヌ ◆Cezanne【フランス/画家】
>>43
十年か。長いな。
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45 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>44
長くても構わない。
俺たちの絵が正しいかどうかは、俺たちが決めることじゃない。
時間が決める。
だが、描き続けなければ、時間に判断してもらうこともできない。
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46 モネ ◆Monet【フランス/画家】
>>45
はい。描き続けます。
光がある限り。
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47 ルノワール ◆Renoir【フランス/画家】
俺も描く。
笑われても構わない。俺の絵の中の人間は、幸せそうに笑っている。
それでいい。
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48 セザンヌ ◆Cezanne【フランス/画家】
俺は山を描く。
サント=ヴィクトワール山を、何度でも。
答えが出るまで。出なくても。
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49 ドガ ◆Degas【フランス/画家】
私は踊り子を描く。
舞台の裏側の、汗と疲労と一瞬の美を。
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50 カバネル ◆Cabanel【フランス/画家・サロン審査員】
>>45
……時間が決める、か。
私はそれでも基準を守る側に立つ。
だが、十年後に君たちの名前が残っていたら、私の負けだ。
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51 マネ ◆Manet【フランス/画家】
>>50
百年後に答えが出るさ。
その頃には、俺たちの絵がどう呼ばれているか。
「印象派」とかいう名前がつくかもしれない。
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52 モネ ◆Monet【フランス/画家】
>>51
「印象派」。いい響きですね。
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53 ルノワール ◆Renoir【フランス/画家】
>>52
実は「印象派」って、悪口から生まれた名前なんだけどな。
まあ、それはもう少し先の話だ。
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54 マネ ◆Manet【フランス/画家】
今日の落選は、終わりじゃない。
始まりだ。
そう思うことにする。
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【芸術ノート】― 登場人物と史実の解説 ―
■ エドゥアール・マネ(1832-1883)
フランスの画家。印象派の先駆者とされるが、本人はサロンでの評価を求め続け、印象派展には参加しなかった。1863年のサロン落選展に出品した「草上の昼食」は、着衣の男性と裸体の女性が同席する構図で大スキャンダルとなった。古典的な構図(ジョルジョーネやライモンディの版画に基づく)を現代の場面に置き換えたもので、「神話的文脈のない裸体」が不道徳と非難された。
■ クロード・モネ(1840-1926)
フランスの画家。印象派の名称の由来となった「印象・日の出」(1874年)の作者。光と色彩の変化を捉えることに生涯をかけた。マネとは名前が似ているため混同されることが多く、本人たちも交流があった。
■ ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)
フランスの画家。人物画、特に女性の肌の色彩表現に優れた。初期は印象派展に参加したが、後にサロンへの出品も再開した。幸福感に満ちた画風で知られる。
■ ポール・セザンヌ(1839-1906)
フランスの画家。故郷プロヴァンスのサント=ヴィクトワール山を生涯にわたって繰り返し描いた。サロンには何度も落選し、生前の評価は限定的だったが、死後「近代絵画の父」と称されるようになった。ピカソやマティスに多大な影響を与えた。
■ エドガー・ドガ(1834-1917)
フランスの画家・彫刻家。バレエの踊り子を描いた作品で知られる。印象派展に参加したが、屋外の光よりも室内の人工照明下の人物描写に関心を寄せた。裕福な家庭に生まれ、他の印象派の画家たちとは経済的背景が異なっていた。
■ アレクサンドル・カバネル(1823-1889)
フランスの画家。アカデミズム絵画の代表的存在。1863年のサロンに出品した「ヴィーナスの誕生」は、ナポレオン三世が買い上げるほどの大成功を収めた。マネの「草上の昼食」と同年の出品であり、「官展が認める裸体」と「拒否される裸体」の対比として美術史上しばしば引き合いに出される。
■ 1863年のサロン落選展について
・正式名称は「サロン・デ・ルフュゼ」(Salon des Refusés)。ナポレオン三世の命により開催された
・この年のサロンでは応募作の約六割以上が落選し、芸術家たちの不満が高まっていた
・落選展は大量の観客を集めたが、多くは「笑い物にする」目的で来場したとされる
・マネの「草上の昼食」は最大のスキャンダルとなった
・印象派の画家たちが独自の展覧会(後に「印象派展」と呼ばれる)を初めて開催したのは1874年で、この落選展から約11年後のことである
・「印象派」の名称は、1874年の第一回展覧会で批評家ルイ・ルロワがモネの「印象・日の出」を見て嘲笑的に使ったもの
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