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⑯ とてもウブうそうな年下のBOYへ…(1986年8月)

タイトルが昭和……。ウブって今の人に通じるかな。今回は、名寄から札幌を経由して北見へ向かう道中の話である。単なる移動で、写真も残っていないが、当時の列車の車内の様子や、旅人たちの会話などを少し紹介したい。

ちなみに次の停車駅は「池北線」です。
お忙しい方はこの記事を「通過」しても構いませんが、どうか「途中下車」はしないでくださいね(笑)

今回の記事で地図はあまり関係ないかも

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闇の中を激走するオンボロ急行

今夜は夜行急行「大雪号」に乗って、北見に向かい、池北線の始発列車に乗る予定だ。「大雪号」は旭川からでも乗れるのだが、確実に座って眠りたいので、列車の起点である札幌に向かうことにした。

深名線乗車後、名寄駅付近を彷徨い、200円の学生ラーメンで夕食を済ませた後、18時37分発の旭川行き急行「礼文号」に乗車した。キハ56・28といった老朽ディーゼルカーの3両編成で、車内はほぼ満席であった。

名寄駅(2003年撮影)

夕暮れの宗谷本線を、老朽ディーゼルカーがエンジンを唸らせ、激しく振動しながら激走する。いくらオンボロとはいえ、さすがに速い。しかし、車内設備は、先ほど乗車した深名線のキハ40の方がはるかに良い。

ここでも女の子の観光客が目立つ。斜め向かいのボックスには、4人組の高校生か大学生と思われるグループがいた。そのうちの2人が、時刻表を一生懸命めくりながらプランを立てている。時刻表の表紙はちぎれかけ、中のページもバラバラになりそうだった。旅に出てから計画を立てているのだろうか……。

2人は一言もしゃべらず、時刻表と観光ガイドを一生懸命に調べている。しかし、残りの2人はそんなことは気にもせず眠っていた。

外は真っ暗になり、列車は士別から1時間ノンストップで激走する。車窓の外は闇に包まれ、何も見えない。急行列車で1時間ノンストップというのも、本州ではあまり体験できない。やがて闇の中に灯がチラチラ見えてくると、終点の旭川、19時57分到着。

前の子と話をしませんか?

わずか3分の接続で、L特急「ライラック24号」に乗り換える。6両編成のうち5両が自由席で、なんとか座ることができた。リクライニングシートを倒し、2時間ほど眠って行こう。

眠りにつこうとしたところ、深川から若い男性が私の隣に座った。その人はヒッチハイクで道内を旅している途中だが、今日は時間の都合で列車に乗ったのだという。

特急ライラック(1984年撮影)

ものすごい九州弁で、まさに九州男児を絵に描いたような人だった。人懐っこく、いろいろと話しかけてくる。そこまではよかった。だが、次の言葉に私は呆れた。

「前の子と話をしませんか?」
前の座席には、若い女性がひとりで座っている。もちろん見知らぬ人だ。意味がわからない。

「はぁ?」私が唖然とする。そんな私を無視して、九州男児は席を立って、前の席の女の人に声をかける。私はただ呆れている。

「あのー」
「うわっ!」

「席を向かい合わせにして話しませんか?」
「……はい。ああ、驚いた。ビール飲み終わったら……」

女の人は、大きな登山リュックと寝袋を持った、本格的登山スタイルの旅人、いや、山女だった。肌は白いが、健康的な印象の若い人だ。登山の帰りとのことで化粧はしていないが、はっきり言ってカワイイ……。

「2人は旅行でしょ、わたしは山だけど……」
こんな形で話すのは嫌だ……でも、カワイイからまあいいか。
ところが、席を向かい合わせにしようとしたら、前の席の人がリクライニングさせて眠っていたので、座席を回転させることができなかった。

こんなもんかと思って、少しガッカリ……。しかし、女の人は振り向き、座席の背越しに話しかけてきた。こんな状態で、話を続けられるような状況を作ってしまうなんて、尊敬か軽蔑かはともかく、さすが九州男児だ。

女の人は北海道の人だった。
九州男児は、小樽商科大学を受験して落ちたと言っていた。

「わたしも行きたかったんだ」と言う女の人は、札幌にある看護婦を育てる短大に通っているそうだ。
20歳とのこと。私より一学年上ってことか……。

20歳の女の人と言うと、下手な化粧をした派手な人を思い浮かべてしまうが、この方のように綺麗な方だと、素顔のままでも美しいと思う(当時の私は、何を書いているのだろう。大学で見かける女子大生が少し苦手だったのだ)。

私は女性と話すのが苦手だ。九州男児と女の人の会話を傍観しているつもりだったが、女の人が私の方を向いたので、自己紹介せざるを得なくなった。

「えっ、大学生? さっき2人の話を聞いていたんだけど高校2年生と大学生が話しているとばかり思ってた」

綺麗な人と話せて嬉しかったのかな


このときの紀行文を読み返すと、延々6頁にわたって議事録状態になっていた。女の子と話せて嬉しかったのかな……さすがに編集する。

九州男児はヒッチハイクの旅で、今日はどうしても小樽に行かなきゃならないとのこと。その話を聞いたドライバーが、「列車で行くように」とお金をくれたとか。
小樽に行くのは、旅で知り合った女子大生と会うためだとか(自慢話かよ、しかも女の人の前で)。

女の人もヒッチハイクはよくやるそうだ。
そして、今回は士別の山の帰りだそうだ。十勝三股は、色々な山にアタックできるので、よく行くとのこと。
ひとりでテントを持って山に入る……勇ましい。格好いい。

九州男児は北海道は5回目だとか、親が旅に反対して喧嘩して出てきたそうだ。女の人は山に行くのに親が反対するらしい(女の子の単独野営登山は危険を伴うだろう)。私が、妹を映画に連れて行ったことで旅立ちの許可を得たことを言うと
「えっ、それだけ?」と驚かれた。

この時に乗った車両と同形式(2007年に撮影)

九州男児が、
「野球は巨人が強いらしい」と言うと、女の人は
「良かったね。巨人ファンでしょ」と言った。
私は「大洋ファンです(現在のDeNAベイスターズ)」と嘘を言った。本当は西武ライオンズファン……どうせパ・リーグなんて認知してもらえない。

女の人は九州男児に海の話を聞いていた。
「北海道の海って綺麗じゃないでしょ。寒い色をして……。北海道の人なら、11月の九州の海でも泳ぎますよ」

こんな話が延々6頁に渡って記載されていた。羽幌線の記述より長い(笑)。原文にはこうも書かれていた。

別に女の人と話をするのは珍しいことではないが、やはりあがってしまう。
女の子に対してどういう対応をすればいいのか考えすぎて、しどろもどろの返事しかできない。
まして、私から話しかけることはとてもできず、女の人の質問に答えるのが精一杯であった。

そして、また孤独な旅へ

楽しかった時間は、あっという間に過ぎていった。
女の人は札幌に着く前に、荷棚のザックからトマトを取り出した。
「うちで作ったの。良かったら食べて」と、ひとつずついただいた。

スタンプノートにサインして貰った

なんだか名残惜しくなって、サインをもらった。
「年下のBOYへ、君は緊張ぎみに話をして、とてもウブそうですね………」
褒め言葉のように感じて嬉しかった。

21時42分、ライラック24号は札幌駅一番ホームに着いた。

女の人はTシャツ姿のまま、巨大な登山リュックを背負っていた。格好いい!

薄着の女性が、ハーネスで支えられた登山リュックを背負うと、上半身のラインがくっきりと際立ち、私には刺激的すぎた。

「それじゃ、わたしは家に帰るから……いい旅を」
九州男児は、えっ……て顔をしていた。この後を期待していたのだろうか。

私は夜行急行「大雪3号」に乗り、北見を目指した。
夜行列車二泊目で疲れているのに眠れない……。

20歳のあの女の人の刺激的な姿が、脳裏から離れない。
そして、ヒッチハイクや単独野営登山で旅をする彼女のスタイルと比べると、ただ列車に乗っているだけの自分が、とても軟弱に思えてきた。

書き終わって読み直してみると、当時の私と今の私があまり変わっていないことに気がついた。そして、当時の私がなぜか愛おしい。

ところで、20歳の女性に対して、なぜか「女の子」とは書かず「女の人」と表現している。多分、自分より年上だったからだろうか。あるいは、山女をリスペクトしていたのかもしれない……。今となっては、わからない。

次回はちゃんと鉄道の記事を書きますが、このあたりから徐々に脱線していきます。

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