⑮旅を書くのか、書くために旅をするのか〜ぬかびら温泉(2025年5月)
本当は、タウシュベツ川橋梁の訪問は、もっとゆっくり計画するつもりだった。だが、一日も早くこのマガジンを書き上げ、一区切りつけたいという思いから、5月16日からの土日を使って、1泊2日で糠平温泉を訪れることにした。

noteを続けることが苦しい
noteを書き始めて、友人にこう言われた。
「承認欲求を嫌い、人から批評されるのを何よりも嫌っていたのに、どうしてそんな世界に入ろうとしたの?」
……その通りかもしれない。
自分でも、この世界に向いていないことは、認めたくなかったが、わかっていた。当然のように行き詰まっていた。
noteは、フォロワーの数や「スキ」の数で競うものなのだろうか、まるで採点されているようで嫌だな……。あらためて、SNSでフォロワー数を争う芸能人のメンタルはすごいと思う。

大事なのは中身。具体的な意見を求めて、文学部出身の若い後輩に意見を聞いてみた。まず、私が尊敬する、素敵な文章を書くクリエーターの作品を見てもらった。
「これはすごい。これを毎日?」と感嘆していた。そして私の記事を読んでもらったところ、言葉に詰まり、黙り込んでしまった。
女性の意見も聞こうと、友人にある女性人気クリエーターの記事を読んでもらった。旅をテーマにした記事だ。すると、夢中になって読んでしまい、スマホを返してくれない。
「この人の作品、ずっと読んでいたい。この若さでこの文章はすごい。引き込まれる」と言った。私のも見てもらったところ、最後まで読むことなく
「悪いけど、読みたいとは思わない。向いてないよ」と一刀両断された。

潮時かな……。早くマガジンを早く書き終えて、区切りをつけて、改めてnoteに対する自分の考えを整理したい。そのためにも、タウシュベツ川橋梁に早く行かなければならない。なぜなら、このマガジンを書き始めたきっかけは、東鹿越駅で聞いたタウシュベツ川橋梁の話だったからだ。
とにかく旅立とう。それから考えよう
帯広空港行きのJALは25分遅れで、13時5分に帯広空港に到着した。今日は、帯広バスターミナル14時10分発の高速バス「ノースライナー」に乗る予定である。このバスは、ぬかびら温泉郷に停車する唯一の高速バスだ。チケットはネットであらかじめ購入しておいた。空港連絡バスで帯広バスターミナルに移動して「ノースライナー」に乗り継ぐが、余裕は20分しかない。しかし、空港連絡バスは飛行機の到着の遅れを受けて、25分遅れる予定だ。
「このバスの帯広駅到着は14時15分ですね。14時10分発のバスには間に合いません」と、連絡バスの運転士に言われた。バス会社も違うため、調整もできないらしい。タクシーを勧められたが、それでもいいと言って、バスに乗り込んだ。もちろん、間に合わせてくれとは言わない。ただ、ひょっとしたら間に合うかもしれない。そんな賭けをしてみたかった。

バスは特に急いだ様子はなかったが、順調に走り、ちょうど14時10分に帯広バスターミナルに到着した。運転士にお礼を言い、発車直前のノースライナーに駆け込んだ。
事前予約が必要なバスなので、混んでいるかと思いきや、乗客は数名だけ。壊れた座席もあり、少し興ざめした気分で北へ向かった。しばらくは酪農地帯の中を、まっすぐに進む。退屈な区間だ。バスは、かつて士幌線が停まっていた街に停車するが、乗車専用のため下車はできない。このバスは道北バスの運行で、ここは本来、十勝バスのエリアだからだ。

上士幌を発ったバスは、ゆるやかなカーブを描きながら峠道を登っていく。かつての士幌線は、この坂を苦しげに、歩むような速度で進んでいた。それに比べて、バスは静かに、そして軽やかに峠を越えていく。
やがて、左手に士幌線の遺構であるアーチ橋がいくつも現れてくる。しかし、ガードレールが邪魔をして、バスの車窓からはあまりよく見ることができなかった。

前回訪れた際には周辺を歩いたが、この地域は熊の出没が頻繁に報告されており、散策は危険である。
帯広から1時間31分後、ぬかびら温泉郷に到着する。ここはかつて士幌線の糠平駅があった付近である。ぬかびら温泉郷へは、路線バスが4本、特急バスが1本のみ運行されている。

このバスは、ぬかびら温泉郷を経由し、三国峠を越えて旭川へ向かう。かつて士幌線が目指した区間をたどるバスだ。最後まで乗っていたい気分になった。
下車したのはわずか3人だったが、温泉旅館がいくつか並び、大きくはないが温泉街らしい場所だった。
時間があったので、NPO法人ひがし大雪自然ガイドセンターを訪問したが、一人旅の女性がスタッフに毎年、タウシュベツ川橋梁を訪問していると語っていた。このブームには驚いたが、違和感も感じ始めていた。
鉄子が集まるユースホステル
私が向かう宿は「東大雪ぬかびらユースホステル」だ。最初は旅館に泊まり、ガイドセンターが主催するタウシュベツ川橋梁訪問ツアーに参加しようと思っていたが、予約は二ヶ月先まで埋まっていた。そのとき、東鹿越で出会った旅人が語っていたユースホステルのことを思い出した。ここのツアーでも橋梁を訪れることができる。

正直、この歳でユースホステルに泊まることには抵抗がある。シニアの利用者も多いとは聞いていたが……。果たして、夕食時にテーブルに集まった人を見てみるとシニアが多かったものの、一人旅の若者も2人いた。
同じテーブルに座った若者は、社会人1年目の「鉄子」で、北海道には4月から数えてこれが4回目だという。この冬は宗谷本線の抜海で下車して宿に泊まり、昨年の夏には比羅夫にも泊まったそうだ。東鹿越で出会った旅人も筋金入りの「鉄子」だったが、このユースホステルは「鉄子」が集まる場所なのだろうか。
旅を書くのか、書くために旅をするのか
夕食後、私はひとり食堂で、いつものようにnoteの更新やSNSのチェックをしていた。すると、一人旅の4人が楽しそうに会話しているのが聞こえてきた。皆、鉄道ファンで、その中の女性2人も、また別の「鉄子」だった。
若い女性は、野宿をしながらバイクで日本を一周したことがあり、青ヶ島などの極めて到達困難な離島についても、無人島以外はほとんど訪れたようだ。
今は鉄道旅をしているみたいだが、お金がなくなれば現地でバイトをし、ソロキャンプ中に危険な目にも何度も遭っているらしく、私は思わず、スマホの入力をやめて話に聞き入ってしまった。

まるで学生のように見えるその人は、SNS世代のど真ん中の筈だが、どうもインスタなどには否定的なように聞こえた。せっかく、普通の旅人が経験できないような経験をしているのだ。その体験を記事にすれば、きっと面白いものになるだろう。つい、声をかけてみた。
「ブログとか書かないの?」
「書いてたんですけど、だんだん書くことが目的になってきて、何もしていないときでも、無理に書くことを探すようになってしまって……」
そのことに矛盾を感じて、彼女はブログをやめたのだという。
私が探し求めていた答えは、これだったのかもしれない。

その若い旅人に私がnoteをやっている事を伝えた。そして、今の話を聞いて、ようやく書くことをやめる決心がついたと告げた。しかし、返ってきたのは、まるで心を見抜かれたような言葉だった。
「でもやめられないんでしょ」
明日は、このユースホステルのツアーで念願のタウシュベツ川橋梁に行く。集合時間は14時とのことだ。それまで、自転車で幌加温泉に行こうと思う。
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