白鉄火の誘惑【行こ行こ#63】長崎小夜曲-10
前回までのあらすじ
祈りの三角ゾーンとグラバー園をガイドさんに案内していただき、長崎を少しだけ知った夏のある日。地元の味が楽しみたくて風呂上がりにガイドさんに聞いた店へと足を運んだ。
↓前回
学びと入浴の後
学び、歩く旅で足はもうくたくた。風呂上がりの心地よさと開放感も相まって、もう晩飯のことしか考えられなかった。
「このあと、何を食べたら“長崎の地元料理食べた”って言えますか?」
ガイドさんに聞くと、少し考えてこういった。
「しろてっか、ですね」
え、しろてっか?
初めて聞くその響きに、私は一瞬きょとんとした。
「白い鉄火巻きってことですか?」
「そうそう。マグロじゃなくて、白いの。長崎の寿司屋にはあると思いますよ」
その瞬間、頭の中に“ミッション”のスイッチが入った。
白鉄火を探せ。
銭湯から帰るバスの中で、もはや私は風呂上がりの“白鉄火捜索隊”だった。
駅ビルの奇跡
訪れたのは長崎駅ビルの中にある「若竹丸」という回転寿司屋。
ガイドさんもたまに行くそうだ。吸い込まれるように入店。
目の前には行列。
「やっぱり人気店か……」と思いつつも、列に並ぶ。
「おひとり様ですか?カウンター空いてますよ。」
一瞬で通される。ありがたし。
席に着くやいなや、タブレットの画面を指でスワイプしながら注文を開始した。いよいよ長崎の海が、私の前に現れる。
序章 、ニザダイ(サンノジ)
最初に選んだのは「ニザダイ」。
地魚らしい独特の名前に惹かれた。サンノジ。

初めて食べたが、驚くほど上品。
淡い白身にほのかな磯の香り。九州の甘い醤油が、まるで仕立て屋のように味を整えてくれる。
“海の名刺”をもらったような気分だった。
天然ぶり、昆布〆ダイ、ブダイ
続けて「長崎県産 天然ぶり」。
東京では“ブランド魚”扱いされるほどのブリが、ここでは当たり前の顔で並んでいる。
歯ごたえがありつつ、脂はしつこくない。
甘醤油が舌の上でとろけ、思わず目を閉じる。
「昆布〆キダイ」では、昆布の旨味が魚の甘みを包み込み、
「ブダイ」もちょっと思い出せないけど美味しかったと思う。てか白身ばっかりだけど、なぜこうも美味いのか。

加速
天ぷらにぎりといえば回転寿司チェーン。少し野暮かなとは思ったが注文。

揚げたてなのか、まず天ぷらとしてうまい。
ナスも好物なので、夏の味わいが口内を駆け抜ける。
そして「海老つみれ汁」。

湯気の向こうにつみれが浮かび、出汁の香りが鼻をくすぐる。
エビや昆布の旨みを味噌が包み込み、そしてネギがシャキッと整えている。
ウニ、アジ、翠ジンソーダ
ここでスイッチが入る。「翠ジンソーダ」を一杯。

香りが立ちのぼる透明なグラス。見ているだけで涼やかで、その涼しさを喉に流し込む感じだ。
かああああああああーーーーー!うめえええ
思うわず声が出そうになるうまさ。炎天下、サウナ、徹底的に乾き、水分はとっていたものの、心の水分としてのお酒は改めて五臓六腑に染みわたる。
そして、とうとうお出ましになったウニ。

手元のメモによると、2巻で290円。
2巻で290円!?
安い…安すぎる。
こんな美味いものをこんな手頃ね値段で食べられるなんて、ずるいぞ!長崎県民!
極め付けは「アジ」だ。光ものにも目がない私は、タッチパネルの注文を緩めない。だって2巻で150円ですよ?こんな新鮮なのが。

脂がのりつつも爽やかで、口の中で軽やかに溶けていく。
九州の魚は、どれも生きているように力強い。
炙りひらす、もずく黒酢
「炙りひらす」。「ひらす」とは長崎の方言で「ヒラマサ」のことらしい。表面を軽く炙った香ばしさが、食欲をもう一度かき立てる。

はい、優勝〜。
もう美味い。
ここまで白身ばっかで定番のマグロすら食べていない。しかしこの充実感はなんだ?新鮮で、手頃で、そして地元の人の紹介してくれた店。
これ以上のご馳走はない。
ついでに「もずく黒酢」も注文。

甘く、酸っぱく、体に沁みる。
相当な量を貪りつつ、私にはどうしても遂げなければいけないミッションがあった。
真打登場
満腹の余韻に浸りながらも、ふと思い出した。
「白鉄火、どこにもない?」
タブレットのメニューを何度もスクロールしても見つからない。
まるで隠しコマンドのように姿を現さない。
思い切って店員さんに尋ねると、彼女もだいぶ苦労しているようだ。
「あれ?おかしいなー。もう無いのかな?」
そんな!私は白鉄火を求めてきたのに…。幻の味となった白鉄火を思うと想像が飛躍する。
1−2分くらいした後だろうか?
「あ、一番下の方にありますよ!」
あった!!
……本当に一番下にあった。
というか、従業員の方が見つけられないほど深い階層に、名物メニューを入れておくなんて。
UIデザインが良くないか、あるいは秘密にしたいほど美味いかのどちらかだ。
運ばれてきた「白鉄火」は、透き通るような白身がご飯と海苔に包まれ、まるで月の光を巻いたようだった。

ひと口食べた瞬間、ヒラマサの清らかな脂と、酢飯の酸味がふわりと広がる。ゴマや大葉?の風味がそれを盛り上げる。
これは美味い。ヒラス(ヒラマサ)は東京では珍しいけれど、長崎では馴染み深いものなんだなと旅の醍醐味を堪能した。
さだまさしも食べただろうか?福山雅治も食べたのだろうか?
明日は朝一番の羽田行きの飛行に気乗る。
だから今夜のこの白鉄火が長崎の締めくるりの一皿だ。こんなに美味いものでこの旅のフィナーレを飾れるとは、思わず私も笑顔になった。
お会計は?!
会計の画面を見て、思わずニヤリとする。
「……これで2,970円?」
質が良く、大食漢が満腹まで食べて、酒も1杯飲み。
この内容でこの価格、都内なら軽く倍はする。
それだけじゃない。
地元の人の思い出も味わって、この“体験のフルコース”が3,000円以内。
これは神の思し召しかもしれない。
そんなことを思い出しながら、私は宿へ向かった。
場所:長崎駅ビル「若竹丸」
注文時間:18:53〜19:22(約30分)
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ニザダイ(サンノジ) ¥176
長崎県産 天然ぶり(2貫) ¥198
昆布〆キダイ(2貫) ¥209
ブダイ(2貫) ¥165
揚げ春巻(甘ダレ・2貫) ¥132
海老つみれ汁 ¥286
ウニ(2貫) ¥319
アジ(2貫) ¥165
翠ジンソーダ ¥352
炙りむきうす ¥220
もずく黒酢 ¥121
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小計(税抜) ¥2,700
消費税(10%) ¥270
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合計(税込) ¥2,970
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いよいよ時間、長崎編の最終回です!
↓つづく
記事:まるのすけ
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