【行こ行こ#47】夜の万博、空に浮かぶEXIT【万博再訪&USJ-2】
前回までのあらすじ
スタンプの狂乱を9000文字の大ボリュームで描いた前回。
今回は打って変わって万博の夜のお話。
↓前回
国は違えど暑さは同じ
私と友人のニャウさんは、西口付近のフードコートで昼食と冷房を味わっていた。

遠くから見て「フルーツ」と書いているのを見て近づくと、「木製フルート」だったりと何かと気になることは多い。

この施設は、万博会場内では比較的良心的な価格らしいので、椅子やテーブルはほぼ満員だ。基本的に相席になる。
我々と相席になったのは、ジョージアからやってきた老夫婦だった。
社交性能力の高いニャウさんは積極的に話しかけていた。
「日本はルールが多い。……それにしても暑いわね。」
ニャウさんに後で聞いたところによると、彼らの旅程は全部で10日間。東京、京都、大阪。道頓堀に行ったらしい。旅自体は楽しんでいるようだった。

英語が得意ではない私は、色々と感想を聞きたかったのだが、
「I…。」の後がうまく続かない。
「ジョージアってヨーロッパ感あるけど、トルコの隣だよな。境目ってどんな町並みなんだろう?」
「シュウクメルリって松屋で売ってたけど、実際はどのくらい名物なんだろう?」
様々な疑問が浮かんでは消えるが、口から出ずに私はカレーと一緒に飲み込んでいた。ただ、この国際的な食卓が万博らしくてよく覚えている。
水に映る物語、遠く見える虹
陽が傾く。

大屋根リングは、一部が海の上に建てられている。
そのリングと会場の間には、水でできたステージがある。夜になるとここでショーが開催されるらしい。

名前は「アオと夜の虹のパレード」
水、空気、光、炎、映像、そして音楽を駆使して、水上巨大舞台で子ども「アオ」と多様な生き物たちの交流を描く物語が展開されるそうだ。
実は、一度はニャウさんが予約をとってくれたのに、関西パビリオン行きたさにキャンセルしてもらった経緯がある。今考えると申し訳ない。
我々は、ショーが見える広場へ集まった。対岸の大屋根リングの上には黒山の人だかり。そして、我々の前方には予約席があるようだった。

ショーが始まる。
遠目にもわかるほどの水量が噴き上がり、光が編まれていく。
ストーリーとショーの概要
ストーリー
月夜に虹がかかる時、その島では生きものたちによる祝祭が開かれるという。
そんな言い伝えが残る島で、ひとりの子ども「アオ」が夜の虹と出会う。
繰り広げられる祝祭に歓喜するアオが、多様な生きものたちと交わり心を通わせていく不思議な物語。
ショーの概要
「ウォータープラザ」の水上に、幅約200メートル、奥行き約60メートル、
ショーエリア面積約8,800平方メートルの巨大な舞台空間が誕生します。
舞台の中心には、水のスクリーンをつくりだすモニュメント「ウォーターカスケード」が建設されます。
エリア内には高密度で張りめぐらされる約300基の噴水をはじめ、照明やレーザーなどさまざまな演出装置が設置されます。
それらが音楽と共鳴し合い、物語を体感できるスペクタクルショーを実現します。
参考までに、公式サイトから引用しよう。
色々な動物たちが、主人公と思われる青髪の少年と言葉を交わしているが、いかんせん遠くて聞き取れない。
ストーリーはわからないのだが、放水の量やレーザーや照明。プロジェクターがとんでもない規模なのはよくわかった。
スマホで撮影する者、明日の予定を相談する者、帰りの算段をつける者。
それぞれがなんとなくバラバラの時間を過ごしていた、その時。

夜空に虹がかかったのである。
「おお……虹だ。」
私は思わず口走った。
右隣の若者グループも、前にいた小さな子も、同じタイミングで同じ言葉を発した。
対岸のリングの上の人たちも、みんなが同じ虹を見ていた。
私は、『みんなで同じ虹を見る』という事が、こんなにもエモーショナルだとは思わなかった。
確かにこれは天然の虹ではない。
LEDレーザー素子から放たれるインコヒーレントな光の束。それが水のコロイドに乱反射して拡散し、我々の網膜に写っている。
そう脳では分かっているのに、気持ちは本物を見た時のようだった。
万博の大きな輪の中に現れた虹は、実際は観客の心の中にかかっていたのかもしれないと思った。

光の案内板
そして、夜の本丸。ドローンショー。
実は私はこれをとても楽しみにしていた。
2021年。私は東京に住んでいるにも関わらず、東京五輪を見られなかった。
いや、私だけではない。世界中がコロナで外出の自粛を求められていた。
ドローンがオリンピックマークを夜空に描く様子は、テレビ中継で見た。
でも本来ならば、私は夜の散歩がてら生で見れたはずである。
そして、前回万博来た時は、天候の都合で中止。なんとも口惜しい気持ちで帰京したのであった。
いよいよショーが始まる。
「ビュイーーーーーン」という回転翼が空気を切り裂く音が聞こえる。
きっともうドローンはそこにいるのだろう。

まず、2本の光の柱が対になって、回転しながら空へ伸びてゆく。
それが4本になり、どこまでもどこまでも伸びてゆく。
「すごーい」と思わず声が出る。

最終的には、もう完全に天を仰ぐ形まで伸びた4本の柱は、ゆっくりと揺れ始める。
その後、様々な模様や形を夜空に描いてゆく。

圧倒されるのは、その『量』である。
なんと1000機ものドローンが、一糸乱れぬコンピュータ制御で飛行しているそうである。

「これって待機するエリアも結構広くないとダメだよなぁ」
撮影でドローンをたまに操縦する私は、この見事な制御に感心すると同時に「運用大変そーー!」という謎の老婆心まで芽生えていた。

「世界は一つ、惑星も一つ」とメッセージが映りショーは幕を閉じる。

おしまいにはQRコードが表示される。

驚いたのは、「ちゃんと読めること」
なんか知らないうちにテクノロジーって進化しているんだなと、すごく万博らしい感想を抱いたりもした。
↑QRコードを読むと到達するサイト
光の案内板
私が最も好きだったのは、最後の“機能美”だ。
空に浮かぶ大きな『EXIT』の文字。
そして EAST/WEST の矢印。

見上げれば、会場のどこからでも自分の帰路がわかる。
物理的な看板を地上に林立させれば、昼間は景観の邪魔になる。
しかし空なら、必要な時間だけ、必要な形で“現れては消える”。
まるでゲームのHUD(ヘッドアップディスプレイ)だ。

日本語表記もあった。
「東/西」って左右対称っぽい文字だから、「出口」を縦組にしたら、反対側の大屋根リングの上の人でも普通に読めるな。
そんな妄想まで弾む。
出
口
<東 西>
そして、夜はふけてゆく
ショーが終わる。空の文字は消え、観客の波が西へ東へ。
私はしばらく立ち尽くして、余韻を吸い込んだ。
ゾロゾロと鉄道組は東口へと向かう。
情報通のニャウさん曰く「大回り」という長い乗車待機列で、東口ゲートの巨大空きスペースをフルに使って、乗客を迂回させている。
もちろん私が4月に来た時にはなかった。
万国旗の下をゆっくり前進しながら、今日の感想を話す。
こんなにたくさんの国が参加しているんだなと改めて思う。
そしてもうドローンが飛んでいない会場上空に目を向ける。
「あの美しい光景を、あのジョージアの老夫婦もご覧になっただろうか。」
そんなことを思いながら、私は電車が到着するのを待ったのだった。

つづく
次回↓
記事:まるのすけ
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