思案橋ラーメン【行こ行こ#59】長崎小夜曲-5
前回までのあらすじ
軍艦島や平和公園の後、ONSEN&SAUNA YUKULUで汗を流した前回。
↓前回
道のり
お風呂とサウナでさっぱりした私は、意気揚々と夜ご飯を求めて長崎の繁華街へ向かっていた。

「朝はちゃんぽん、昼はトルコライス。じゃあ夜は何を食べよう?」
土地勘もなければ事前調査もほとんどしていない。
ふらりと歩きつつ、Googleマップをちょいと開いてみる――そんな程度の探し方である。

最初に目をつけた『ラーメン柊木』は20人以上の行列で、さすがに断念した。どうやら地元の人気店なのかもしれない。
次に、たまたま目に入ったのが『思案橋ラーメン』である。

こちらも列はできていたのだが、あの少し古びた外観と佇まいになぜか惹かれて並ぶことにした。

悩むのはメニューだ。
店名が『思案橋ラーメン』なのだから、やはりラーメンを頼むのが筋だろう。
ところが食品サンプルを見た瞬間に気持ちがぐらつく。
一番目立つ左上のスペースに、どっしりと『皿うどん』が鎮座しているのだ。
「これは……長崎らしく、皿うどんだろうな」と、私のゴーストがささやいた。

しばらく並んで入店。店内は獣のような独特の匂いが立ち込めている。
店内は狭いながらも有名人のサインが壁一面に並び、夜中でも行列ができるところを見るとこちらも人気店らしい。
「これが福山雅治が愛した店かー!」観光客と思しき2人組が感嘆の声を上げる。
へーそうなんだ。
もしかしたら、さだまさしもきたのかな?
そんなことを考えながらメニューを眺めた。
久々の瓶ビール
私は結局「皿うどん」を注文した。
朝に長崎ちゃんぽん食べたのだから、皿うどんで〆るのは最も長崎へ来た観光客らしくて良いだろう。
カウンターの向こうには、大きな鍋がドンと置かれていて、これがこの店の中心地に見えた。

料理を待つあいだに、おでんも一品頼んでみることにした。
メニューに『三日月』という名前が見えたのである。
それをなぜだか『三ヶ月』と読んでしまい、私は店員さんに、
「この“三ヶ月”ってやつをください!」
と言ってしまった。
「三日月ですね〜」
店員さんはそうやんわりと訂正してくれて、すぐに運んできてくれた。
出てきたのは三日月型のすり身で、柔らかく味が染みている。

瓶ビールが到着する。
赤いテーブルと瓶の茶色。そして青いラベルがなんともマッチして、素敵な晩餐が始まる予感に満ちていた。

ほどなくして皿うどんが運ばれてきた。

皿うどん。
旨い!
パリパリの細い麺に、とろりとした餡がからんで最高にうまい。
出汁のうまさなのか、具材の香りなのか――いくつもの味と食感が、餡という仲立ちのおかげで一つにまとまっている。
パリパリ、グニグニ、ポリポリ。さらにシャキシャキ、トロトロ、最後にバチンと弾ける。
多種多様な歯応えが、顎から脳へと快楽として運ばれてゆく。
イカの旨味が来たと思ったら次は貝、そこにキャベツの甘みが合流し、麺の香ばしさが呼応する。

店員さんに勧められた“ソースをほんの少し垂らす”と、きゅっと酸味が立って、まるで二皿目を食べているみたいな変化が楽しめた。
東京でも皿うどんを食べたことはあるが、ソースをかけて味を完成させるという文化は知らなかった。
これが“現地で食べる”ことの面白さだな、としみじみ思う。
さらに、妙に美味しい水を一口飲んでから、また麺をすする。
その絶妙な味わいに夢中になって食べ進めているうちに、気づけば満腹になってしまった。
夜風と共に宿へ戻る
外に出ると、夜風がちょうどよかった。街は少しだけ静まりはじめていて、ネオンだけが長崎の夜を照らしている。
宿まではおよそ700メートル。
サウナで温まった体に夜風を当てながら歩くと、さっきの皿うどんの香りや、瓶ビールの喉越しが一度よみがえってくる。
朝はちゃんぽん、昼はトルコライス、夜は思案橋ラーメンの皿うどん。
ぜんぶ“長崎らしさ”で一日をつないだことに、小さな達成感のようなものがあった。
これもまた、食のスタンプラリーと言えるのかもしれない。
↓つづく
記事:まるのすけ
いいなと思ったら応援しよう!
応援いただければ幸いに存じます。チップは有り難く頂戴し取材費にさせて頂きます。感謝。