移住・転園 | 5歳が自己肯定感を取り戻すまで ー 「前の園に戻りたい…」と言わなくなった日
2025年10月、世田谷から長野に移住しました。
5歳、年中の息子は転園することになりました。
1歳で転園を経験していて、そのときは大きな問題はありませんでした。だから今回も、どこかで「子どもは慣れるもの」と思っていました。
でも、実際はまったく違い、3ヶ月苦しみました。
でも、苦しんだ末に得たものが大きかったです。
この春、転園なさった方もおられるかと思います。
GW明けの行き渋りもあるかもしれません。
息子のために書き残しますが、どなたかのお役に立てたら嬉しいです。
前の園で守られていた「できる自分」
前の保育園での息子は、いわゆる優等生でした。
大人の言うことをよく聞く。
片づけを率先してやる。
周りの子のフォローをする。
先生からは「いつもありがとう」と言われる存在で、
本人の中にも「自分はできる子だ」という感覚があったと思います。
ただ私は、その姿を少し複雑な気持ちで見ていました。
素敵だと思う一方で、どこか自分を抑えて“いい子”でいようとしているようにも見えたからです。いつかそのバランスが崩れるのではないかという不安もありました。
新しい園では「自分の正しさ」が通用しなかった
転園後、息子は何度も傷つきました。
知らないルールの中で注意される。
悪いことをしたつもりはないのに、ダメだと言われる。
例えば、夕方の園庭で車が来るから危ないと大きな声で注意されたこと。
延長保育で別の部屋に行ってはいけないと知らずに注意されたこと。
本人にとっては「悪いことをした」ではなく、「知らなかっただけ」なのに、注意される。
それが積み重なっていきました。
おそらく彼の中では、「ここでは自分は評価されない」感覚があったのだと思います。
毎日が「できない自分」になった
環境の変化は想像以上に多くありました。
身支度はすべて自分で行う。
片づける場所が違う。
歯みがきが増える。
遊んでいい範囲もわからない。
さらに、友達の言葉が聞き取りづらいこともあったようです。
本人は「やることが多くて疲れる」と嘆いていました。
できないことが増え、失敗しやすい状況だったのだと思います。普段は泣かない子ですが、転園してから涙を湛える日が何度もありました。
「ごはんがもらえないかもしれない」という恐怖
中でも印象に残っているのが、お昼ごはんの出来事です。
「準備ができていないと、ごはんをあげないよ」
そう言われたことが、強く残っていたようでした。
先生は意地悪する意図はなかったと察します。
ただ、本人にとっては、ただの注意ではなく、「食べられないかもしれない」という怖さがあったようでした。
そして彼は、5歳なりに原因を考えていました。
遊ぶ時間が長いこと。
トイレが混んでいること。
そのせいで自分は準備が間に合わない、と。
「本当はできるはずなのに、ここではできない」アンコントローラブルな環境に嫌気がさしているようでした。
毎週「前の園に戻りたい」と言っていた
息子は毎週のように「前の保育園に戻りたい」と言っていました。
私はすぐに解決しようとはせず、まず「つらいよね」「寂しいよね」と寄り添うことを意識していました。
その一方で、「戻ることはできない」ことも伝え、
「また会いに行こうね」と、元のつながりは残すようにしていました。
園にも状況を共有しながら、少しずつ安心できる要素を増やそうとしていました。
転機は「コマの先生」と呼ばれたこと
クリスマスに、新しい園でコマをもらいました。
最初はできなかったのが、少しずつできるようになりました。年明けに東京に戻り、友達に見せると「すごい」と言われました。
教えてあげると、「コマの先生」と呼ばれるようになりました。
さらに前の保育園の友達に会ったとき、みんなに囲まれて、変わらず受け入れてもらえました。
そのとき、彼は「自分はここにいていい存在なんだ」と感じられたのかもしれません。
新しい園で得たものが、元の場所で価値を持った。
そのことが大きかったように思います。
「優等生でいたい」ではなく「楽しそうだからやる」。自己肯定の変化
新しい園の先生に多大に寄り添って頂いたこともあり、その後は特に変化が見られました。
以前は参加しなかったダンスや鬼ごっこに、自分から入るようになったことです。
最初は見ているだけだったのが、今では前に出て踊るようになり、いくつものチームに参加するほど楽しんでいるようです。
負けたり捕まったりしても、大きく気持ちを崩すことも減っていきました。
以前は「正しくできるか」「どう見られるか」を気にして動いていたのが、
「楽しそうだからやる」
という判断に変わってきたようにも見えます。
一度「優等生である自分」を手放せたからこそ、評価の軸が、外から内に少し移ってきたのかもしれません。
これまでの強みはそのままに、選択肢が増えていた
ただ、これまでの良さがなくなったわけではありません。
例えば、
周りの様子をよく見て動けること。
大人の話を理解して行動に移せること。
場の空気を感じ取って振る舞えること。
元々持っていた優等生スキルは、今も彼の中に残っています。
その上で、
「うまくできるかわからないけどやってみる」
「負けるかもしれないけど参加する」
という選択もできるようになってきた。
一つのやり方だけでなく、いくつかの選び方を持てるようになった、変化を感じています。
「元の居場所」で価値を取り戻せた
今回の経験から感じたことがあります。
子どもが新しい環境で苦しむとき、
「慣れれば大丈夫」と考えてしまいがちです。
でも実際には、その子が「自分はどんな存在なのか」アイデンティティを見失っていることがあります。
そして回復のきっかけは、新しい環境の中だけで起きるとは限らない。
大人も学生時代の仲間と会うとホッとするように
元いた安心できる人たちの中で、
「自分は大丈夫」
「自分にはできることがある」
と感じられることが、
一歩前に進むきっかけになることもあるのだと思います。
最後に
環境が変わると、うまくいかなくなることがあります。
それは「できなくなった」のではなく、これまで通りのやり方が通用しなくなった、という状態なのかもしれません。
今回の転園は、息子にとってつらい経験でした。
でもその中で、「できる自分」だけに頼らない在り方を、少しずつ身につけていったようにも感じています。
そして私自身も、子どもが苦しんでいるときに、何を支えにできるのかを考えるきっかけになりました。
良ければ共感をコメントでいただければ幸いです。
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