生きることに意味を(クラフトとミリアルデ)葬送のフリーレン 第24,69話 考察
第24話でクラフトの言う「エルフであること」の意味を考えてみます。
俺たちはエルフってことだ(第24話)

この場面を振り返ると…
フリーレンはクラフトのことを知らず、同じように、クラフトはフリーレンのことを知りません。エルフは絶滅しつつある種族ですから、お互いを知るということも滅多にありませんし、そもそもエルフの場合はお互いにさほど興味関心がありません。
そして、人間であるフェルンはフリーレンのことを知ってはいますが、知っているのはフリーレンの人生のごく一部にすぎません。そのフェルンもエルフにとっては「すぐ死んじゃう」(第8話)存在です。
そういう場面での、クラフトの「俺たちはエルフってことだ」の台詞です。
さて、エルフの人生観・死生観を考えるときにクラフトと対比すべきはミリアルデです。
ミリアルデの人生観(第69話)
ここでのミリアルデとフリーレンの会話は、フリーレンが振り回されているようなところがあり、わかりにくくなっています。見てみましょう。
まず、ミリアルデは「エルフは長い人生の中で何かを探求することが多い」。なぜなら、「いつも何もしないでぼーっとしている」自分のような人生にしないためだ、と言います。(第69話)

と言いつつも、そんなことをしても無駄だということをミリアルデは身をもって知っています(←ここが読み取りづらいところです)。「人生をかけて探したものが、なんの価値もないゴミだった」という経験を過去にしているからです。(ミリアルデと聖杖法院の関係が気になります)

人生をかけて何かを探求して、たとえば偉大な英雄(クラフト)や大魔法使い(フリーレン)になったとしても、時が流れれば結局は誰にも知られていない存在に還ってしまいます。

つまり、エルフは永遠に近い寿命を持っているがゆえに、逆説的に、誰にも知られていない存在になってしまうのです。
この「生きることの無意味」を思い知ったミリアルデは凄まじい虚無に飲まれています。(ミリアルデの酒浸りからは、フェルンと出会って酒を止めたハイターを想起します。)
ミリアルデは人生の暇つぶしに「皇帝酒は最上の名酒である」と嘘の碑文を彫りました。
そして、その行動について、「意味なんて、何もないわ」と言います。(第69話)

このコマをよく見れば、ミリアルデが「意味なんて、何もない」と言っているのが、単に碑文を彫った行為についてだけではないとわかります。
改行して2行にして一つのフキダシに入れれば済むはずの「意味なんて、何もないわ」を、分割して二つのフキダシに入れてミリアルデの左右に配置しています。こうすることで読むときには「意味なんて――何もないわ」と間が生まれます。読者の視点はミリアルデの体を横断します。これはとても象徴的です。
つまり、ミリアルデが言いたいのは「人生に意味なんてない」、「生きることに意味なんてない」ということです。
※第69話では、ミリアルデの嘘の碑文という壮大な迷惑行為に巻き込まれ、皇帝酒の探索に人生を捧げたドワーフのファスが登場します。ファスはフリーレンの協力を得て皇帝酒を発見しますが、ミリアルデと同じく「人生をかけて探したものが、なんの価値もないゴミだった」ことを知ります。しかし、ミリアルデが至った結論を軽々と飛び越えて異なる位置に着地します。そこにこのエピソードのカタルシスがあります。そして、実は、ハイター(人間)もファス(ドワーフ)と同じ位置に着地していました。つまり、エルフのミリアルデだけが、ここでつまずいてしまっているのです。
クラフトの人生観と女神様と天国
「生きることの無意味」という虚無に飲まれてしまったミリアルデに対して、クラフトは女神様を信じる(仮定する)ことで生きることの意味を回復しました。
自分のことを知る人が誰もいないこの世界で、女神様だけは自分のことを見ていてくれて、誰もが自分の前を通り過ぎてゆくこの世界で、女神様だけは自分のことを天国で待っていてくれるからです。
それが第24話「エルフの願望」において終始クラフトが語っていたことです。
永遠に近い寿命を持った時、人は(つまりエルフは)女神様と天国の存在を仮定せざるを得ない、そうしなければよく生きることができない、とクラフトは言っています。
それが「エルフであること」の意味です。
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