《葬送のフリーレン》用心深く抜け目ない合理主義者の皇帝とゼーリエ・フラーゼの対話(第142話、第144話)
皇帝とゼーリエ(144話「予知夢」)、皇帝とフラーゼ(第142話「会敵」)の対話劇における皇帝の行動についての分析です。先の展開に関する考察、予想が含まれます。
皇帝とゼーリエの対話劇(第144話「予知夢」)
菅野:第144話「予知夢」どうだった?
氷室:やっぱり、ゼーリエの対話劇はおもしろいね。
菅野:知恵熱で三日間寝込みました。
氷室:最初は全然わからなかったな。
菅野:誰かが「ゼーリエとの対話を読むのはピースの欠けたジグソーパズルを作り上げるようなもの」って言ってたけど、ほんとパズルだったね。
氷室:今回の「欠けたピース」は予知夢の場面の直前に、ゼーリエがゼンゼに説明した皇帝の人となりだったと思う。
菅野:「用心深く」・「抜け目のない」・「合理主義者」ね。

氷室:予知夢の中の皇帝の行動はこの3つの性格がきれいに反映されていた。
ステージ1 用心深い皇帝
菅野:最初は、皇帝は夢の中にいることに気付いていない。
氷室:けど、「用心深い」皇帝は場所を移そうと提案する。目的は…

菅野:一つはフランメの「夢かどうか判別するための」魔導具でしょ。他にもあるかもしれないけど。
氷室:歩きながらのゼーリエとの会話で、言葉に違和感を覚える。

菅野:これはゼーリエの失態なんじゃない?
氷室:だろうな。予知夢の魔法について「こんな欠点もあるんだな」って言っているから、油断していたんじゃないか。まさか「フランメのくだらん収集品」があるとは思わないだろうし。
菅野:そして、フランメの魔導具を確認した皇帝は自分が夢の中にいることに気付く。
ステージ2 抜け目のない皇帝
氷室:皇帝が夢の中にいることに気付いてしまったので、予知夢としての意味がなくなった。だからゼーリエは立ち去ろうとする。
菅野:でも、「抜け目のない」皇帝は、ゼーリエを引き止めて、情報を引き出そうとする。

氷室:ゼーリエは、まだ皇帝のことを「私の見ている夢が作り上げた、登場人物」「夢の中の住人」だと思っている。つまり、つまり皇帝に自我があって、情報を持ち帰れること気付いていない。そこを皇帝は利用しようとした。

菅野:この場面の皇帝はいやらしいね。
氷室:しつこいよな。「それ(暗殺計画)を止めたい」って恩着せがましいし。「互いに利があるはずだ」、「悪くない話だろう」って積極的だ。
菅野:ゼーリエは皇帝のことを「陛下」、「お前」と使い分けて呼んでいて、「陛下」の方はちょっと含みがあると思ったよ。
氷室:確かに。「センセイ」みたいな感じか。
菅野:で、ゼーリエが皇帝の自我に気付く。

ステージ3 合理主義者の皇帝
氷室:すると、今まで情報の出し惜しみをしていた皇帝は、突然、自分の精神防御機構についてペラペラとしゃべり始める。

菅野:形勢逆転だね。大魔法使いゼーリエには敵わない。
氷室:皇帝の合理主義者としての側面だ。勝てない相手とは戦わない。「この交渉が決裂すれば帝国が滅ぶ」とまで言って、下手に出てゼーリエと取引しようとする。
菅野:「守りに入った」んだね。

感想
菅野:いやぁ、プロってすごいね。
氷室:キャラの性格をネームで言葉に表した以上は、その通りに動かすんだな。考えてみれば当たり前だけど。
菅野:あと、バルコニーで会話するゼーリエと皇帝って、ちょっといい雰囲気じゃない?
氷室:絵だけなら夜景を見ながら語り合っているカップルだから。
菅野:そうそう!
氷室:ゼーリエは会話を楽しんでいる様にも見えた。皇帝はゼーリエを出し抜こうとして善戦してたもんな。一級魔法使い試験編の面接でもそうだったけど、ゼーリエはそういうの好きだろ。
菅野:皇帝としたって、こんなにフランクな感じで話をしてくれる人はそうそうないはずだから、初対面でズバズバ言ってくるゼーリエに対して、悪い印象は持たなかったんじゃないかな?
氷室:そうすると意外と相性はいいのかも。
菅野:お互い「おもしろい奴」って思ってそう。
※ゼーリエはどうやって「お前(皇帝)は暗殺計画が失敗に終わると考えている」と推論したか?をこちらの記事で考察しています。
皇帝とフラーゼの対話劇(第142話「会敵」)
菅野:皇帝が始めて登場したのは、第142話「会敵」だよね。
氷室:実は第7巻59話「小さな人助け」でもちらっと出てきているんだけど、実質的にはそうだ。

菅野:第144話で使った「用心深く」・「抜け目のない」・「合理主義者」っていう視点で第142話を読み直してみて、何か新しい発見はないかな?

氷室:そう言えばそうだ。じゃあ、ちょっと見てみよう。
1.舞踏会の進行について(用心深い皇帝)
菅野:この場面は舞踏会の最中だから、予知夢を見た後の出来事だね。最初は、舞踏会の進行についてフラーゼに報告を求めてる。
氷室:ゼーリエの従者の数を気にしているな。
菅野:しかも、「対抗するべきか?」って、フラーゼの意見を求めているんだよね。最初に読んだ時は、小物感があったんだけどw

氷室:そうそう。重臣の意見に耳を傾ける賢帝という印象と同時に、「ちっさ!」っていう違和感もあった。
菅野:ゼーリエは「こちらよりも多くの従者を連れてくるだろう」と予想していて、図星なわけだけど…
氷室:ここはゼーリエが「それだけに体面の重要性を理解している」と言っているから、「用心深く抜け目のない合理主義者」という三要素の表れなんだろうな。ただ、——

菅野:ただ?
氷室:——「用心深い」皇帝がフラーゼに探りを入れているという感じもする。
菅野:そうか、予知夢の会話はあれで終わってないからね。ゼーリエとのやり取りの中で、フラーゼに対して疑念を抱いているのかも。
氷室:だから、一見些末な「従者の数」という話題をまずは振って、フラーゼの反応を見た。もしかすると、フラーゼの方から何か言ってくるかもしれないから。
菅野:用心深いね。でも、フラーゼは皇帝が期待するようなことは何も言わなかったんだね。
2.企みを問い質す(抜け目のない皇帝)
氷室:フラーゼの方から何も言ってこないから、次の場面では、「何か言い忘れていることがあるのではないか?」って直球でフラーゼを問い質している。
菅野:フラーゼは「お伝えしたことで全てです」って白を切る。
氷室:フラーゼは答えたくないから差しさわりのない形で返答拒否したんだし、それを皇帝はわかっているはずなのに、皇帝は問いを重ねる。「何を企んでいる」「水臭い真似はよせ」「余も一枚噛ませろ」「其方の手筈ではどうなっている?余は何をすれば良い?」「考えを申せ」等。
菅野:かなりしつこいね。予知夢でのゼーリエとの対話の時とそっくり。「抜け目のない」皇帝の一面かな。
氷室:ついにフラーゼは自分を死罪に処しても構わないとまで言い出して秘密を守ろうとする。

菅野:腹心にそこまで言わせるのは、ちょっと異様だよね。
氷室:確かに。いい加減な根拠ではここまで詰めないだろ。だから、予知夢でのゼーリエとの情報交換で、かなり核心を突いた情報を得ているんじゃないか?
3.強硬策から懐柔策へ(合理主義者の皇帝)
菅野:で、ここからがおもしろいんだけど、フラーゼには強硬策が通用しないと判断すると、皇帝は今度は懐柔策に出るんだよね。

氷室:露骨だよな。君子豹変というのか、節操がないというのか。上手くいかない、形勢不利と見るとすぐに方法を改めて立て直してくる。これはゼーリエとの対話でも表れていた「合理主義者」としての皇帝の姿なんだろうな。
菅野:まあ、それも通用しなくてフラーゼは踵を返して立ち去っちゃう。背を向けたまま皇帝に対して「見て見ぬふりを続けるのがよろしいかと」とか言っていて、かなり失礼な態度だけど、それだけ信頼関係はあるんだろうね。
4.滅びゆく帝国
氷室:フラーゼが立ち去ったあと、皇帝は斜陽の帝国について独り言ちる。
菅野:ここは、第144話「予知夢」を読むまでは違和感があったんだ。
氷室:どんな?
菅野:皇帝はフラーゼのことを「帝国の現状を誰よりも知る其方」って評価しているでしょ。
氷室:うん。
菅野:なのに、「フラーゼ、(中略)其方ですらそう思うのか」って言っているから、皇帝自身は「フラーゼよりも自分の方が正しい認識を持っている」という自信があるんだよね。で、その自信がどこから来るのかわからなかった。

氷室:なるほどね。「帝国の現状を誰よりも知る」フラーゼよりも、自分の方が分かっているって言うんだもんな。妙だね。
菅野:これ、予知夢でのゼーリエとの対話で、帝国が滅びゆく運命にあることを確信したんじゃないかな?
氷室:そんな感じがする。きっとゼーリエから何か聞いたんだな。
感想
菅野:読み返してみてよかったー
氷室:だな。まだまだ謎だらけだけど、会話の流れと皇帝の行動パターンは良くわかった。
菅野:両方ともきれいに《用心深い → 抜け目のない → 合理主義者》のパターンになってたね!
氷室:驚いたよ。当然そういうふうに作ってるんだろうなあ。
菅野:参考になる!
氷室:皇帝とフラーゼの溝も気になった。
菅野:ゼーリエがうまいこと皇帝を取り込んでいる雰囲気があるね。
おわりに
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第144話の感想・考察
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