《葬送のフリーレン》第144話「予知夢」感想・考察
『週刊少年サンデー』(2025/09/03発売号)掲載《葬送のフリーレン》第144話「予知夢」の感想です。ネタバレや先の展開に関する考察・予想が含まれます。
一つ前の第143話「読み合い」の感想はこちらです。その1〜3まであります。
《葬送のフリーレン》に関する他の記事は下記のマガジンにまとめています。
ここからはネタバレ等を含みます。ご注意ください。
読む前に 第143話「読み合い」から
第143話の最後から台詞を抜き出すと
ユーベル:こいつら魔力探知が使えないんだ。五感、それも目視に大きく頼っている。対して私の視線は自由。タイミングを見極めるか。
ルティーネ:…………
ですから、ルティーネの「…………」を受けて第144話はルティーネのアクションから入るのかな…? という頭で読み始めます。
予感したとおりにルティーネの描写から始まれば気になっていたことがテンポよく説明されて納得ですし、予感とは異なり別の人物の描写から始まるなら焦らされて期待が高まります。
感想 第144話「予知夢」
表紙、タイトル(p.1)
表紙は目を瞑って俯いているゼーリエ、タイトルは「予知夢」。戦闘とは全く関係なさそうなタイトルで、表紙はゼーリエですから、もうここから胸騒ぎです。ゼーリエが登場するだけで不安になります。
ゼーリエのことが好きなんだなぁと思いました。みんなそうかもしれませんけどね。ユーベルたちの戦闘なんか(と言っては申し訳ないですが)どうでもよいくらいの気持ちになります。(かなりのユーベルファンなんですけどね)
中身を読めば第144話はゼーリエ回でした。ユーベルとルティーネの戦闘か、でなければ、会場を出たフリーレンたちにスポットライトが当たると思っていたので、不意打ちです。この構成はうまいと思いました。すくなくとも私はやられました。
ゼーリエとゼンゼ(p.2-4)
「一級魔法使い三人が殺された」というのはラントの両親たちの件でしょうか。ゼンゼも関わっていたんですね(ゼンゼは結構お姉さんです)。ゼーリエは「もう少し検証する時間があれば」と言うのですが(おそらくフラーゼに関する検証でしょう)、「検証」という言葉は物を対象にして使うイメージがあるので引っ掛かります。それとも、予知夢を使って検証する時間があれば、ということでしょうか。もしかするとレルネンの「心当たり」(第140話)がこの検証不足と繋がるのかな?(別記事考察の「ヴァイゼの秘密」参照)

予知夢の中でもそうですが、ゼーリエは「時間」を気にしています。
賭けに「勝とうが負けようが」ゼンゼはゼーリエのことを責める結果になるというのですから、いずれにせよゼンゼが望む結末にはならないのでしょう。こちらの記事で考察しましたが、ゼーリエは(一旦は)表舞台から退く、それが最善の結果なのだろうと思います。(ゼーリエが通常の意味で死ぬとは私は思いません。魔王だって「死んで」いますからね)
予知夢の中で(ゼーリエと皇帝)(p.4-18)
ここから第144話の終わりまでは、予知夢の中のお話です。予知夢を見ているゼーリエは帝都のアジトにいるように見えますので、予知夢の魔法を使ったのはおそらく舞踏会の前夜でしょう。ゼーリエと皇帝が同時に同じ夢を見ています(皇帝の精神防御機構の働きにより、二人の「夢が繋がっている」)。
この夢は三つの層になっています。ゼーリエまたは皇帝が夢の構造に気付くと次の層に進む、という感じです。
予知夢 p.4-
【皇帝】夢の中にいることに気付いていない
【皇帝】移動を提案する
話題:フラーゼについて
【皇帝】ゼーリエの言葉に違和感を覚える
【皇帝】フランメの魔導具を確認する(用心深い)
【皇帝】夢の中にいることに気付く
夢の中にいる二人 p.7-
【ゼーリエ】バルコニーの腰壁を乗り越えて立ち去ろうとする
【皇帝】ゼーリエを引き止める
【皇帝】話し合いを提案し、情報を引き出そうとする(抜け目のない)
【ゼーリエ】腰壁に座って話を聞く
【ゼーリエ】皇帝が自我を持っていることに気付く
自我を持つ二人 p.13-
【皇帝】手の内を明かし、情報交換を求める(合理主義者)
【ゼーリエ】情報交換に応じる(腰壁から降りて皇帝に並び立つ) p.15
夢かどうか判別するための魔導具が登場します。「何かと思えばフランメのくだらん収集品か」←でたっ。「予知夢でもそうなるんだな」←使ったことあるんじゃん。
余談ですが、予知夢の魔法は「神話の時代の魔法、未来視の一種」とのこと。ゼーリエは未来視の魔法を「大層なもの」と言っています(予知夢は「そんな大層なものじゃない」)。とすれば、人間である南の勇者に未来視の魔法を使えるとはちょっと思えない。南の勇者は未来人なんじゃないか?という感触が強くなりました。
フラーゼの不死、生の一回性(p.6)
ここは最も興味深いところでした。
ゼーリエ:フラーゼは来ない。
皇帝:…そうか。殺したのか。だとしたら殺し方次第だな。彼女にとっては、死でさえ時間稼ぎにしかならない。
ゼーリエ:そのようだな。こうして陛下と謁見する時間を稼ぐので手一杯だったよ。実に楽しい戦いだった。
皇帝は「彼女(フラーゼ)にとっては、死でさえ時間稼ぎにしかならない」と言い、ゼーリエも「そのようだな」とそれを肯定しています。皇帝はフラーゼに対して「死を賜る?よく言う。殺し方が分かるのであれば、余は疾うに其方を処刑台に送っている」とも言っていました(第142話)。
第142話の時点では単にフラーゼの実力を誇張して表現したものかと思っていたのですが、フラーゼにとっては「死でさえ時間稼ぎにしかならない」というので、死んでも再生したり復活したりするのでしょうか。(殺し方はあるようですが、皇帝はそれを知らず、ゼーリエでさえそれは難しい。ただ、マハトは「私であれば」フラーゼを「始末」できると言っていました(第14巻130話)。黄金に変えて、ということでしょうか)

エルフや魔族ならまだしも、もし、そんな人間が存在するのなら、《葬送のフリーレン》における「死」の意味はかなり希薄になると感じます。
だって、過去に戻ってやり直しをすることはできないし、死ねば人生は終わりだという「生の一回性」があるからこそ、「人間の寿命は短いってわかっていたのに…なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…」(第1話)という過ちと後悔があるわけですから。死が終わりを意味しないのなら、過ちを後悔することなく何度でもやり直せば済むことになってしまいます。

そうなってしまえば、《葬送のフリーレン》ってなんだったの?となりかねません。
ですから、フラーゼという人物をどう位置付けるか、作者は相当考えているはずだと思います。
素人がパっと思い付くのは、フラーゼは実は魔族でした(皇帝とフラーゼの関係がグリュックとマハトと同じ関係)。魔族は死んでも再生します、といった種明かしです。これがおもしろいかどうかはともかくとして。(なお、魔族が転生・再生・復活する可能性はあると思います)
生の一回性を揺るがしているのはフラーゼの不死(?)だけではなくて、ゼーリエの「選択」もです。私たちがみているこの世界(時間軸、世界線)は、予知夢を前提としたゼーリエの何度目かの選択の結果らしいのです。

未来視が可能で、選択肢の結末を比較して選ぶことができるのなら、そこに取り返しのつかない過ちや深い後悔は原則としては存在しないと思うのです。(だって、よく考えてあえて選んだ結果なのですから)
第144話は結構な問題をはらんでいるといいますか、大きな問題提起をしたエピソードではないかと感じます。
もともと、《葬送のフリーレン》が強調する「一度きりでやり直しのできない人生だからこそ意味がある」といったテーマとタイムリープや未来視の要素は相性が良いとは言えません。鮮やかな回答に期待したいです。
フラーゼとユーベル
魔導特務隊のノイはフラーゼとユーベルの「戦い方…っていうか感性」が似ているとカノーネに伝えています(第14巻131話)。自分の命を軽く扱うユーベルの戦い方・感性(ノイはユーベルと交戦して知っています)がフラーゼと共通するということのようです。

私はユーベルの過去を影なる戦士だと考察したことがありますが(どうやら外れたようです)、ユーベルの「死にたがり」等の特徴はフラーゼの「死でさえ時間稼ぎ」という性質からも説明できますから、二人が同じルーツを持っている可能性もありますね。
考察、読解
ゼーリエはどうやって「お前(皇帝)は暗殺計画が失敗に終わると考えている」と推論したか?
夢の終盤でゼーリエが情報交換に応じるくだりが、私はよくわかりませんでした。何度も読んで、こういうことかな?と考えてみましたので書いておきます。

まず、ゼーリエが皇帝を「用心深く抜け目のない合理主義者」と評していることに留意しておいてください。ゼーリエがゼンゼに説明したこの皇帝の性格の三要素(用心深く・抜け目のない・合理主義者)には全て意味があって、皇帝の行動に表れています。

皇帝は帝国と大陸魔法協会の関係悪化を懸念しています。多くの強力な魔法使いを擁する大陸魔法協会と対立したくはありません。
ただ、暗殺が成功した場合、ゼーリエなき大陸魔法協会の力は低下するため、帝国と大陸魔法協会との関係を重視する必要はなくなってきます。大魔法使いゼーリエあっての大陸魔法協会ですからね。
問題なのは、暗殺が失敗した場合です。
暗殺が失敗した場合、国賓として招かれた舞踏会でゼーリエが影なる戦士に襲われた以上、帝国と大陸魔法協会との関係が悪化することは避けられません。ですから、皇帝は自分が暗殺計画とは無関係であることを強調しておく必要がありますし(「余の権限の及ばぬところで~」とエクスキューズしています)、ゼーリエとの信頼関係を築いておきたいでしょう。そして、暗殺計画は影なる戦士の暴走、魔導特務隊(フラーゼ)の失態として処理すれば片が付きます。
皇帝にはそういう計算があります。
次に、皇帝の行動を見てみます。
最初、皇帝は夢の中にいることを知りません。しかし、ゼーリエの言葉に違和感を覚えます。そこで「用心深い」皇帝はフランメの魔導具を確認して、夢の中にいることに気付きます。

皇帝は「抜け目のない」人物です。皇帝が自我を持っている(情報を持ち帰ることができる)ことにゼーリエはまだ気付いていませんから、それを利用すれば今ならゼーリエは簡単に話をしてくれるでしょう。皇帝は立ち去ろうとするゼーリエを引き止めて、「話し合おう。互いに利があるはずだ」「悪くない話だろう」と情報を引き出そうとします。ゼーリエが喋ってくれればラッキーです。

皇帝が自我を持っていることにゼーリエが気付くと、皇帝は精神防御機構について「素直に、白状」します。そして「この交渉が決裂すれば帝国が滅ぶ」とまで言います。ゼーリエの方が一枚上手だとわかりましたから、手の内を晒して、下手に出ています。皇帝は「合理主義者」ですから、勝てない相手とは戦いません。(「守りに入った」)

暗殺が成功すると考えているのなら、ここまでして情報交換する必要がありません。どうせ明日の夜には死んでいる相手ですし、ゼーリエなき大陸魔法協会など取るに足りない存在です。
ということは、皇帝は「暗殺計画が失敗に終わる」と考えているのだろうと推論できます。
カノーネ=リネアール説
第144話とは無関係ですがまとめておきます。
カノーネの行動は結果的にですがユーベルを助けています(ユーベルもカノーネに対してはなぜか敵対的行動を取ろうとしません)。ですから、カノーネの正体はリネアールなのでは?という疑念はもっともで、そういう印象を持つ人が多いと思います。
カノーネ=リネアール説の具体的な根拠は二つあります。
一つはゼンゼのリネアール評「あの女は面倒事が大嫌い」です。(第14巻129話)

ゼーリエ暗殺計画への影なる戦士の関与を知ったカノーネは「嫌そうな顔」をして「次から次へと、厄介事が増えるばかり」とぼやき、「なんでいつも忙しい時に限っていないんだ…」とフラーゼの不在を嘆いて書類を丸めて放り投げています(第138話)。ゼンゼによるリネアール評は多少厳し目のものと思われ(仲が良いために遠慮がないのか、確執があって辛辣なのか分かりませんが)、それを加味するとこのようなカノーネの態度がゼンゼに「面倒事が大嫌い」と評されているとすれば不思議がありません。
もう一つカノーネとの会話でのデンケンの台詞「越権行為か、興味深い回答だな。それは魔導特務隊の機密事項か? それともーー」です。(第14巻130話)

これに続く台詞としては「それとも、大陸魔法協会のか?」が最も自然であるからです。(カノーネと影なる戦士や聖杖法院との繋がりを疑う根拠がない)
私はカノーネ=リネアール=ユーベル姉ではないか?とも感じています。その辺りの考察は「リネアール」で検索してみてください。(ユーベルは北部支部でカノーネ=リネアールに会っています。このとき二人の間に何かしらのやり取りがあったのではないか…)
おわりに
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巻話対応表

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影なる戦士のレーヴェと血塗られし軍神リヴァーレって…?
レーヴェはどうやって魔法を無くすつもりなの?
ユーベルの目的は?
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