【ゲーム考察】「牛乳はもう飲まないと言え」――Milk outside a bag of milk outside a bag of milk(前編)
※この記事は『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』のネタバレを含んでいます。
また、「ホラー」「精神的恐怖」に関するコンテンツが含まれています。
苦手な方はご注意ください。
はじめに
こんばんは。
かぐやです。
前回、『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』というゲームがどのようなゲームなのか、またプレイした感想を投稿しました。
そして今回は、疑問点や不明瞭な点を考察し、作品の解釈をまとめていきます。
また、前作にあたる『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』についても感想と考察を投稿しているので、そちらも見ていただけると嬉しいです。
※以下、作品のネタバレを含みます。
ゲームをやったことがない方は、先にプレイすることをお勧めします。
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前回までの記事はこちら
※以下、『Milk inside a bag of milk inside a bag of milk』を「インサイド」、『Milk outside a bag of milk outside a bag of milk』を「アウトサイド」と表記します。
今回は本編のみの考察です。
エンディングについての考察は、次回の後編で書きます。
本編考察
インサイドの考察では、以下の3点について考察しました。
1.少女の精神状態
2.少女と家族の関係
3.”O”とは何か
ここにアウトサイドで得られた情報を基に、比較や上書きをして、以下の4点について考察をしていきます。
1.少女の精神状態
2.家で何があったのか
3.少女の過去
4.”O”とは何か
1.少女の精神状態
※医療知識に関しては知識不足のため、具体的な病名などはあげません。
インサイドでは、少女は以下のような精神状態なのではないかと考察しました。
・過度な神経質
・複数の情報処理が苦手
・危機的状況に鈍感
これを、アウトサイドで得られた情報を基に見直していきます。
まずは部屋に入るまで。
おどけた影が踊っていたり、彼女に触れたり、屍がいると思っていたり、自制心や時間の感覚を忘れたり……部屋に入るまででもかなり考え込んでいます。
また、自分を落ち着かせるために「2の二乗、二乗の二乗……」と考えることもある。
ここから、前回考えた過度な神経質だというのは間違ってはいないと思います。
鏡の前では「壁からの視線を感じる」と言っていたり、寝る前には「誰かに聞かれている」「文字や眼光が怖くて立ち向かえない」と恐れていたりもします。
少女のもつ神経質さは、特に「他人」なのではないでしょうか。
精神疾患を持っている少女は、何も知らない他人からすれば、異端とみなされることは少なからずあると思います。
インサイドの”O”の人もそのように感じ、「這うように逃げた」のかもしれません。
その上で、物事を深く考えてしまう。
1つ1つの行動に思考が付きまとうため、行動の度に苦痛が伴うのではないでしょうか。
たとえそれが牛乳を買いに行くということであっても。
蛍探しの時には、「複数の選択肢があるとパニックになる」と、複数の情報処理が苦手であると少女から明かされました。
また、少女がパソコンについて話している時と、二度目の死の場面では、話がそれてしまうことが多く、プレイヤーがそれを指摘することが何度かあります。
少女は複数の物事を1度に処理することだけでなく、1つの物事への集中も苦手なのかな、とも感じました。
危機感についての話は、薬が要素として挙げられます。
いつもは一気に飲み込んでしまう。
飲まない理由をこじつけ、代わりに自分で薬を作る。
薬が大切なことはわかっているが、薬に嫌なイメージがある。
こられが少女から語られました。
また、探索時に見つけたノートの紙切れに書いてある薬の用法は、おそらく母親が書いて渡したものでしょう。
それを少女は暗記していない。
寝る前には、「薬は飲まない」と口にしている。
加えて、少女は不眠症であるとも言っています。
おそらく薬の中には睡眠薬も含まれているのでしょう。
しかし、彼女は「夢を見続けていたい」といい、薬による睡眠を嫌っている。
少女は薬に対して抵抗感があり、重要性を理解した上で飲むことを拒んでいる。
少女は自分の症状から目を背け続けていることになります。
「夢を見続けていたい」というのは、自分の症状をある程度理解した上での逃避行のようなものではないでしょうか。
また、少女は「部屋の配置を覚えるのに数か月かかった」とも言っています。
椅子に視線を向けた時も、平面と立体の区別がついていないような発言も見受けられます。
視界の影響もあると思いますが、空間把握が苦手。
ここまでの情報をまとめると、少女の精神状態は以下のようにまとめることができます。
・「他人」に対する過度な神経質。
・複数の情報処理、1つの物事への集中が苦手。
・自分の症状を把握した上で、改善を拒んでいる。
・空間把握が得意ではない。
2.家で何があったのか
少女はおびえながら部屋に飛び込んだ。
そして牛乳を見つけて、思考を巡らせて部屋へ戻ろうとする。
その時生命体に爪から毒を入れられ、首を絞められる。
「牛乳はもう飲まない!」と言わされる。
一体、何が起こったのでしょうか。
まず、部屋に飛び込んで牛乳を見つけると、少女は「牛乳を得体の知れない世界に連れてしまった」と考え始めます。
ここで少女が牛乳を不安にさせない方法など色々と考えた結果、牛乳を飲んだ。
そして、彼女は牛乳アレルギーのため、廊下で生命体、つまり母親が麻酔(鎮静剤)を注射し、少女の飲んだ牛乳を吐かせた、というのが一連の流れなのではないでしょうか。
流れをまとめると……
少女が部屋で買ってきた牛乳を飲む。
母親がそれに気付き、少女を扉の前で待ち伏せる。
⇩
麻酔を少女の中に注射する。
少女の血管から体全体へと麻酔が巡り始める。
意識が朦朧とし、呼吸も苦しくなる。
⇩
麻酔がある程度体を巡ったあたりで、少女が泡を吹く。
母親が少女の首をつかみ牛乳を吐かせようとする。
少女が牛乳を吐き出す。
⇩
麻酔が体に回り、意識を失いそうな状態になる。
母親が牛乳を飲まないようにしつこく言い聞かせる。
この場面で、母親は「また……?」や「何度も言ったでしょ」、注射をされた少女は「この前と一緒だ」と言っています。
つまり、少女が牛乳を飲み、母親がそれを吐かせるという行為は以前にもあったということになります。
なぜ牛乳を飲んでしまうのかは、後述する過去の出来事に関係すると思います。
3.少女の過去
①少女と家族
「最初の死」のシーンでは、少女が首を絞められ、プレイヤーの選択肢もおかしくなります。
プレイヤーが目のかゆみに苦しむ少女に突きつけるのは、「???牛乳を飲んだ???」「???彼が牛乳を持って来た???」の2択。
その後、牛乳を飲んだグラスを片付けようとした時には「ほら、牛乳でも飲みなよ」という選択肢。
ここで少女が発狂して最初の死のシーンが終わります。
かばんの探索時には、少女は学校に行っていて、最後の日は父親に抵抗し、牛乳を買って母親のいない家へ帰ったことが明かされました。
まず、最初の死のシーンでの「彼」は父親とみていいと思います。
そして「ほら、牛乳でも飲みなよ」は父親のセリフ。
疑問なのが、父親が少女に牛乳を飲ませていたのか、ということについて。
私は日常的にそうだったと考えています。
父親が牛乳を買ったことは何度もあり、母親が家にいないことは何度もあった。
そして、「最後の日」の出来事は、何重にもフィルタがかけられていた。
「最後の記憶」は、インサイドで表示された、飛び降り自殺をした父親の遺体にあたるのではないでしょうか。
父親は最後の日に、少女に牛乳を飲ませてから自殺している。
そして、部屋にあった箱の山は「牛乳の箱」ではないでしょうか。
アウトサイドの冒頭アニメーションでは、牛乳が紙パックの形で表現されているため、文字では「袋入りの牛乳」と表現されていても、形状がパック状である可能性はあると思います。
父親が箱を捨てさせずに少女の部屋に持っていかせた。
少女がそれを見ないようフィルタをかけてしまうために、箱の山を探索しようとすると、砂嵐のような演出がかかるのではないでしょうか。
最後の日までの家族関係をまとめると……
母親は仕事で家にいないことが多く、父親が基本的に少女の面倒を見ていたが、対応が適切ではなかった。
元々、少女は学校に行っており、学校の生活を楽しんでいた。
しかし、普段は保健室で寝ていて、授業は空き教室などで先生と受けていたため、少女の視点からは他の子がサボっているように見えていた。
⇩
娘の世話に耐えられなくなった父親が、少女に牛乳を飲ませるようになった。
ただし母親には、娘が自分で飲んでしまったように見せかけていた。
少女は父親が迎えに来るのを嫌がり抵抗するようにもなった。
これを繰り返していくうちに、少女と父親の関係は悪化。
母親は真相を知らないために、少女が牛乳を飲まないよう責めたため、少女がだんだんと母親を嫌うようになる。
少女の抵抗も激しくなり、父親の虐待もエスカレートする。
⇩
最後の日
少女の抵抗に父親が耐えられなくなる。
父親は牛乳を買って少女に飲ませ、飛び降り自殺をした。
そして、「最初の死」は「現実世界での居場所を失った」「家族との繋がりを失った」ことだと考えられます。
学校生活での友好関係を築いていたという話もないので、家族だけが頼れる存在。
しかし、母親は仕事などの理由であまり家にはおらず、少女のことを気に掛けてくれなかった。
父親からは見放され、牛乳を飲まされ、最終的には自ら死を望んだ。
父親の死以降、少女の記憶は残っていないため、「あの日から自分にとって頼れる人がいなくなってしまった」と考えているのではないでしょうか。
②少女とウェブ
パソコンの探索と、「二度目の死」では、少女はかつてパソコンを使っていたことが明らかになりました。
ネット上で少女に何があったのでしょうか。
パソコンの探索では、ウェブに入ってからがパソコンを使わなくなったきっかけがあるということが明かされます。
この場面での少女の台詞を解釈してみましょう。
「地下でなにもかも与えられたハムスターだったけれど、ペットショップに連れて行かれ、ゲージの中に住むことになる。温かく快適だけれど、他のハムスターはショップ出身」
⇩
元々1人(オフライン)で色々なことしていたが、ウェブ(オンラインでSNSなど)を始めた。そこは常に他人の評価や繋がりが強く、自分は常に見られている。自分のことを肯定してくれる人もいるので、居心地はいい。けれど他の人は常にその繋がりの中で生きていた。
ウェブの友達は本物ではないし電源を落とすと死ぬが、少しも不安じゃない。なぜなら、コンピュータのプログラムで構成された数字の組み合わせだから。
(人は適当な画像文字列、メッセージは実行可能な数列とコード)
⇩
ウェブ上の人は自分の好きな時に現れるため、たとえ自分がオンラインであろうがオフラインであろうが他人に何の支障も与えない関係性。
この2つは、ネット上の人間関係を少女を通して的確に表していると思います。
SNSでは、他人の投稿にいいねやコメントを付けたり、フォローをしたりすることで簡単に評価を伝えることもできるし、アカウント一つで簡単に他人と繋がることができる。
しかし、裏を返せば、自分と他人の利害が一致しなくなれば、ボタン1つでその人との関係を断つことができてしまうし、自由な発言と誹謗中傷の区別ができないと意図せずとも人を傷つけることもできてしまうわけです。
そして、「二度目の死」の体験。
バルコニーに出た少女がネット上の友達の話をし始めます。
この話もまた、パソコン探索時には言及を避けているところなので、「最後の日」同様、少女にとってのフィルターがかかっていた部分です。
友達の話について、先程同様に解釈を書いていきます。
彼はネット上のルールを破った。
彼は図々しく、また自分の存在がリアルだと語り、自分にもそれを求めてきたため、自分のことをすべて話した。
⇩
少女にメッセージを頻繫に送り、コンタクトを取ろうとしていた。
その時に個人情報などを聞いてきたりとリテラシーがなかった。
しかし、彼が自分のことを明かしてきたため、自分のこと(個人情報)を話してしまった。
大量のボットを送りつけてきたが、ウィンウィンの関係だった。
⇩
彼が少女に共通の趣味思考を持つ他人を紹介した。(もしくは、少女が発信した個人情報に人が集まってしまった)
そうすることでコミュニティーが大きくなるため、少女と彼を知ってくれる人が増える。人との繋がりが急激に増えてしまった。
文字や動画の自動生成が同時に実行される。
少女の名前がネットに浮上する。
少女にとって耐えられなかった。
監視の目が向けられているように感じる。
⇩
人の投稿したコメントや動画が画面に表示されるようになる。
少女にとっては、個人情報を明かしてしまったことで、ネット上での人との繋がりが一気に増えてしまい「他人から見られているのではないか」という不安がウェブを使っているときに、常に付きまとうようになった。
それに耐えきれなくなり、ウェブ上の人間関係を断った。(アカウントを消去した?)
ネット上での出来事をまとめると……
両親からPCを渡される。
オフラインで、ゲーム、イラスト、計算、3Ⅾモデリングなどを楽しみ、1日の大半を画面の前で過ごしていた。
⇩
ウェブ(オンライン)の世界へ。
共通の趣味を持つ友達ができる。浅くて広い関係を持つようになる。
⇩
1人の親友ができたが、少女に強引に迫ってきた。
彼が自身の情報を明かしたため、少女も自分のことを話した。
⇩
少女が個人情報を公開したために、少女のもとにやってくる人が増える。
たくさんの投稿が画面上に表示され、自分が注目される不安を感じる。
それに耐えきれなくなり、パソコンを使わなくなる。
そして、「二度目の死」は「ネット上での自分の居場所を失った」「友達との繋がりを失った」ことだと考えられます。
「最初の死」では、多くの時間を共有するであろう家族との繋がりが途絶えてしまったことを、「二度目の死」では、仮想空間ですら居場所を作れなかったことを再認識する行為。
つまり、プレイヤーの選択次第では、少女に「あなたに居場所はない」と突きつけることになります。
③「最初の死」と「二度目の死」
①と②で、少女の過去に何があったのかを考えてみました。
この2つの順番としては、少女には父親の自殺以降の記憶はないと語っているため、「二度目の死」、「最初の死」の順で起こっていると思います。
4.”O”とは何か
今作では、”O”のようなものは、2度出てきます。
1つは、「二度目の死」のシーン。
少女がバルコニーに出ますが、マンションが円状になっていて、少女は上を見ないようにしているようにも見えます。
そして、上には真っ赤な球体。
もう1つは、エンディング後のシーン。
球体を少女が上を見上げているようにもみえます。
二つのシーンから、”O”のイメージは「月」となにか関係があるように見えます。
私は、「他人からの視線」の象徴が月なのではないかと考えました。
前回、”O”は「虚ろな目」のイメージではないかという考察をしました。
アウトサイドでは、少女が影や視線を何度も気にしています。
そして、月は地球から見ると常に上にあるため、たとえ私達がどこにいても、月は見ることができます。
少女は、常に月に見られていると感じているのではないでしょうか。
また、少女の着ている服について。
これは”O”が怖いことを単に表しているとも取れますが、空集合の記号にも見えます。
アウトサイドのストーリーを通じて、”O”は人の輪とも解釈できるではないのでしょうか。
少女は精神疾患を持っているために、学校生活を送るなど他の人と同じように生きてこなかった。
そして、過去に少女が人から傷を負わされた経験は何度もありうる。
彼女は自身の症状に関して、ある程度理解はしている。
彼女は人の輪に入れてもらえていない、つまり空集合の存在。
自分と他人は違う(精神疾患の有無)という彼女に根付いた意識が、コミュニティーからはじかれていると思ってしまう要因である、ということを表しているのではないでしょうか。
また、裏を返せば、これはイマジナリーフレンドとして少女のことを見てきた私達に向けてのメッセージなのかもしれません。
まとめ
インサイド、アウトサイドの2作品を通しての考察をまとめると……
少女は精神病に苦しんでいた。牛乳アレルギーでもあった。
過度な神経質であり、ものごとへの集中・処理もうまくできない。
他人の視線や阻害感を、”O”というイメージに結びつけそれを恐れる。
学校生活は楽しんでいたが、人間関係はうまくいかなかった。
母親は家にいないことが多く、父親が送迎など娘の面倒を見ていたが、両親とも娘には冷たく接していた。
あるとき、両親が家での娯楽としてパソコンを与える。
少女がパソコンで、ゲーム、イラスト、計算、3Ⅾモデリングなどに没頭する。
⇩
少女が父親に反抗するようになる。
父親は、少女への「罰」として牛乳を飲ませていた。
それにより、少女に「牛乳は飲まなければいけないもの」だと刷り込まれてしまった。
母親はそれを知らないため、少女を責めるのみ。
母親と父親の喧嘩も多く、家族関係は良くなかった。
⇩
少女がウェブを使うようになる。
ウェブ上で人間関係を作りはしたものの「彼」との出会いをきっかけに、他人からの視線に対して、より不安になってしまう。
少女がそれに耐えきれなくなり、関係を断った。
二度目の死
⇩
ウェブでのことや、薬を飲まないことで徐々に精神状態が悪化。
少女の抵抗が強くなり、父親の虐待もエスカレートする。
母親はこの真相を知らない。
これを繰り返した結果、父親が自殺。
最初の死
⇩
母親が少女の面倒を見る。
少女は父親のトラウマで、牛乳を飲んでしまうことがある。
母親が毎回吐かせて、アレルギー症状が出ないようにしている。
⇩
特別な日
インサイド
母親が治療の一環として、少女に牛乳を買いに行かせた。
アウトサイド
家に帰ってきて、少女が買った牛乳を飲んでしまった。
母親が麻酔注射をして、牛乳を吐き出させた。
その後しばらく眠りにつけず、自分の過去を掘り起こす。
眠りについたが、悪夢に苦しむ。
おわりに
後編では、5つのエンディングについての考察を書きます。
エンディングだけでも書くことがありそうなので、今回は前編、後編に分けることにしました。
そちらも見てもらえると嬉しいです。
この考察はあくまでも一個人の解釈に過ぎません。
不完全な部分はあると思います。
気になる点等ありましたら、コメントしていただければ、答えられる範囲でお答えします。
最後まで記事を読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
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投稿:2024.2.11
最終更新:2026.5.5(一部表現の見直し)


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