『ちりたん』制作秘話④自然のめぐみとリスクを、ゲームにする話
①がまだの方は下記からどうぞ
『ちりたん』というゲームを制作しました。


地理クイズにするのか。
地図を書くゲームにするのか。
観光地理、防災、ハザードマップ、人文地理など、いろいろな方向性を考えていく中で、少しずつ「川」や「地形」に可能性を感じ始めました。
今回は、その続きです。
「川や地形を扱う」といっても、それだけではまだゲームにはなりません。
そこから、どんな体験にするのか。
プレイヤーは何を目指すのか。
何に悩み、何を判断するのか。
そのあたりを話し合っていきました。
情報発信についても話し合った
ゲームの中身を考える一方で、情報発信についても話し合いました。
今回の制作は、完成したゲームをいきなり発表するだけではなく、制作の過程も見せていけると面白いのではないかと考えていました。
公式発表は、基本的にゆにさんから行う。
それに対して、僕や赤穂しゅなさんが反応していく。
そんな形です。
また、途中で中間発表会のような場を作るのも良さそうだという話になりました。
イメージとしては、ボードゲーム工場見学のようなものです。
ゲームが完成するまでに、何を考え、どこで迷い、どう形になっていくのか。
頭の中にあるものが、どうやってルールやカードになっていくのか。
印刷や入稿の話も含めて、普段はあまり見えない制作のプロセスを見せられたら面白いのではないかと考えていました。
完成品だけ見ると、ゲームは急に生まれたように見えます。
そんなわけない。
裏側では、案が出て、消えて、また出て、たまに全員で遠い目をする。
制作とはそういうものです。
だからこそ、その過程自体もコンテンツにできるのではないかと思いました。
リスナーさんの意見について
一方で、赤穂しゅなさんのリスナーさんの意見を、ゲーム内容に直接取り入れる形にはしない方向で考えていました。
これは、リスナーさんの意見を軽く見ていたわけではありません。
むしろ、ゲーム制作としての軸をぶらさないためです。
リスナーさんの意見を取り入れる企画は、とても盛り上がりやすいです。
ただ、そのぶん危険もあります。
「あれも入れたい」
「これも面白そう」
「この案も拾いたい」
そうしているうちに、どんどんプロジェクトが広がっていきます。
結果として、最初に作ろうとしていたものが見えなくなることがあります。
善意で増えた要素ほど削りにくい。
人類は良かれと思ってプロジェクトを太らせます。だいたい健康診断で引っかかるタイプの太り方です。
だから今回は、制作過程は見せる。
でも、ゲーム内容の舵取りは制作チームの中で行う。
この線引きが大事だと考えていました。
いつでも遊べるゲームにしたい
ゲームの方向性としては、いつでも気が向いたときに遊べるゲームにしたいという話が出ていました。
一人でも遊べる。
複数人いれば、話し合いながら遊べる。
ゲームが2個あれば、さらに人数を増やして遊べる。
そんなイメージです。
赤穂しゅなさんのリスナーさんも、手元に置いておいて、ふとしたときに遊べる。一人で遊ぶこともできるし、誰かと一緒に遊ぶこともできる。複数人で遊ぶ場合は、ただ黙々と処理するのではなく、話し合いが生まれるようにしたい。
そんな方向性が見えてきました。
助け合いの温かさを入れたい
その中で出てきたのが、助け合いカードのようなアイデアです。
プレイヤーが行き詰まったときに、別のプレイヤーがカードを使って助ける。
ただ効率よく勝つだけではなく、誰かを助けることで状況が変わる。
そういう温かさを、ゲームの中に入れられないかと考えていました。
現実でも、困ったときに誰かが助けてくれることがあります。
逆に、自分が誰かを助けることもあります。
その「お互いさま」の感覚を、ゲームの中に少し入れられたら面白いのではないかと思いました。
地理や自然を扱うゲームではありますが、そこに人の暮らしや助け合いが入ることで、ただの自然現象のゲームではなくなります。
自然と向き合いながら、人がどう暮らしていくのか。
その視点が少しずつ出てきました。
村を存続させるゲームへ
そこから、ゲームの大きな方向性として見えてきたのが、一つの村を助けていくゲームです。
プレイヤーたちは、自然と向き合いながら村を存続させる。
山札や手札がなくなったときにゲームが終わる。
その時点で村の状態がどうなっているかによって、グッドエンド、ノーマルエンド、バッドエンドに分かれる。
そんなイメージです。
勝利条件としては、全員で協力して村を存続させること。
一人プレイでも成立するかもしれない。
複数人なら、相談しながら進めることができるかもしれない。
ここでようやく、ゲームとしての輪郭が少し見えてきました。
地理を知るゲーム。
自然を扱うゲーム。
そして、村を守るゲーム。
少しずつ要素がつながっていきました。
自然には、めぐみとリスクの両方がある
この段階で大事になったのが、自然の扱い方です。
自然は、単純に良いものでも悪いものでもありません。
太陽があれば、洗濯物は乾きます。
でも、暑すぎれば熱中症のリスクもあります。
川があれば、おいしい水を飲めたり、田畑を潤したりできます。
でも、雨が降りすぎれば氾濫することもあります。
森は資源や豊かさをもたらします。
でも、火事や熊などのリスクもあります。
自然は、めぐみでもあり、リスクでもあります。
この両面性をゲームにできないかと考えました。
「良いカード」「悪いカード」と単純に分けるのではなく、状況によって意味が変わる。
雨は必要です。
でも、降りすぎると危険です。
太陽も必要です。
でも、強すぎると困ります。
川も必要です。
でも、水量が増えすぎると村に被害が出ます。
このように、自然の要素をただのイベントとして扱うのではなく、プレイヤーが状況を見ながら調整していくものにできないかと考えていました。
自然カードで状況をコントロールする
メモの中では、いろいろな自然の要素が出ていました。
太陽。
川。
雨。
雷。
海。
森。
地震。
雪。
こうした自然の要素が、村に影響を与える。
小雨、雨、大雨、豪雨、台風のように、天気が変わっていく。
水のパラメーターを調整する。
田んぼを作ると水が減るかもしれない。
雨が続くと川が氾濫するかもしれない。
森があることで恵みもあるけれど、火事のリスクもあるかもしれない。
状況によって、同じ自然カードでも結果が変わる。
そういう形にできると、ただカードを出すだけではなく、「今この状況で何をするべきか」を考えるゲームになりそうでした。
ここはかなり面白いポイントでした。
自然はコントロールしきれるものではありません。
でも、何もできないわけでもありません。
備える。
利用する。
調整する。
助け合う。
その中で村をどう存続させるか。
このあたりに、ゲームとしての悩みどころが生まれそうだと感じました。
地理を「知識」ではなく「暮らし」として扱う
ここで見えてきたのは、地理を単なる知識として扱うのではなく、自然と暮らしの関係として扱うという方向性でした。
地理というと、地名や地形名を覚えるものだと思われがちです。
扇状地。
三角州。
河岸段丘。
氾濫平野。
もちろん、そうした知識も大切です。
でも本当に面白いのは、その地形が人の暮らしにどう関わっているのかだと思います。
なぜそこに村ができたのか。
なぜその土地で田んぼが広がったのか。
なぜその地域には災害のリスクがあるのか。
なぜ人はその場所に住み続けるのか。
自然のめぐみとリスクの両方を見ながら、人がどう暮らしてきたのか。
そこに地理の面白さがあります。
『ちりたん』では、その感覚をゲームにしたいと考えていました。
少しずつ「自然と向き合うゲーム」へ
この時点では、まだ完成形が決まっていたわけではありません。
ただ、方向性はかなり見えてきました。
地理クイズではない。
単なる防災ゲームでもない。
自然のカードを使って、村を存続させる。
一人でも遊べる。
複数人なら話し合いながら遊べる。
困ったときには助け合える。
村の状態によって、エンディングが変わる。
こうして、『ちりたん』は少しずつ自然と向き合うゲームとして形を持ち始めました。
地理を知識として覚えるのではなく、自然と暮らしの関係を体験する。
自然のめぐみとリスクを見ながら、どう村を存続させるかを考える。
その方向性が、この打ち合わせで見えてきた気がします。
さてさて、ここからどうなることやら。
次回は、この方向性をもとに、どのように実際のルールへ落とし込んでいったのかを書いていきます。
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