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『ちりたん』制作秘話⑤自然現象を、カードゲームのルールに変えるまで

①がまだの方は下記からどうぞ

『ちりたん』というゲームを制作しました。

前回は、自然のめぐみとリスクを扱いながら、村を存続させる協力ゲームにできないかという話を書きました。

太陽、雨、川、森、雷、海、地震、雪。

自然には、暮らしを支えてくれる面もあれば、時に大きなリスクになる面もあります。
今回は、その自然現象を、実際にカードゲームのルールへ落とし込んでいった話です。

自然現象をたくさん出してもらう

まずやったのは、自然現象をできる限りたくさん出してもらうことでした。

太陽





地震
あまごい

温泉
火山噴火

土砂
小雨
大雨
ヒョウ
台風

竜巻
熊-動物
火災
猪-動物
春一番
強風




暴風
高潮
乾燥
光化学スモッグ

波浪
潮風

小雪
大雪
積雪
降雪
ヒョウガ
深雪
氷雪
ブリザード
吹雪
猛吹雪
雪雲
花粉
鳥獣戯画
豪雨
低気圧
冷害
太陽フレア

ボイスチャットのメモに記録したもの

こうした要素を、まずは広く出していきました。最初から「これはカード効果にできるか」「32枚に収まるか」と考えすぎると、発想が狭くなります。

なので、まずは素材を広げる。
そのうえで、ゲームとして扱える形に整理していく。

そんな進め方をしました。

自然現象を分類する

自然現象をたくさん出すと、当然ですが、かなり散らかります。

雨もあれば、川もある。
地震もあれば、森もある。
水資源もあれば、土砂災害もある。

そのまま全部をカードにすると、ただの自然現象図鑑になります。
図鑑としては面白いかもしれません。

でも、今回はカードゲームです。

遊んでいるうちに、自然と地理に触れられるものにしたい。
そのためには、自然現象をただ並べるのではなく、ゲームの中で扱いやすい形に分類する必要がありました。

最終的には、自然を大きく4つの属性として扱う方向にしました。

気象・空。
水・水辺。
地形・大地。
自然災害・異常現象。

この4つです。
自然現象をバラバラに扱うのではなく、4つのまとまりとして扱う。

そうすることで、ゲームとしても整理しやすくなり、プレイヤーにも伝わりやすくなります。

この過程で、僕自身もしゅなさんに教えてもらいながら「地理学とは何か」を少し学びました。
地理は、地名や地形を覚えるだけのものではありません。
自然の成り立ちと、人の暮らしの関係を読み解くものでもあります。

なぜそこに町ができたのか。
なぜその土地でその産業が生まれたのか。
なぜ豊かさの裏側にリスクがあるのか。

そう考えると、地理はゲームに落とし込むテーマとしてかなり面白いと感じました。

協力ゲームとしての骨格は見えていた

この時点で、ゲームの大きな方向性はかなり見えていました。

対戦ゲームではなく、協力ゲームにする。
自然と向き合いながら、全員で村を存続させる。
誰か一人が勝つのではなく、全員で同じ目標を目指す。

ここは、比較的早い段階で固まっていた部分です。

自然をテーマにするなら、プレイヤー同士で争うよりも、全員で自然と向き合う方がしっくりきます。

雨が降れば、村全体に影響があります。
川が氾濫すれば、村全体が困ります。
太陽が照れば、作物にも暮らしにも影響があります。

自然は、誰か一人だけに都合よく働くものではありません。

だから、プレイヤー同士が敵対するよりも、全員で状況を見て、どう乗り越えるかを考える方が合っていると感じていました。

まずは数字と分類だけで面白いか確認する

ただ、テーマが良さそうでも、それだけでゲームが面白くなるわけではありません。

自然。
地理。
村。
協力。

言葉だけ並べると、なんとなく良さそうに見えます。
でも、それはゲームとして面白いこととは別です。

ここを混同すると危険です。

人類は「テーマが良いから面白いはず」と思いがちですが、そこに橋は架かっていません。だいたい川に落ちます。

なので、まず確認したかったのは、テーマを抜いた状態でもゲームの骨格が面白いのかどうかでした。
そこで、最初は数字と分類だけで考えました。
同じ分類のカードを3回連続で出す協力ゲームは、そもそも面白いのか。

この確認です。

ブランクカードに数字と記号でプレイテスト

基本的には、プレイヤーは同じ分類のカードを連続で出していきます。
ただし、数字の関係があるため、出したいカードをいつでも出せるわけではありません。同じ分類を続けたいのに、数字の条件で出せない。

逆に、出せないことで場の流れが変わり、結果として別の分類が3回連続で出ることもある。
この「狙っているけど、完全にはコントロールできない」感じが、協力ゲームとして面白くなりそうだと感じました。

全員で同じ方向を目指しているのに、手札や数字の関係でうまくいかない。
でも、そのうまくいかなさが、思わぬ成功につながることもある。

ここにゲームとしての手応えがありました。

3回続くと、人は学習する

同じ分類を3回連続で出すというルールには、意味づけもありました。

人は、同じようなことが一度起きただけでは、まだよくわかりません。
二度起きると、少し気になります。
三度起きると、「これは何かあるな」と学習します。

もちろん、現実はそんなに単純ではありません。
でも、ゲームの中では、この感覚をルールにできます。

同じ自然を3回連続で経験する。

すると、その自然との付き合い方がわかってくる。
つまり、自然を学習する。
そして、学習することで、その自然を活かす方法が見つかる。

この考え方を、ゲームの核にできないかと考えました。

単に「3枚そろえたら達成」ではありません。
3回経験したから、学習した。
学習したから、活かせるようになった。

この流れを、ルールとして表現したかったのです。

自然は敵にも味方にもなる

今回のゲームで大事にしたかったのは、自然を単純に「良いもの」と「悪いもの」に分けないことでした。

雨は作物を育てます。
でも、降りすぎれば川が氾濫します。

太陽は暮らしを支えます。
でも、暑すぎれば危険にもなります。

川は水や恵みをもたらします。
でも、時には災害にもつながります。

自然は敵にも味方にもなる。
ただし、知ることで向き合い方が変わります。

知らなければ、ただ怖いものに見えるかもしれない。

でも、性質を知れば、備えることができる。
利用することができる。
避けることができる。
活かすことができる。

この感覚をゲームに入れたいと考えました。
だから、同じ自然を3回経験すると、その自然との関係が変化する。
自然に振り回されるだけではなく、自然との付き合い方を学んでいく。

ここが『ちりたん』の大事な部分になりました。

カード効果を整理する

次に考えたのは、カード効果です。

同じ自然を3回連続で出したときに、自然との関係が変化する。

そこまでは見えてきました。

では、具体的にどんな変化が起きるのか。
ここを考える必要がありました。

自然をテーマにすると、プラスの効果もあれば、マイナスの効果もあります。

雨が降れば作物が育つかもしれない。
でも、降りすぎれば水害につながるかもしれない。

太陽があれば生活はしやすい。
でも、強すぎれば危険にもなる。

このように、自然は状況によって良くも悪くも働きます。

そこで、まずこのゲームにおける効果の種類を洗い出しました。

カードゲームの効果は、一見すると色々あります。

カードを引く。
捨てる。
山札に戻す。
場に出す。
効果を無効にする。
条件を変える。
カードの属性を変える。

ただ、かなり大きく見ると、やっていることは「増加」「減少」「変化」の組み合わせです。

手札が増える。
山札が減る。
場の状態が変わる。
出せる条件が変わる。
勝利条件に近づく。

細かく見れば無数にありますが、根っこはゲームの中にある何かを動かすことです。

カードゲームを遊んできた経験から、効果を一度分解して考える必要があると感じていました。

どの効果が強くて、どの効果が弱いのか。
どの効果がゲームを進め、どの効果がゲームを止めるのか。

そういう整理ができると、カード効果はかなり考えやすくなります。

手札・山札・場をどう動かすか

カード効果を考えるうえで大事なのは、このゲームにおける「何を動かすのか」を整理することです。

手札とは何か。
山札とは何か。
場とは何か。
捨て札とは何か。
出せる条件とは何か。
勝利条件に近づくとはどういうことか。

ここを整理しないと、効果は作れません。

『ちりたん』では、手札、山札、場、捨て札、そして妖精カードの状態が重要になります。

手札が増えれば選択肢が増える。
手札が減れば行動が苦しくなる。
山札が減れば終わりが近づく。
場のカードが変われば、次に出せるカードや流れが変わる。
妖精カードが表になると、勝利に近づく。

でも、表になった妖精カードを裏に戻すことで、リセットという大きな立て直しもできる。

このように、カード効果は単に「強い」「弱い」ではなく、どの場所に、どんな影響を与えるかで考えていきました。

自然の種類ごとに、どこに影響を及ぼすとそれらしいのか。
水なら流れを変えるのか。
気象なら場の状況を変えるのか。
大地なら安定や蓄積に関わるのか。
災害なら大きく崩すのか。

そうやって、自然の意味とカード効果を少しずつ結びつけていきました。

32枚という制限とリセット機能

ただし、このゲームには大きな制限がありました。

32枚です。

最初に決めていた通り、カードは32枚という枠の中で作ることにしていました。

32枚という制限があると、できることは限られます。
自然現象をたくさん出してもらっても、全部は入れられません。

協力ゲームにしたい。
自然との共生を表現したい。
同じ自然を3回経験すると学習する仕組みを入れたい。

でも、32枚に収める必要がある。

ここで必要になると考えたのが、リセット機能でした。

カード枚数が少ないゲームでは、場や手札の状態によって、すぐに行き詰まる可能性があります。特に協力ゲームでは、誰かが動けなくなると全員が困ります。もちろんすぐにゲームオーバーもありえるけど。

だから、流れを立て直す方法が必要でした。
ただし、何度でもリセットできると緊張感がなくなります。
困ったらやり直せばいい、となるとゲームになりません。

そこで、リセットには代償をつける必要がありました。

学んだ自然を、手放して立て直す

最終的には、表向きになった妖精カードを裏向きに戻すことで、リセットできる形にしました。

つまり、一度キズナを結んだ自然との関係を、いったん手放す。

その代わり、場や手札を整え直して、もう一度立て直すことができる。
これは単なる救済ではありません。

「学んだものを使って状況を立て直す」でもあり、「せっかく得たものを手放す判断」でもあります。

ここが面白いところでした。

協力ゲームでは、完全に詰んでしまうとつらい。
でも、簡単に救済されすぎても面白くない。
だから、リセットは助かるけれど、痛みもある。

妖精とのキズナを一つ戻すことで、もう一度チャンスを作る。
32枚という少ないカード枚数の中で、展開を作るためには、この仕組みが必要でした。

ルールは、素材を翻訳する作業

振り返ると、このフェーズでやっていたのは、出てきたアイデアをそのままカードにすることではありませんでした。

自然現象を出してもらう。
それを分類する。
数字と分類だけで、まずゲームの骨格が面白いかを確認する。
同じ自然を3回経験すると学習する、という意味を乗せる。
自然は敵にも味方にもなるという考え方を整理する。
カード効果を、増加・減少・変化として整理する。
手札、山札、場、妖精カードに対して、どんな影響を与えるかを考える。
32枚という制限の中で、詰みすぎないようにリセット機能を入れる。

これらを組み合わせて、カードゲームとして遊べる形にしていきました。

アイデアは、そのままではゲームになりません。
ルールになり、カードになり、プレイヤーの判断になって、初めてゲームになります。

この作業は地味です。
でも、地味なところを飛ばすと、ゲームはだいたい崩れます。

派手なアイデアよりも、地味な整理の方が大事な場面はかなり多いです。

自然を知ることで、活かし方が変わる

『ちりたん』でやりたかったのは、自然をただ怖がることではありません。

自然をただ便利に使うことでもありません。
自然には恵みがあり、リスクもある。
でも、知ることで向き合い方が変わる。
学ぶことで、活かし方が見つかる。

その感覚を、カードゲームの中に入れたいと考えていました。

同じ自然を3回経験する。
そこから学習する。
妖精とキズナを結ぶ。
そして、その力を使って村を存続させる。

この流れが見えてきたことで、『ちりたん』はかなりゲームとして形になっていきました。

さてさて、ここからどうなることやら。

次回は、このルールをもとに、カードの情報やデザインをどのように整えていったのかについて書いていきます。おそらく次回が最後です!!

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