『ちりたん』制作秘話③赤穂しゅなさんの「好き」からゲームを考えた話
①がまだの方は下記からどうぞ
『ちりたん』というゲームを制作しました。


赤穂しゅなさんを3人目のパートナーとして迎え、いよいよゲームの中身を考えていくことになりました。ただ、最初に考えたのは「どんなルールにするか」ではありません。
まず考えたのは、赤穂しゅなさんの何をゲームにするのかということでした。
今回の企画では、赤穂しゅなさんを単なるPR役として迎えるつもりはありませんでした。
「VTuberの方に宣伝してもらいました」ではなく、企画の段階から一緒に関わってもらい、最終的には「このゲームを一緒に作りました」と言える形にしたい。
そのためには、赤穂しゅなさんの好きなこと、得意なこと、伝えたいことが、ちゃんとゲームの中に入っている必要があります。
赤穂しゅなさんの魅力を整理する
企画会議の中で、まず赤穂しゅなさんの魅力や特徴を整理していきました。
赤穂しゅなさんには、地理に詳しい、エンタメ力が高い、世界観が分かりやすい、リスナーさんの知的好奇心が高い、という魅力があります。
さらに、ご本人からもいくつかのイメージが出ていました。
冒険者になってクエストを重ねるゲーム。
信頼度とお金の取引があるゲーム。
いろいろな気候や地形が楽しめるゲーム。
どれも面白そうでした。
ただ、面白そうな要素がたくさんあるからこそ、そのまま全部入れると危険です。
ゲーム制作では、「これも面白そう」「あれも入れたい」と広げすぎると、最終的に何のゲームなのかわからなくなることがあります。
人類はすぐ盛り込みたがります。鍋に冷蔵庫の余り物を全部入れたら料理になると思っている。ならない。
だからこそ、まずは赤穂しゅなさんの魅力をそのまま全部入れるのではなく、ゲームとして遊べる形に翻訳することが必要でした。
「地理」をどうゲームにするか
赤穂しゅなさんの魅力を整理していく中で、大きな軸として見えてきたのが「地理」でした。
ただ、「地理のゲーム」と言っても、すぐに形になるわけではありません。
地理クイズにするのか。
地図を書くゲームにするのか。
観光地理を扱うのか。
防災やハザードマップにつなげるのか。
人文地理に寄せるのか。
かなり色々な方向性を考えました。
ここで大事にしたかったのは、地理の知識がゼロでも遊べることです。
詳しい人だけが楽しめるゲームにしてしまうと、入口が狭くなります。
「この地形の名前は何でしょう?」
「この地域の特産品は何でしょう?」
というクイズにしてしまえば、地理の知識は扱いやすいです。
でも、それだと知っている人が強くて、知らない人は置いていかれやすい。
それは今回作りたいものとは少し違う気がしました。
中学生くらいでも遊べる。
地理が得意でなくても遊べる。
でも、遊んだあとに「これってどういうことなんだろう?」と調べたくなる。
そんな入口にしたいと考えていました。
知識ではなく、興味の入り口を作る
今回のゲームでやりたかったのは、地理の知識を覚えさせることではありません。むしろ、地理に興味を持つきっかけを作ることでした。
例えば…
地図を書く。
ハザードマップを見る。
防災について考える。
観光地理を知る。
人文地理に触れる。
どれも地理につながります。
ただ、それをそのまま教材のようにすると、どうしても「勉強感」が強くなります。もちろん教育的な意味は大切です。
でも、ゲームとして作るなら、まず遊びとして面白いことが大事です。
遊んでいるうちに、自然と地理に触れている。
終わったあとに、少し調べたくなる。
「そういえば、自分の住んでいる地域はどうなっているんだろう?」と思える。
そのくらいの距離感が良いのではないかと考えていました。
地理の面白さは、良いものと悪いものを分けないところにある
ブレストをしていて面白かったのは、地理には単純に「良いもの」「悪いもの」と分けられない面があることでした。
たとえば…
温泉の裏側には火山活動があります。
豊かな水資源の裏側には、土砂災害のリスクがあります。
川は生活を豊かにしますが、氾濫すれば大きな被害をもたらします。
自然は、ただ便利なものでも、ただ怖いものでもありません。
その土地の恵みとリスクは、同じ根っこから生まれていることがあります。
ここに、地理の面白さがあると感じました。
土地の成り立ちを知ると、今見えている景色の意味が少し変わります。
なぜここに町があるのか。
なぜここに田んぼが多いのか。
なぜこの地域でこの作物が育つのか。
なぜこの場所には災害のリスクがあるのか。
地理は、ただ地名や地形名を覚えるものではなく、今ある暮らしの背景を知るものでもあります。
この視点は、ゲームにできそうだと感じました。
川と地形に可能性を感じた
その中で、特に可能性を感じたのが「川」と「地形」でした。
山に降った雨が流れ、川になり、土地を削り、運び、地形を作っていく。
扇状地。
氾濫平野。
三角州。
河岸段丘。
水が流れているだけなのに、その流れによって地形が生まれ、人の暮らしや産業にも影響が出てきます。
たとえば…
扇状地は水はけが良く、果樹園や畑と相性が良い。
三角州は低く平らな土地が広がり、田んぼや港町とつながっていく。
氾濫平野には豊かな土地がある一方で、水害のリスクもあります。
川が作る地形を見ていくと、自然の働きと人の暮らしがつながっていることが見えてきます。
これは単なる知識ではなく、かなりロマンがあります。
現代を生きているのに、地形をたどることで、数万年前の自然の動きに触れることができる。
今ある町や暮らしの背景に、長い時間の積み重ねがある。
こういうスケール感は、地理の面白さの一つだと思います。
赤穂しゅなさんの「好き」を、ゲームに翻訳する
この段階では、まだ完成形が決まっていたわけではありません。
冒険者。
クエスト。
地理。
気候。
地形。
防災。
ハザードマップ。
観光。
人の暮らし。
かなり色々な要素が出ていました。
その中で少しずつ見えてきたのは、赤穂しゅなさんの「地理が好き」という要素を、単なる知識問題ではなく、自然と暮らしのつながりを体験するゲームにできないか、という方向性でした。
今回やっていたのは、赤穂しゅなさんの魅力をそのままゲームに入れることではありません。赤穂しゅなさんの好きなことや得意なことを、ゲームとして遊べる形に翻訳することでした。
地理を知識として覚えるのではなく、遊びながら土地の成り立ちや暮らしとのつながりに気づけるようにしたい。
その中で、川や地形というテーマが少しずつ見えてきました。
さてさて、ここからどうなることやら。
次回は、この「川と地形」という話から、自然のめぐみとリスク、そして村を存続させるゲームへと方向性が変わっていった話を書いていきます。
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