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あの「ハドソン川の奇跡」は、泣けるだけじゃない|ピンチを乗り越えるヒントが満載

離陸後間もなく、バードストライクにより両エンジンの推力を失う。最寄りの空港に帰還できる余裕はなかった。そのとき、機長の英断でハドソン川の真ん中に着水する。沈んでしまう前に全員脱出に成功。

155名全員が無事救出されたことを受け、いわゆる『ハドソン川の奇跡』と呼ばれる航空墜落事故である。

本作は泣ける感動作に見えて、実はそれだけではなく、緊急事態対応において学ぶべきことを提示してくる作品だと思う。


美談・英断だが、結果的にOKの判断もある

作中のサリー機長は、155名全員を救った“奇跡の人”として描かれる。

管制塔や副操縦士との対話を通じて、様々な意見を総合し、機長の判断でハドソン川に着水を選んだのだ。

シミュレーション結果や周囲の判断は、『近くの空港に引き返すべき』というものだった。それを覆してやってのけたのである。実際川に着水したら、沈んで生存率が低くなるという常識があったにもかかわらずだ。

前例も参考にして現状、何ができるかを総合的に判断したことが良かったのだと思う。いろんな意見を聞ける立場、状態を作ることができたことが良かったのだろうと思った。

実際は、墜落責任を人為的ミスにしたがる

全体的には良い話にまとまっているけど、現実の利害が絡むと、話は一気にややこしくなる。人命は助かって最悪の事態はまぬかれたのだけど、航空会社や保険会社は損失を被ったのである。

当時のアメリカは資本主義の色が濃く、利益至上主義が強く意識されていた時代だと感じる。そのころには、本当にハドソン川着水ということがベストなのかというところが専門家の中で争点となったようだ。

もし、十分に最寄りの空港に着陸できるなら飛行機の損失や多額の保険の支払いは必要なかったのだ。さらにいたずらに乗客乗員の命を危険にさらしたという評価となってしまうのだ。

そうなると何とも恐ろしい。

とはいえ、現場の当事者は全力を尽くす|緊急事態はシミュレーションとは違う

空港に戻れたという主張はシミュレーションによるものだ。言っていることは正しい。だけど、緊急事態がシミュレーションと異なるのは、一つ判断を誤ればすべてが終わってしまう状況にあることである。

そこにはリアルな人の命が乗っているのである。

実際の緊急事態では、乗員の心理状態そのものが大きな“変数”になる。一方シミュレーションは、あらかじめ『何がどうなるか』が分かっている前提で検証している。

緊急事態では、『何がどうなるかわからない』不安の中から最適解を導き出さないといけないのである。

何回も練習を重ねて得たシミュレーションと一発勝負では根本的に違うのだ。

極端な例だけれど、筋肉番付のSASUKEをぶっつけ本番で行い、クリアしなければ死ぬみたいな状況なのだ。

シミュレーションという名の練習を重ねれば、成功確率は上がるかもしれない。しかし、現実は、チャンスはその場の1回だけなのである。

結局、当時の選択がベストと考えることが大切

違う人が事に当たっていたら、違う結果になったかもしれない。人の能力は千差万別。それも含めて全力を傾けて最善を尽くすしかない。その結果を受けて次に、似たことが起きたときに備えてフィードバックし続けることが大切なのである。

これは緊急事態だけでなくて、人生にも言えるのではないか。今振り返ると、『なぜあんな最悪な選択をしたのか』と振り返って落ち込むことは、日々生きているとよくある。

これは自分にもある。あとから見ると滑稽だ。あり得ないと言われるかもしれない。

だけど、世の中は不思議なほど数奇だ。そのときの自分には“ベスト”に見えた選択が、後から振り返ると愚かにしか見えないこともある。そういう状況になるのだ。その時はベスト。ハドソン川の奇跡のようなことをするには、全員の反対を振り切って我が道を行く勇気が必要だ。

しかし、その勇気を見せて反対方向の間違っている可能性だってある。どれだけ自分を信じていけるか。客観的な判断を前例にこだわらず冷静に判断できるか。

これに限ると思う。

失敗学が面白い

ハドソン川の奇跡は『失敗学』に関係している。失敗については過去に様々な読書感想を書いているので、時間が許せばみていただけるとうれしい。

・『失敗学のすすめ』

・『新失敗学』

・『失敗の科学』

・『多様性の科学』


ここからは、サリー機長の決断とも通じる『データとKKD』の話を少しだけ。

1年前に書いた記事:今後は、dKKDかな?

KKDは、勘、コツ、度胸とされる。データで判断するのとは全く反対の位置の考え方です。今からはd(データ)で判断していかないと目まぐるしい変化を遂げる世の中に取り残されてしまうと言われています。

改めて見直しても、果たしてそうかな?と思うのです。データが昨日までとは真逆の方向を示したらそれに従うのか?と問われれば、否と答える人が大半だと思います。

そこまで、人は柔軟にできていないと思います。しかし、いつまでもKKDだけに頼っていると、それはそれで周りが見えていない。

であるなら、d(データ)も見たうえで、KKD(勘、コツ、度胸)を発揮するdKKDがこれからの姿だと思います。

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