『ミニマル宗教』とは日本文化のど真ん中である:二郎系や推し活から考える、多宗教オタク国家・日本の正体【ミニマル宗教国家・日本①】
今週は日本の『ミニマル宗教』をテーマにした記事を、シリーズとして連載していきます。
#0. 海外から見た二郎系は、なぜ「宗教」に見えるのか
海外へ二郎系ラーメンが紹介されると、必ずと言っていいほど話題になるものがある。
味やカロリーではない。例えば「ニンニク入れますか?」から始まる、あの独特のコール文化。
「ヤサイマシマシニンニクマシアブラカラメ」。初めて見る外国人からすれば、ラーメン屋というより秘密結社の儀式に見えるらしい。
それだけではない。いわゆる「ロット乱し」を嫌う空気や、初心者には分かりにくい暗黙のルールなど、常連だけが共有する独特の作法もそう。
実際、Redditなどの海外掲示板では二郎を cult(カルト)と表現する人も少なくない。もちろん冗談半分ではある。しかし私は、その冗談が意外と本質を突いているように思えてならない。
なぜなら、日本人はラーメン屋だけではなく、あらゆる趣味を「宗教化」する民族だから。
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#1. 日本人は無宗教でも、宗教を嫌ってもいない
よく日本は「無宗教国家」だと言われる。
他の多くの国では、宗教の教義が社会全体の道徳規範として機能している。しかし日本では、それを日常的に意識する感覚が極めて薄い。
確かに、多くの日本人は自分を特定の宗教の信者とは考えていない。一方で、初詣には行く。 神棚や仏壇を置く。 クリスマスを祝い、結婚式は教会風に行い、葬式は仏教式で営む。
宗教を否定しているというより「宗教を宗教として意識していない」と言ったほうが正確だろう。
重要なのはここからだ。
もし日本人が本当に宗教性を失ったのなら、もっと共同体形成に苦労していてもよさそうだ。先に述べた通り、宗教の教義とは通常、多くの国において「秩序を保つための道徳」なので。
しかし現実はそうではない。私たちは別の場所で、せっせと秩序ある共同体を作っている。
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#2. 推し活も、二郎も、サウナも同じ構造をしている
例えば、推し活。二郎。サウナ。鉄道。
VTuber。バイク。ゲーム。
一見まったく関係がないように見える。
しかし構造だけを見ると、驚くほど似ている。
共通言語がある。
初心者には分からない作法がある。
巡礼がある。古参がいる。布教がある。「そこに所属している」というアイデンティティがある。
国家的宗教が本来持っている「所属」「儀式」「共通言語」「共同体」「自己確認」といった機能だけを切り出し、小さく、軽く、趣味へ埋め込んだ共同体、と見ることができるのである。
いわば神の姿なき宗教。
他の国における道徳機能の代替物。
私はこれを『ミニマル宗教』と呼びたい。
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#3. 日本人は「宗教」をやめたのではない
つまり、「日本人は宗教的ではない」という話ではない。むしろ逆。宗教そのものをやめたのではなく「宗教の機能を趣味へ分散させた」のだ。
だから日本には、ひとつの巨大宗教ではなく、無数の小さな宗教が存在する。
繰り返しになるが、推し活やサウナ、二郎、野球、アニメ、ゲームなどなど。数多いる巨大IPのキャラクターたち(ちいかわやコウペンちゃん、リラックマやすみっコぐらしなど)もそう。
どれにも明文化された教義はない。しかし、それぞれに「その世界の常識」がある。見えない道徳がある。まさに「小さな宗教」の群雄割拠状態。
タイトルでも書いた「多宗教」とは、一神教や多神教の概念(神様の数)の話ではない。
ひとりの人間が、推し活にも、二郎にも、サウナにも、野球にも、それぞれ異なる規範と共同体意識を持って所属できる状態のことである。
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#4. オタク大国・日本は必然だった
ここで「オタク超大国」とでも言うべき日本の姿と『ミニマル宗教』がつながってくる。
欧米では、町の教会をはじめとする宗教的な産物が、地域共同体の中で人と人を結びつける役割を果たしている。一方、現代日本では趣味共同体がその役割を担うことが少なくない。
だからオタク文化は、単なる娯楽ではない。
日本における宗教的な触媒の代わり、共同体形成装置そのものと見ることもできる。
推しを語ることは趣味を語ること、だけではない。「私はどこへ所属している人間なのか」を語り、証明することでもある。
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#5. 『ミニマル宗教』は、日本文化のど真ん中にある
最近マスコットや推し活、VTuber、擬人化などについて考えていて、ひとつ気づいたこと。
日本人は「唯一絶対の神」を作らなかった代わりに、無数の小さな人格を作った。
キャラクター。推し。マスコット。ゆるキャラ。
それらは単なるコンテンツではない。
現代人の孤独を受け止め、居場所を与え、感情を預かる存在でもある。
だから私は、日本人は無宗教なのではなく、「宗教的な構成要素」を趣味の中へ、小さく分散させただけなのではないかと思っている。
これが私の考える『ミニマル宗教』である。
長くなるので、いったんここで筆を置く。
ただ、この『ミニマル宗教』という視点から見ると、ちいかわ、コウペンちゃん、リラックマ、VTuber、ゆるキャラといった日本のキャラクター文化も、まったく別の姿に見えてくる。
次回から「マスコット超大国・日本」の宗教的特異性について、もう少し掘り下げてみたい。
日本人はなぜ、ここまでキャラクターを必要としたのか。その答えも、おそらく『ミニマル宗教』の中にある。
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