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乾燥と湿気の「あべこべ」。柔らかいものが硬くなり、乾いたものが湿気るふしぎな理由

休日の朝、少しだけ遅く起きてキッチンに向かうと、そこには小さな「ままならなさ」が待っていました。

昨日買ったばかりの食パンは、袋の口を閉め忘れたせいか、心なしか パサパサ と元気がありません。

一方で、その隣に置いてあった開封済みのクラッカーをかじってみると、こちらは本来の軽快な音を忘れ、なんとも言えない ふにゃふにゃ とした頼りない食感に変わっていました。

同じテーブルの上、同じ部屋の空気。

それなのに、片方はカラカラに乾こうとし、もう片方はしっとりと湿ろうとする。

キッチンという名の小さな宇宙で起きている、このあべこべな現象が、なんだか不思議で仕方なくなったんです。

元はと言えば、私がうっかり袋の口を開けっぱなしにしちゃうからそうなったんですけどね(笑)


同じ空気が教える、あべこべな「お揃い」

なんでだろうと思って少し調べてみたら、物理学で 水分平衡(すいぶんへいこう) っていう、なんだか生真面目な仕組みが関係しているみたいです。

世の中のあらゆるものは、周りの空気と自分の水分量を「お揃い」にしようとする性質があるのだとか。

パンのように元から水分をたっぷり含んでいるものは、乾燥した部屋の空気に自分の水分を分け与えて、どんどん乾いていこうとします。

逆に、極限まで乾燥させて作られたクラッカーやせんべいは、空気中のわずかな湿気を「待ってました」と言わんばかりに吸い込んでしまう。

つまり、彼らはただ、世界と調和しようとしていただけなんですね。

持っている側は手放し、持っていない側は求める。キッチンで繰り広げられる、ささやかな分配のドラマです。

なんだか、不器用なりに必死で世界に馴染もうとしている気がして、ちょっとだけ味があるなと思えてきたりして。


デンプンの「人見知り」というふしぎな理由

でも、パンが硬くなるのには、乾燥だけじゃない「ふしぎな理由」がもう一つ隠れていました。

専門用語では デンプンの老化 と呼ぶそうですが、これがなかなか人間くさい。

パンに含まれるデンプンは、焼きたての時は水分と仲良く手を繋いで、柔らかく振る舞っています。

ところが、温度が下がって時間が経つと、彼らは急に人見知りをして、お互いにギュギュッと寄り添い、結晶のように固まってしまうんです。

特に、冷蔵庫の中(だいたい0℃から5℃くらい)は、このデンプンたちが一番「心を閉ざして固まりやすい」温度帯なのだとか。

よかれと思って冷蔵庫にパンを入れるのは、彼らにとっては一番 居心地の悪い場所 に閉じ込められるようなものだったのかもしれません。

あ、これ、私も昔よくやってました。親切心が完全に裏目に出るパターンですね。


時を止める魔法と、自分を取り戻す熱

そんな彼らのわがままと付き合うために、私は最近、保存方法を少し変えることにしました。

パンは早めに「冷凍庫」という時を止める魔法にかける。

デンプンたちが固まる間もなく氷の結晶として固定してしまえば、次にトーストした時にまた仲良く手を繋ぎ直してくれるんです。

一方で、湿気て不機嫌になったクラッカーやせんべいは、オーブントースターで軽く熱を加えてあげます。

すると、彼らは「ああ、やっぱり自分は乾燥しているほうが自分らしい」と思い出したかのように、余分な湿気を吐き出し、あの軽やかな音を取り戻してくれます。


物理の理屈を知ったからといって、忙しい平日の朝に、すべてのパンを丁寧にリセットできるわけではありません。

結局、少しパサついたままの食パンを口に運びながら、「まあ、これも昨日の自分の忘れ物の味か」 なんて納得してしまったりして。

そんな、ちょっとだけ不器用な暮らしの風景も、仕組みを知る前よりは少しだけ余裕を持って眺められそうな気がしています(笑)


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