21.古代ギリシャの嘘④
画像は以下のサイトから転載。
今回も古代ギリシャの誤解、曲解を解いていきます。あえて誤ったイメージが保たれつづけているので、タイトルのとおり嘘といえるでしょう。
エレウシスの秘儀
エレウシスは、地名です。古代ギリシャのアテネに近い都市で、女神デメテルの祭儀の中心地として知られています。
デメテルの祭儀は、エレウシスの秘儀と呼ばれます。

秘技なので秘密が守られていたのですが、これはカルトで、ギリシャの宗教の変容ぶりをあらわす一例となっています。
エレウシスの秘儀は、穀物の豊穣を祝う祭儀で、古代の中東で行われていた豊穣の儀式に倣ったものです。
カエサレアのエウセビオスは、『福音の備え』にこう記しています。
イシスの誕生はギリシャ人によってアルゴスに移されたが、かれらの神話では、イシスは牛に姿を変えられたローであるといわれている。しかし、同じ神をイシスと考える者もいれば、デメテルと考える者もいれば、テスモフォロスと考える者もいれば、セレーネと考える者もいれば、ヘラと考える者もいる。
オシリスはディオニュソスであり、イシスはデメテルである。
バビロンの邪教ユダヤ人とカルデアのマギの地理的な移動によって、ニムロデとセミラミスの邪神(サタン)崇拝はつづいていきます。
ヘロドトスの『歴史』にはこうあります。
サイスにはまた、……その名を口にするのは不敬であると思う者の埋葬地がある。それはアテナ神殿の中にあり、……境内には大きな石のオベリスクが立っており、近くには石の縁で飾られ、完全な円形につくられた湖がある。その大きさは、かれらが『円形の池』と呼ぶデロス島の湖と同じである。
この湖では、エジプト人が神秘と呼ぶ、神の苦難の物語を夜どおし演じる儀式が行われる。わたしは真実を知っているので、このことについてもっと言いたいことがあるが、慎重に沈黙を守ろう。ギリシャ人がテスモフォリアと呼ぶデメテルの儀式についても、わたしが言及することを禁じられていないかぎり、慎重に沈黙を守ろう。
この儀式をエジプトから持ち出し、ペラスギアの女たちに教えたのはダナオスの娘たちであった。
カドモスとダナオスの子孫がイオニア人で、ヒクソスと同一視されていました。エジプトの祭司マネトはヒクソスとユダヤ人を同一視しました。出エジプトの時代、一部のユダヤ人はモーセに付き従わずギリシャの地に向かいました。
デメテル賛歌
エレウシスの秘儀では、神話が演じられるようです。どのような神話なのでしょうか。
ホメロスの作品に『デメテル賛歌』があります。

秘儀で再現された神話ではありませんが、概略をお伝えします。
冥界の神ハデスは、野原で遊んでいたペルセポネを連れ去ります。実行犯はハデスですが、計画の策定者はゼウスです。
ペルセポネは、ゼウスとデメテルの娘です。ハデスはゼウスの兄弟です。

怒ったデメテルは娘を探すため、オリンポスを去り、老婆に変装して地上を歩きまわります。
放浪の末、デメテルはエレウシスの地にたどり着きます。そこでケレオス王の娘たちと出会い、生まれたばかりの男の子デモポンの乳母になります。
デメテルは宮殿でデモポンを育てます。アンブロシアを肌に擦り込み、夜になると密かに火の中に隠しました。
ある夜、デモポンの母親メタネイラは、デメテルが子供を火の中に入れているのを見つけ、恐怖のあまり叫びました。
デメテルは怒って正体をあらわします。デモポンを不老不死の身にしようとしていたのですが、これで死を避けるすべはなくなってしまいました。
ですが女神の腕の中で育てられた子供なので、決して朽ちない誉れを得られるであろう、とデメテルは告げます。そしてアクロポリスの麓に神殿と祭壇をつくり、自分の伝える秘儀を執り行うようにと命じました。
ケレオスは女神の言いつけどおり、神殿と祭壇をつくりました。神殿が完成すると、デメテルは神殿にこもります。豊穣の女神が姿を消したので、人類を滅亡させるほどの飢饉が起きました。
困ったゼウスは使者ヘルメスを冥界に送り、ペルセポネを取り戻そうとします。ハデスは了承しますが、策を巡らしてペルセポネを騙し、結婚します。
その結果、ペルセポネは一年の三分の一をハデスとともに過ごさなければならなくなりました。
娘が冥界の女神になってしまったのですが、デメテルはそれを受け入れ、大地にふたたび実りをもたらしました。
ペルセポネが冥界にいるときは、母親は地上に実りをもたらしません。なので豊穣のため、毎年エレウシスの秘儀を行わなければならないのです。
太陽が死んでしまう、生贄を捧げなければ、と告げたイスラエルの祭司と同じパターンです。冥界の当番制、果実など、メソポタミア神話との類似点が見られます。太陽たるタンムズも、半年は冥界、半年は天界に住んでいました。
概略では端折ったのですが、ハデスは冥界で、ペルセポネにザクロの実を与えます。ペルセポネは拒んでいたのですが、おなかがぺこぺこだったので食べてしまいました。
食べてはいけない実といえば、あれです。
古代ギリシャは中東文明、と先にお伝えしましたが、そろそろ納得できてきたのではないでしょうか。
アテネ人の秘儀
デメテルのお祭りは、ギリシャ全土で行われていました。ですがエレウシスの秘儀は、エレウシスの地でのみ行われていました。
エレウシスの秘儀は、ミスタイと呼ばれる入門者たちが、アテネからエレウシスまで行進するところからはじまります。その後入信の間で行われた儀式の内容は、いまもわかっていません。
アレクサンドリアのクレメンスの『ギリシャ人への勧告』を引用してみましょう。けっこう衝撃的です。
デメテルの秘儀は、ゼウスとその母デメテルとの情欲的な抱擁と、デメテルの怒り(今後、彼女を母と呼ぶべきか妻と呼ぶべきかわからない)を記念するものである。そのため、デメテルはブリモ(恐ろしい者)と呼ばれるようになったといわれている。また、ゼウスへの祈願、胆汁の飲用、犠牲者の心臓の引き裂き、言いようのない卑猥な行為も行われる。同じ儀式が、アッティスとキュベレーとコリバンテスを讃えるために、フリギア人によって行われている。かれらは、ゼウスが雄羊の睾丸を引きちぎり、それをデメテルの膝の真ん中に持ってきて投げ入れ、自らを切り刻んだことにして、暴力的な抱擁に対する見せかけの罰を払ったという話を、海外に広めている。この神秘への入門の象徴をさらに引用すれば、あなたがたの儀式が暴露されているとき、あなたがたは笑っている場合ではないにもかかわらず、笑いがこみ上げてくることだろう。
キュベレーの信徒は恍惚状態のうちに自分のちんこを切り落としました。邪教の創始者セミラミスは息子のニムロデと結婚しました。
ですがアテネ人は洗練されています(皮肉です)。
エレウシスの秘儀の公式は次の通りである。わたしは断食し、キュケオン(向精神的な醸造酒)を飲み、櫃から取り出し、自分の務めを終えて籠に入れ、籠から櫃に入れた。
ここにある「自分の務め」とは、ある儀式的行動を指します。
デメテルとペルセポネは神秘劇の主題となり、エレウシスは娘の強姦と母の悲痛な放浪を松明で記念する。さて、『乱交(orgy)』と『神秘(mystery)』という用語は、前者はゼウスに対するデメテルの怒り(orge)から、後者はディオニュソスに関連して起こった堕落(mysos)から派生したものでなければならないとわたしには思われる。
娘である乙女を探し、アッティカの一部であるエレウシスを彷徨っていたデメテルは、疲れ果てて井戸に腰を下ろし、深い苦悩に陥った。このような悲嘆の表出は、崇拝者が女神の悲嘆を模倣しているように思われないようにと、今日に至るまで、入門者以外には禁じられている。……デメテルを客人として迎えたバウボ(エレウシスの原住民)は、彼女にワインと食事を勧めた。彼女は喪に服しているため、酒を飲みたくないと断る。バウボは自分が軽んじられたと深く傷つき、自分の秘部(ちんこ)を暴いて女神に見せた。デメテルはその光景を見て喜び、ついに飲み物を受け取る! これがアテネ人の秘儀である! これらはオルフェウスの詩の主題でもある。オルフェウスの詩の一節を引用しよう。秘儀の創始者であるオルフェウスが、秘儀の恥知らずさを証明してくれるだろう。「そう言うと、彼女は衣を脇に寄せて、羞恥の光景を見せた。子供のイアッカスがそこにいて、笑いながら彼女の胸の奥に手を突っ込んだ。女神は微笑み、心から微笑み、輝く杯から(酒を)飲んだ」
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