連載小説 サンタドロップス(2)
綺麗な目をした女だ、白いロングのワンピース、ピンと背筋を伸ばし、颯爽と歩いている。女が一歩歩く度に裾がヒラヒラと揺れる。
マスクの下に隠された顔はどんなだろう、きっと美人に違いない。俺は女のスカートの中を覗き見る様な罪悪感を感じながらマスクの下の素顔を想像した。
女は俺の事になど目もくれず、早歩きで真横を通り過ぎた。俺は振り返り女の後ろ姿を見送っていた。はあ、声を掛ける度胸も無いか、どうせ高嶺の花だ、と不甲斐ない自分に失望した。
俺は再び前に向き直り歩き始めた。と、目の前に腰の曲がった老人がいる。うわっ、ぶつかる、俺はのけぞるように足を止め、あぶねーなあ、と言うと、危ないのはそっちじゃろ、ちゃんと前向いて歩かんかい、と老人は言い返した。
それにしても汚え爺さんだ、禿げ散らかした頭から落武者の様に垂れ下がったボウボウの白髪。上下ツナギの汚い作業着を着てスボンのチャックは全開だ。
悪かったねえ爺さん、チャック開いてるよ、と言って俺は横を通り過ぎようとした。すると老人は手を広げて俺の行く手を遮りこう言った。
「チャック全開はワシのスタイルじゃ、社会の窓は常に開けておくんじゃ、今何が流行っとるか知っとかんとな、ワハハ。ところでお主、さっきワシの事バカヤローって言ったじゃろ、サンタに向かってバカは失礼じゃぞ」
「あの、俺急いでるんですけど」
俺はムッとしながら老人に言うと、
「まあ待て、バカヤローは許す、ワシはサンタじゃ、今日はお前にプレゼントを渡しに来た」
つづく
