ラサフラメナ〈12. ラサフラメナの風〉
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灼熱の光が空を裂いた瞬間、ジェイドの身体は吹き飛ばされていた。
土と火と香が入り混じり、音もなく、重力もなく、ただ白と熱があった。
目が開いているのかもわからなかった。
けれど、視界の中に――彼は、次々と"思い出"を見ていた。
カーサプリアンカの回廊。
夜明け前、霊火の前で手を合わせる母プリアンカの後ろ姿。
カルダモンのパンを焼く匂い。
小さなアーシャが、焼きたてのパンの端をちぎって「お兄ちゃん、先に」と笑った顔。
初めて修行でパドマ・モエの池に浸かったときのこと。意識が溶けて、気持ちよかった。
セナ、ノアリ。
アグニア文殿でよく、色々議論したっけ。
アーシャの髪を結ってやった日。
「ジェイドの結び方、好き」と笑って、ふっと香を纏わせたあの風。
そして――
戻れないと知りながらも、彼女の手を取ったこと。
風が――吹いていた。
思い出の中で。
それはまさに、ラサフラメナの風だった。
香と夢と、無数の"声にならない祈り"を運ぶ風。
遠くで、アーシャの声がする。
「ジェイド、あれ見て。光、きれい」
「うん。⋯⋯アーシャ、綺麗だね」
もう熱くなかった。
もう痛くも、怖くもなかった。
そうして、
霊山のすべては黒煙に呑まれ、ジェイドの意識は、風と香になって、静かに空へとほどけていった。
―完―

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