闇 645(母親の面影編)
闇 645(母親の面影編)

2026/08/17 mon
※多分この時代に岩上智一郎という人間がいたという証明をしたかったから、この作品を自分の為に書いているのだろう。
前回の章

二千二十四年四月九日、火曜日友引。
インカジ『レディ』の仕事帰り、新宿駅構内にあるカレーショップで朝ご飯を食べる。
朝食タイムで安いから入ったが、このレベルのカレーで店をこんな場所で出しているのが不思議でしょうがないと思った。
自称俳優マンションに帰ると、白身魚フライとポテトフライを揚げて、フィッシュアンドチップスを作る。
冷凍庫からグレンリベットを取り出して、ショットグラスへ注ぐ。
キンキンに冷えたウイスキー。
俺が最も好きな飲み方であった。
スコッチウイスキースペイサイド地方のシングルモルトを朝から飲める幸せ。
タルタルソースをたっぷりつけた白身魚フライをつまみに、気分はすっかりスコットランド人。
あー、若くて金があった頃、一度ぐらい行っておけば良かったよー。
本当に昔から俺はものぐさで出不精で、計画性がないまま五十二歳になった。
JALの本部長をしている先輩の小沢さんに言って、海外へ行っておけばと、今になってしきりに後悔する。
酒を飲みながらタバコも吸いたいところだけど、まだ一度も室内で吸っていない為、我慢してベランダへ行く。
セブンスターに火をつけると、右斜めにある河本マンションからメガネザル大家が、いつものように向かいの甲隆閣へ不法投棄。
人から光熱費を毎月三万も四万も不正請求し、ゴミも近所へ無断で捨てる台湾人。
あんなババア、生きている価値ねえだろ……。
部屋に戻り、グレンリベットを飲み干した時に、若香からLINEが届く。
『おはようございます。イチローさん。若香。あなたの誕生日も覚えていますよ。 朱婧瑶9:05』
覚えているよって、昨日の夜俺が教えたばかりじゃないか。
本当にこの子は日本語の使い方がいまいちだ。
実際に会った時は、ベッドの上で手取り足取り教えてやらないとね。
『おはようございます。仕事帰り、新宿駅で朝食とって、今は部屋でお酒飲んでたところです。 岩上9:07』
『うわー。 朝からお酒を飲みましたか。 イチローさんはお酒が好きですか。 朱婧瑶9:12』
ん、あまりイメージ良くないか。
適度な言い訳をしておこう。
『酒は嫌いではないですが、日本は今雨も降っているので、軽く飲んで寝付き良くしようかなあと。飲まなきゃ飲まないでも大丈夫なんですけどね。 岩上9:13』
『なるほど。 雨が降ってちょうど寝心地がいいですね。 イチローさんは布団を厚くしてくださいね。 朱婧瑶9:21』
布団を厚く?
まあ風邪を引かぬよう彼女なりの心遣いのつもりだろう。
『ありがとうございます。布団は、ホテルとかで使ってる分厚いマットレス引いているので、寝心地だけはいいんです、俺の部屋。 岩上9:22』
先日小滝橋通りにあるリサイクルショップで買った分厚いマットレス。
寝心地は最高にいい。
だがあのリサイクルショップにいる中国人のおばさん、結構酷いからムカつくんだよな。
前に座椅子を買う際、値札が千円とついているのを確認しているのに、一応「いくらですか?」と聞くと、さり気なく値札を毟り取り「千五百円」と五百円ボッタクリするような店だ。
『これが一番です。ゆっくり寝ましょう。目覚めて若香にメッセージを送る。若香も仕事に行くつもりだ。頑張って。 朱婧瑶9:26』
『実際に目覚めて、目の前に若香さんいたら、本当に幸せだろうなあ……。仕事頑張って下さいね、行ってらっしゃい。 岩上9:27』
ちかとの四年のやり取りでも、このような甘い会話はした事がない。
まああんなキャバ嬢上がりなど、もうどうでもいいか。
『イチローはよく寝てね。 若香も会社に着いた。 朱婧瑶9:38』
随分着くの早いな。
十分ぐらいしか経っていない。
家と会社が近くなのかな。
『若香さん頑張って! おやすみなさい。 岩上9:41』
昼過ぎに目が覚め、たまには人が作ったもの食べたいなあと、定期券を使って東中野駅へ向かう。
駅前のギンザ通りへ入り、通り沿いにある弁当のさわやに入ってみた。
こういう店が大久保にあったら、俺も料理なんてせず毎日買いに来るのに。
写真を多数撮って、家に帰ると早速ブログを書き始めた。
たまには人の作ったご飯が食べたいなあと……。

総武線東中野駅まで来ました。

改札出た辺りから見ると桜よく見えたんですけど、横断歩道渡って近付くとこんな写真しか撮れませんでしたw。

俺の好きなギンザ通り。

今回のお目当てはここ、弁当屋のさわや。

営業時間です。

入口入るとすぐ弁当類が並んでいます。

ご飯空の容器は、買ってから温かいご飯入れてくれます。

惣菜系も種類様々。

揚げ物もあります。

中々お気に入りの弁当屋です。
ついでに昨日UFOキャッチャーで新しく取ったリアルキッチンシリーズの記事も書いておくか。
まさかこんなミニチュアグッズを俺が集めて部屋に飾るなんて、前の河本マンション時代じゃあり得なかったよね。
コレクションを眺めながらニヤニヤして、写真を撮った。

リアルキッチンシリーズで徐々に仲間が増えています。

レンゲシリーズ、すべてコンプリートしちゃおうかなと思ったりする時もあります。

ま、適度に気まぐれで集めて行こうと。
起きて一時間経つけど、若香へ挨拶しておくかな。
『若香さん、おはようございます。目覚めました。 岩上15:06』
ベランダでタバコを吸って、変わらない風景を眺める。
ここまでのどかで平穏無事な日常を過ごせるなんて、やはり河本マンションから自称俳優マンションに引っ越して正解ではあるな。
余計な金は飛んで行ったけど。
『まだ雨が降っていますか。よく眠れましたか? 朱婧瑶15:23』
『雨は上がって、天気は曇りになってましたね。よく眠れましたよ。 岩上15:24』
雨が降るのは構わないが、俺の出勤する時間以外に降ってほしいものだ。
『イチローさんにも寝すぎがあると思います。普通は午後6時頃に起きるともっと快適になるはずですね。 朱婧瑶15:35』
寝過ぎで午後の六時?
おそらく彼女は、もっと睡眠を取れと言いたいのか。
眠くはないけど、若香を安心させる為にちょっと付け加えておこう。
『確かにそうですね。まだ夜まで時間あるので、また二度寝するかもしれませんが。 岩上15:36』
『若香さんもイチローさんはもう寝てもいいと思います。今は何か食べる必要があります。これでもうゆっくり寝ます。 朱婧瑶15:40』
俺は先ほどのさわやの写真を送った。
『東中野駅の弁当屋行って、ご飯買ってきたんですよ。たまには人が作ったもの食べたいなあと。 岩上15:41』
『若香さんはいいと思いますね。毎回自分で作ったものを食べるわけでもありません。たまにはお弁当かテイクアウトもいいですね。 朱婧瑶15:44』
このチグハグな言葉遣いが、妙に愛おしくなる。
彼女の優しくおおらかな性格によるものだろう。
『たまにはこういうのもいいですよね。若香さんと食事行く時は、すごいお洒落な場所連れてく予定ですが。 岩上15:45』
『そうですか。 楽しみですね。 新宿のグルメですか? 朱婧瑶15:52』
新宿だとなあ…、以前新宿プリンスホテルの支配人連中に知り合いがたくさんいた時ならいざ知らず、今は特に伝手が無くなってしまったしなあ。
そうなるとやはり俺には横浜しかないよね。
『若香さんとなら、俺的に横浜連れて行きたいですね。 岩上15:53』
俺はインターコンチの最上階にあるカリュウの写真を送った。
『ここのインターコンチネンタルホテルとか、一応顔利くので。 岩上15:55』
『じゃ、若香さんが三ヶ月で大阪に帰った時。イチローは大阪に来て若香を探すこともできる。それから一緒にまた遊びましょう。 朱婧瑶15:55』
え、何故俺が大阪へ行く事になっているんだ?
まあこの子と会えるなら、休みを取ってそれもいいかもね。
『大阪行った事ないですが、若香さんいるなら休み作って行ってみたいですね。 岩上15:56』
『もちろんです。私たちは北海道に行ったり横浜に行ったりして気晴らしすることもできます。若香は毎年大阪に帰ると一ヶ月滞在します。自分の気持ちをリラックスさせてね。日本の街や景色が大好きです。 朱婧瑶16:02』
そう言って彼女は、誰かの履歴書が写る画像を送ってきた。
『アシスタントが入社履歴書を若香に見せてくれるのを待ちます。 朱婧瑶16:05』
一人だけではなく、無数にある履歴書。
人事か何かの仕事にも就いているのだろうか?
横になりながらやり取りをしていたので、自然と瞼が重たくなってくる。
目を覚ますと夕方の六時を過ぎていた。
『凄い量ですね。結局また寝てしまいました。 岩上18:10』
二時間も放置したから、さすがに仕事へ集中しているよな。
さっき北海道の事も言っていたから、彼女が来たら一緒に訪れるのもいいだろう。
『北海道は一年くらい住んでいた事ありますよ。自然が凄くて、水も空気も食べ物も美味しいところでしたね。 岩上18:27』
既読にならないので、風呂へ入る事にした。
熱い湯を湯船に張り、入浴剤をたっぷり入れて、身体を温める。
『眠気覚ましに、熱いお風呂に浸かっています 岩上18:29』
風呂上がりにベランダでタバコを吸って戻ると、若香から一枚の画像が届いていた。
指がアップになり、切り傷がついている。
『指を切った。 朱婧瑶18:54』
『大丈夫ですか? あまり無理しないで下さいね 岩上18:55』
料理をしていたのかな?
そこまで傷口が深そうじゃなくて良かったけど。
『大丈夫です。イチローは若香が弱すぎると思うだろう。 朱婧瑶19:03』
『そんな事思ってないですよ。若香さんは女性なので、何かあったら護りたいなという意識を持っているだけです。 岩上19:04』
実際に会ってもいないのに、文字のやり取りだけでここまで盛り上がる。
かつて若い頃出会い系サイトにハマった時期もあったが、形を変えただけで、構造的には一緒なんだよな。
以前実話を元に書いた作品『進化するストーカー女』を思い出した。
あの時は送られてきた写真と、実際の実物があまりにもかけ離れていたから、意識が朦朧となってしまったが、今回の若香は大丈夫だよな。
三ヶ月後にいざ会う段階になって、写真とはまるで違う別人の恐ろしいデブが来たらどうしよう……。
『はははは。イチローさんは本当に素晴らしいです。 朱婧瑶19:07』
いや、あの頃って俺が二十代後半だろ?
時代は充分進化した。
若香に限って、偽者の写真を用意するなんてないさ…、多分……。
彼女からボイスメッセージが届く。
『これから帰ります。 朱婧瑶19:08』
たどたどしい日本語。
無理して音声など届けなくてもいいのに、本当にこういうところが可愛いものだ。
『車で帰るんですね? 気を付けてお帰り下さい。 岩上19:09』
『はい。 朱婧瑶19:09』
『若香さんの声、素敵な声ですよね 岩上19:09』
運転中、返信で事故に遭っても困るな。
とりあえずこのぐらいで抑えておこう。
何だか若香と出会ってから、一日の内のほとんどをお互いのやり取りで使っている。
『イチローはお風呂に入りましたか。もし香がもう家に着いたなら。 朱婧瑶19:50』
さっき入ったと伝えたのになあ。
まあ仕事終わりで彼女もバタバタしていたから、全部に目を通して把握できる訳じゃないもんな。
『イチローさん、ありがとうございます。実は若香の日本語はあまり上手ではありません。勉強中ですね。 朱婧瑶19:50』
そんなのは最初から分かっているのに。
家に帰ったと連絡あるまで返事をするのは危険だ。
気を使って何度もLINEを打っているより、運転に集中してほしい。
次第に目の疲れを感じ、俺はそのまま横になる。
『イチローさんはもう仕事に行きましたか? 朱婧瑶21:11』
携帯電話が鳴る音で目を覚ます。
一時間ちょっと寝てしまったようだ。
『お風呂入りましたよ…、これを打っている途中で、三度寝てしまったようです。 岩上21:32』
『イチローさんはもうお風呂に入りましたか。若香。食事も終わりました。 朱婧瑶21:39』
俺の事ばかり気に掛けないで、帰ってからの自分の生活もあるだろうに。
あえてすぐ返事をせず、十時ぐらいまでパソコンを見ながら時間を潰す。
『若香さんは仕事明けだし、ゆっくりくつらいで下さいね。 岩上22:00』
ベランダへ出て春の陽気を感じながら、セブンスターに火をつける。
『イチローさんはもう出勤しましたか? 朱婧瑶22:09』
まったくこの子は……。
ゆっくりさせたいと思っているのに、こういうところが可愛く感じた。
『俺はもうそろそろ仕事へ行きますよ。ちょうど着替えていました。 岩上22:13』
『はい。イチローさん。体に気をつけてね。夜は休めるなら休んでね。 朱婧瑶22:16』
夜は仕事だから、さすがに休めないでしょって。
『ありがとうございます。若香さんもゆっくり休んで下さいね。 岩上22:16』
着替えを済ませ、自称俳優マンションを出て大久保駅へ向かう。
『もし香は今まだそんなに早く休んでいないよ。 明日はシンガポールの開斎祭です。 一日休みますね。 朱婧瑶22:22』
『そうですか。楽しんで来て下さい。俺は今新宿へ向かっているところです。…と言っても一駅なので、もう着きますが。 岩上22:23』
シンガポールの開斎祭?
よく分からないけど、今は調べている暇もないからなあ。
『はい、そうです。お疲れ様でしたイチローさん。住宅街に戻ったばかりで、住宅街の入り口で夫婦喧嘩をしていました。そして、互いに手を出して、周辺の隣人の周りを取り囲んだ。 朱婧瑶22:30』
新宿駅からインカジ『レディ』へ向かう途中、少し時間に余裕あったので、タイトーステーションに寄り、UFOキャッチャーを物色。
すると無敵のクラシック牝馬三冠リバティアイランドのぬいぐるみを発見。
金にものを言わせ、リバティアイランドGET!
そして新たなリアルキッチンシリーズもGET!
そのまま店へ到着すると、またまた満席で超忙しい。
俺はすぐ業務モードへ切り替え、仕事へ専念した。
一息付けるようになり、若香のLINEを見直し、まとめて返事を書く。
『仕事でずっとバタバタしてました。若香さんが、その夫婦喧嘩に巻き込まれなくて良かったですよ。それにしても、男が女性にいかなる理由があろうとも手を出しては駄目ですよね。 岩上23:56』
さすがにもう寝ちゃっているよね。
二千二十四年四月十日、水曜日先負。
仕事の合間を縫って、ちゃんと若香へおやすみのLINEを送る。
『若香さんゆっくり休んで下さいね。おやすみなさい。 岩上0:27』
一卓のインターホンがひっきりなしに鳴った。
また常連のウザい金子かよ……。
うんざりしながら一卓へ行くと、いきなり怒声が飛ぶ。
「おい、サイトの調子が悪いじゃねえかよ! どうしてくれんだよ!」
「ですからサイトの不具合は、海外の元のサイトの調子が悪いので、それを中継している店では何ともしようがないんですよ。他のサイトへポイントを移動するか、そのまま待って頂くかしか方法はないんですが」
「テメー、ふざけんじゃねえぞ、おい? そんなの知らねえよ!」
本当にコイツは面倒臭い。
インターネットカジノでは、たまに起こるサイトの不具合。
これは例えばJRAの中央競馬でレース中何かしらの障害が起こっても、それを中継してノミ行為をするサテライトがどうしようもないのと同じ。
店で操作も何もできない為、この商売をする店は必ず最初に会員登録をする際、誓約書に不具合に関する件で店は責任を取らないと書いてあり、客はそれを了承した上でサインしてゲームをしているのだ。
つまり金子の要求は、ただの無理難題に過ぎず、かといって一応客なので店側の対応がやんわり宥めるぐらいしか方法はない。
「おい、何とかしろよ、テメー!」
「少々お待ち下さい。上申してきますので、お時間をもらえますか」
「とっとと行ってこいよ、ボケ!」
おまえ、そのよく動く顎を俺の拳で粉砕してやろうか?
このクソガキめ……。
キャッシャー室へ戻ると、店長の斉木が何があったのか聞いてくる。
俺は状況を伝え、金子は話にならないと愚痴をこぼしていると、湯浅が立ち上がり「金子さんですよね? 自分にはいつも普通なんで俺が行ってきますよ」と出ていった。
いやいや、いくら普段普通に話しているのかもしれないけど、それは金子の人間性を何も理解していないよと思ったが、まあ自分の望んで行ったのだ。
朗報を待とう。
二分もしないで苛立った表情で戻ってきた湯浅。
彼も俺同様、「あいつ、まるで話にならないですよ。金を返せとそれしか連呼してこないです」と不満をぶつけてくる。
片屋敷が次に行くも同じ結果。
仕方なく店長の斉木が説得に行く。
それでもすっかり客面で図に乗った金子は、これまで使った金を返せの一点張りで、まるで話にならない。
結局深夜に名義社長の倉敷へ電話して、これから彼が店へ来る事になった。
「金子の奴、岩上さんが言っていた通り、とんでもない奴ですね!」
「だから前からあいつは駄目ですよって、俺は散々言っていたじゃないですか。店の粗相に対して怒るなら分かるけど、サイトの不具合であそこまでクレーム言われたら、全国どこのインカジでも商売にならないですよ」
倉敷が夜中の三時過ぎに来店し、金子を説得していたがまるで折れないので、三十万円を渡して出入禁止処分になった。
最も憂鬱で厄介な客が、これで消えたので、レディの面々もこれからはかなり働きやすくなるだろう。
裏稼業では、このような場合が一番面倒臭かった。
店側はとにかく低姿勢でいくら理不尽な事を言う客相手でも、必死に堪えながら接客しなければならないのだから。
朝方になりようやく客も次々帰り、ようやく仕事を終える。
『おはようございます。仕事終わって、部屋に戻ってきました。 岩上7:10』
まだ若香は眠っている最中か。
それにしても本当に金子のガキはムカつくな。
もう客じゃなくなったんだし、歌舞伎町の外で会って偉そうにしてきたら、思い切りぶん殴ってやろうか。
まあそれもこっちが店を構えている限りできる訳ないんだよね、感情に任せての行動なんて……。
さて…、気分を切り替えて、昨日の夜取った馬のぬいぐるみとリアルキッチンシリーズのブログでも書こうかな。

リバティアイランドGETしました!
100円で取れました。
取った当初、アーモンドアイと思ったら、リバティアイランドの勘違いでしたねw。
もこれも欲しかったので嬉しい。

本当に凄い馬ですよね。
クラシック牝馬三冠(桜花賞・オークス・秋華賞)、阪神ジュベナイルF、去年はあのイクイノックスの次で2着。今年の海外競馬、ドバイシーマクラシックでは初の3着だけど、8戦中1着5回、2着2回、3着1回だけ。
アーモンドアイも凄かったけど引退してしまったし、まだ現役のリバティアイランドの今後楽しみですね!
競走馬ぬいぐるみコレクションに仲間入り。
尻尾にボタンを押す部分があって、押すと関西G1のファンファーレ鳴ります。
この機能はちょっと嬉しい。

そしてリアルキッチンシリーズのレンゲにまた仲間が。

これも100円でゲット!
ブログの記事を書き終えると、俺は減った食材の買い物へ出掛けた。
マンションから徒歩二分ほどで、ドンキホーテもあれば、業務用スーパーもある。
本当に住むには便利な立地であった。
『おはようございます。イチローさん。香が目を覚ましたら。イチローはもう寝ましたか? 朱婧瑶9:06』
部屋に戻った時、若香から連絡が入っていた。
携帯電話を置いたままだったので、一時間以上経っている。
俺はすぐ彼女へ返事をした。
『おはようございます。まだ寝ずに食材の買い物行ってきました。もうちょっとしたら休みますよ。 岩上10:45』
『なるほど。どんな食材を買いましたか。何かおいしいものを作るつもりですか。 朱婧瑶11:03』
俺の作る料理は若香も興味を持っているので、適当なものを作る訳にもいかない。
『高級牛肉に、唐揚げ用の鶏肉、あとは卵に野菜ですね。今日は唐揚げを作ろうかなと、今、鶏肉をタレに漬けているところです。高級牛肉は、とりあえず冷凍させました。 岩上11:08』
『いいですね。昼に食べられるかどうか。それから少しお酒を飲みます。 朱婧瑶11:21』
『若香さんは仕事中ですよね? 指の傷、少しは回復しましたか? 唐揚げは寝て起きてからなので、夜になると思います。 岩上11:26』
『イチローさんのご配慮ありがとうございます。もうずいぶんよくなりましたね。今日はお休みで家にいますね。今日はシンガポールの開斎祭だからです。 朱婧瑶11:31』
『あ、昨日言ってましたよね。開斎祭、楽しんで来て下さいね。 岩上11:32』
ちょっと何の祭りなのか調べてみるか。
シンガポールでは、開斎祭(断食明け大祭)は「ハリラヤ・プアサ(Hari Raya Puasa)」または「ハリラヤ・アイディルフィトリ」と呼ばれ、国民の祝日に指定されているイスラム教の最も重要な祭典の一つ。
うーんと、彼女もイスラム教って事?
『開斎節はイスラム教徒の封斎月の終わりを示している。二千二十四年の断食日は三月十日から四月九日です。この日、イスラム教徒は早朝の特別な祈りの儀式に参加し、一緒にお祝いをして美味しい開斎祭の食事を楽しみます。開斎節の間、イスラム教徒も慈善活動を行い、親戚や友人を訪問して、この特別な日を祝う。宗教的信条は違いますが、シンガポールの各宗教の重大な祝日です。国全体の住民は共に祝う機会であり、互いに尊重し合い、文化的多様性がある。 朱婧瑶11:37』
『へえ、とても勉強になります。日本は無宗教に近いので、若香さんとのやり取りは自身の見識の幅を広げ、より成長できるような気がしますね。 岩上11:40』
よく分からないから、彼女に適当に合わせておこう。
『実は若香にも宗教的信条はありません。シンガポール側は宗教に熱中しているだけです。どうせ休むなら家で休みの時間を楽しんでください。明日、会社の企業文化は老人ホームにボランティアとして派遣されます。 朱婧瑶11:45』
とりあえず彼女が熱心な信者じゃなくて良かった。
イスラム教へ入れとかなったら面倒だしね。
さすがに眠くなってきた。
『俺はそろそろ寝ますね。若香さんとデートしている夢見れたらいいなあ。 岩上11:47』
『はい、イチローさん。美麗に寝ましょう。目が覚めてからにしよう。若香が行っても料理を作る。 朱婧瑶11:50』
料理もいいけど、俺は君を食べたいよ。
『それは本当に楽しみ! 早く若香さんと会ってみたいなあ。 岩上11:51』
これを送ると限界が来て、倒れるように眠った。
『一番いいのは出会いますね。よく寝てね。 朱婧瑶12:22』
夕方に目を覚まし、若香から昼ぐらいに返事が届いていたのを知る。
『おはようございます。起きたところです。 岩上16:51』
『今ソファーに横になってYoutubeで山口百恵さんの歌を聴いています。これは私の父が一番好きな日本の女性歌手です。ほとんどの日本人男性にとって女神だろうと思います 歌を共有します。 朱婧瑶16:55』
うーん…、ちょっと彼女は日本の文化をズレて理解しているな。
当時の俺より上の世代なら、ほとんどの日本人男性にとって女神だろうという評価も頷けなくはないが。
『山口百恵なんて、俺が小学生の頃引退した歌手ですよ。凄いですよね、引退してからまったくメディアに出てこなくなって。昔、俺の家の目の前は映画館だったので、山口百恵の映画を当時リアルタイムで観た記憶あります。 岩上16:59』
さて、そろそろ夕食の準備を始めるか。
さすがに腹が減っている。
鶏肉を処理しないと無くならないから、今日は唐揚げにしよう。
『そうですか。イチローも山口百恵が好きだったのですね。この歌は母と娘の物語を訴えている。この歌を聞くたびに母を懐かしく思う。 朱婧瑶17:22』
彼女にとって懐かしく思う?
若香の言い方に違和感を覚えた。
ひょっとして山口百恵の歌は、彼女にとって母親とのいい思い出なのか。
別に俺は世代的に山口百恵のファンでも何でもないが、無下にそう言う必要性もないだろう。
『小学二年生の時点で、俺の母親は家を出て行ってしまったので、母子の仲は結局理解し合えないまま終わりましたね。 岩上17:59』
こんなしんみりした事を彼女へ伝えてどうする。
若香が好みそうな明るい話題にしないと。
『今日は唐揚げ作りました。 岩上18:00』
あれ、既読がつかない。
食事でもしているのかな?
まあいいや、料理の状況をブログに書こう。

今日は唐揚げと、茄子とピーマンのオイスターソース炒めという手抜き料理。

鶏もも肉を漬けダレに漬けて。

小麦粉に和えて。

揚げます。

その間、茄子とピーマンを切り。

油でサッと油通しして。

オイスターソースで炒めます。

こんな感じで。

完成。

弁当もこんな感じで手抜き。
一通りの作業を終えると、ベランダへ出てセブンスターに火をつけた。
『イチローさんは素晴らしいですね。味はどうですか。 朱婧瑶19:02』
あ、やっと返信が来たぞ。
『私の母は肝臓癌で亡くなりました。その時私はまだ三歳だった。父はこの悲しい場所を離れるために。三歳になってから父は私を連れて大阪を離れ、シンガポールに帰って生活しました。 朱婧瑶19:02』
「……」
先ほど覚えた違和感。
それは嫌な方向で当たっていた。
お互い母親はもうこの世にいないという現実。
若香にとって山口百恵を介してでないと、蘇らない母親との記憶。
俺はどうか?
同じ亡き母親とはいえ、お互い理解も何もないまま、静かに関係だけが終わった。
ずっと憎悪を根底に沈めたまま生きてきた。
やがてそれは俺の初の小説の執筆時、文字が怨念となり全国へばら撒かれた。
地元のレストランシブヤで先輩の櫻井さんから聞いた突然の訃報を思い出す。
ナポリタンへパルメザンチーズを掛け、タバスコを振る。
フォークに麺を絡めて口へ運んでいる最中だった。
櫻井さんがボソッと口を開く。
「智一郎…、落ち着いて聞いてくれよ?」
「え、落ち着く? 何がです?」
「おまえのお袋さん…、亡くなったらしいぞ?」
「……。亡くなった? 俺のお袋がですか?」
「うん…、人づてに俺も聞いただけなんだけどさ」
「……」
ふと頭の中に赤子の俺を抱いた両親の写真が浮かんだ。

二俣川から川越に戻って来た時、親父が渡してきた写真。
靖国神社参拝記念、昭和四十七年六月十一日。
まだ九月十三日になっていないから、俺が零歳の頃のもの。
「大丈夫か、智一郎?」
「大丈夫って何がですか? お袋が死んだって事ですか? もう俺が三十代の頃からまったく会っていないんですよ? それが今さら亡くなったからって…、何のショックを受けるって言うんですか」
無理やり笑みを見せる。
心の動揺は本当に何も無かった。
俺がまだ二度目の歌舞伎町へ行く前だったと思う。
佐川急便を辞めたぐらいか?
あの頃すでに二階堂さんは亡くなっていた。
確か二千十一年……。
つまり…、お袋はこの七年ほど一人寂しく生きてきた事になる。
俺、徹也、貴彦……。
三人の兄弟をこの世に産み、育児途中ですべてを投げ出し岩上家を出て行ったお袋。
左目の上の二つの傷が疼く。
理不尽な虐待でつけられたこの傷。
結局とうとう最後まで和解する事も何もなく親子の関係が幕を閉じただけ。
取り乱す訳でもなく淡々と母親の死に対し、平然としている。
何の心境の変化もない俺は、やはりどこか壊れているのだろう。
新宿クレッシェンドを世に出してから十年。
この十年で、いや、作品を書いた時点で、憎悪は無くなっていたんだろう。
ただ俺を産んだという過去だけが残っただけ……。
「……」
若香との会話で、数年前を振り返る。
俺にこれといった変化はなく、母の死に対し、たまにぼんやり考える事がある程度。
一体お袋は何故俺ら三兄弟を生み落とし、あのような人生を送ったのだろう?
いくら考えたところで分かるはずがない。
何故なら一緒に過ごした期間が極端に少なく、まともに会話をした記憶がないからだ。
左目の傷が疼く。
途端に過去がフラッシュバックする。
「おばあちゃん、おかわり」
「はいはい」
お腹いっぱい食べられるのは、こんな状況の時だけだった。
ママとの食事はいつも酷い。
家の隣にある食堂のひろむへ行き、とんかつ定食を一人前だけ注文するママ。
ご飯をもう一つだけもらい、四人でそれを分けて食べた記憶が蘇る。
まともに食事の用意をしてくれないなと、僕はいつも感じていた。
何でもいいからお腹いっぱい食べたい。
そんな思いが強かった。
ママなんていなければいいのに……。
僕はこの頃からそう思っていた。
「……!」
一瞬、心臓が止まったかと思った。
僕は扉の少し開いた隙間を見て、ご飯の茶碗をテーブルに落としてしまう。
「ちゃんとしっかり持たないと駄目だよ、智一郎」
おばあちゃんが注意をしても、僕の耳には届かなかった。
僕の全神経は、僅かに開いた扉の隙間に注がれていた。
隙間から見える暗闇。
真っ暗な部分に白い目が、一つだけ見えたのだ。
その目は怒りを表しているかのように釣り上がっている。
僕は、それがママだと直感的に分かった。
全身がガクガク震えだす。
もっと早めに食べ終わり、すぐに二階の部屋に戻るべきだったのだ。
あれほど、注意していたはずなのに……。
誰も扉の向こうにいる存在に気がつかない。
僕だけがそれを知っているのだ。
隙間から白い手が見え、ゆっくりと手招きしている。
僕は操られるかのように立ち上がってしまう。
「どうした、智一郎」
「も、もう…、お腹いっぱい……」
それだけ言うのが精一杯だった。
おじいちゃんたちに、扉の向こうにいる存在を知られたくなかった。
僕は黙って扉のほうへ、歩いていく。
誰か僕をとめて……。
お願いだから、誰か気付いて……。
いくら心の中で必死に叫んだって、誰にも聞こえやしない。
居間を出る際、一瞬だけ振り向く。
徹也がおばさんと楽しそうにはしゃいでいるのが見える。
羨ましかった。
その瞬間腕を強く引かれ、僕は廊下に引っ張り出される。
思った通りママがもの凄い形相で立っていた。
足元から震えだす僕など一切気にせずに、ママは強引に階段へ連れていかれる。
助けて欲しいのに、不思議と声を押し殺した。
一歩一歩階段を上る度に尻を叩かれる僕。
今、声を出すとおじいちゃんたちに心配させてしまう。
そんな思いが頭をよぎり、僕は懸命に涙を堪えた。
途中の踊り場まで到着すると、髪をつかまれる。
「何で帰ってくるまで待てなかったんだ?」
僕だけに聞こえるぐらいの声で、ママは静かにそう言った。
「ご、ごめんなさい……」
「何回、同じ事を言わせるんだよ?」
凄い勢いで尻を叩かれた。
髪の毛を握るママの手が無言で、上にあがれと言っている。
足が震えてうまく階段を上れない。
するとまた尻に痛みが走った。
そんなに悪い事を僕はしたのだろうか。
いつも学校では成績優秀だった。
あの「じっかい」という間違い以外は、いつも百点ばかり。
通信簿も大変良くできましただけなのに……。
でも、誰も僕を守ってくれない。
か弱い存在の自分が嫌いだった。
勉強ができるよりも、もっと強くなりたかった。
仮面ライダーみたいに僕がなれたら、どんなに素敵だろう。
ウルトラマンみたいに大きくなれたら、何も怖いものなどないだろう。
でもそんなものは夢でしかない。
現実の僕はガタガタ震える事しかできない。
部屋に到着すると、床に放り出される。
僕はそこで初めて泣いた。
泣けば恐ろしいママの顔が、涙で滲んで見えなくなる。
「何度、言ったら分かるんだよ」
頬に痛みが走る。
僕は両腕で顔を隠した。
痛みは色々なところから感じた。
容赦なく無差別に攻撃を繰り出すママ。
僕は泣くしか方法がない。
「これを持ってろ」
俺におもちゃ電話の受話器の部分を右手に持たせる。
電話機の本体を持ち、一歩一歩ゆっくりと後ろに下がっていくママ。
幼いながらも、これからどうなるのかが理解できた。
分かっていながら怖くて離せなかった。
受話器を……。
手を離したら、そのあと何をされるかを想像してしまう。
まだ幼い俺には、その想像のほうが怖かった……。
どんどん伸びていくコード。
それでも僕は電話の受話器を震えながら持っている。
恐ろしかったのだ。
抵抗して、これ以上殴られるのが嫌だった。
おもちゃの電話機の本体と、俺の右手にある受話器を繋げているゴム製のコードが伸びきったと思った瞬間、ママの手元から離れていた。
「……!」
いきなり目の前が真っ暗になり、火花が散る。
思わずその場にうずくまってしまう。
目の上が焼けるような痛みを発している。
「ハハハ…、馬鹿だねー。あんた、何やってんの?」
逃げようと立ち上がり、後退した。
その時おもちゃのブロックを踏んでしまい、足の裏に痛みが走る。
胸を押され、床に倒れ込む。
合気道に行った時の風景が思い出される。
稽古を始める前に正座して一礼。
そのあと正座をして目を閉じているところを不意に先生が胸を押してくる。
そこで倒れてはいけない。
精神を集中させるのが、本来の目的らしかった。
でもそんな事は、当時の僕には分からない。
「何、勝手に転んでんだ。立て!」
僕は言われるまま立ち上がる。
足元にはおもちゃのブロックが散乱していた。
ママはいくつかのブロックを拾っている。
「動くなよ。きょうつけして目をつぶってろ!」
「はい……」
これから何をされるのか。
身体を震わせながら、目を少しだけうっすら開けた。
ママがブロックを投げつける途中だった。
青色のブロックが僕の頭に命中する。
僕は再び倒れた。
「何、大袈裟に倒れてんだ!」
起き上がれば、また同じ目に遭う。
分かっていながら立ち上がった。
そうするしかないのだ。
何度もママは、僕にブロックを投げつけた。
僕はこのまま殺されるのかな。
素直にそう感じた。
その時、部屋のドアが勢いよく開く。
「おまえは何をやってんだ!」
おじいちゃんだった。
今まで見た事のないような厳しい目でママを見ていた。
二階の騒ぎを聞ききつけ、助けに来てくれたんだ。
真っ暗闇な中、一筋の光明が見えたような気がした。
必死にその光ある方向へと向かう。
「おじいちゃん……」
自然とその方向に駆け寄ろうとした時、背中に激しい痛みを感じた。
床に倒れ込む際、スローモーションのように映し出される。
そして、目の前に割れた白いブロックの破片が見えた。
「わぁっ……」
僕は目を押さえながら、床に転がった。
たくさんの血が出ていた。
僕は強くならないと、いつか殺されちゃう……。
それからあとは記憶にない。
「……」
いい加減にしろよ……。
もう俺の幼少期の事など、どうでもいいじゃないか。
お袋が亡くなって数年になるのに、いつまでそんなものを引きずる?
今は過去を思い出し、怯える時じゃないだろ?
まずは明るく彼女へ返そう。
『味は普通には食べられますよ 岩上19:03』
『もういいですね。 朱婧瑶19:04』
それと若香へフォローをしなくてはいけない。
自身の過去など、どうでもいいじゃないか。
今は感傷的になっているだろう彼女の傷を、少しでも和らげたい。
『若香さん、幼い頃から苦労して大変だったんですね。三歳で死別って、ほとんど記憶が無く、一番可愛がられる時期でもあるじゃないですか。それでシンガポールが拠点になったんですね。 岩上19:06』
言葉を慎重に選び、文字を打ったつもり。
細心の注意を払った。
『父は私を悲しませないように、優しい嘘をついた。父は私に、母は遠くで病気を治しているだけだと言いました。大きくなったら母が帰ってきます。これは若香の子供の頃の母との写真です。唯一の記憶は写真で発見されたものです。 朱婧瑶19:26』
彼女が一緒に送ってきた画像は、幼き頃の若香ともう一人を抱く母親の写真。
俺もこのぐらいの頃は、まだ虐待もなく何も分からない状態で毎日をニコニコと過ごしていたのだろう。
あどけない表情のまま……。
『いい写真ですね。若香さん、姉妹もいたんですね。そんな優しいお父さんには、これからも孝行しないといけませんね。若香さんが健康で元気に生きているのが、一番の親孝行ですが。 岩上19:39』
そうだ、俺の幼少期も見せておこう。

『俺がニ歳の頃の写真です。 岩上19:42』
自分で二歳と言っているだけで、一歳なのか定かでない写真。
『かわいいですね。今の言葉で言えば。目鼻立ちがはっきりしている。私の父は最も苦労しています。彼は父と母の二重の役割を同時に果たすからです。美子は子供の頃、休日になると、ほとんど親戚の家にいました。だから私は百家飯を食べて育ちました。私は早く独立して、一生懸命勉強して、父に心配させないようにしました。 朱婧瑶19:50』
美子とは姉妹の事だろうか?
百家飯とは何か?
調べてみると、中国の古い民間風習で、近所の多くの家から少しずつ分けてもらう…、あるいはもらい集めたご飯や食べ物の事らしい。
苦労したんだな、色々と……。
『若香さんはとても素敵で素晴らしい女性ですよ。外見的な美しさに備えて、心もとても綺麗な方だと思います。 岩上19:51』
魂を込めて小説を書いていたあの頃のように、短い文面でも慎重に想いを込めて文字を打つ。
『若香は子供の頃から独立していたからです。父は海鮮ビジネスをしています。いつも出張で忙しい。若香が自分で自分の世話をしたことです。 朱婧瑶19:57』
『その辺りの環境から、今の若香さんの人格形成になったんですね。
艹(草冠)の下に心で、芯になりますが、若香さんは人間としての芯がとても素晴らしいですね。 岩上20:01』
無知な知識を総動員して、無い脳みそをフル回転させて、文字を書き連ねていく。
久しぶりに全神経を使ったせいか、一気に睡魔が襲ってくる。
『イチローさんは褒めました。若香。一番ではありません。自分がすべきことをしただけです。元夫との離婚も含まれています。以前は天は自分に不公平だと思っていた。後は自分で生活してからも実は慣れました。 朱婧瑶20:06』
タイマーの音で目覚める。
時刻は二十二時半。
ヤバい、仕事へ遅刻しちゃう。
『ごめんなさい、若香さん。返事打とうとして、いつの間にか二度寝してしまい、目覚めたら出勤前だったのでバタバタしながらLINE打っています。 岩上22:27』
急いで服を着ながら自称俳優マンションを飛び出る。
遅刻する時間帯ではないが、基本三十分前には出勤する癖のある俺にとって、ギリギリに行くのは美学に反する事だった。
電車に乗り、若香の届いていた文面を見る。
彼女はバツイチだったのか。
そりゃそうだ。
四十二歳で、社会的信用のありそうな大会社で働きながら、全然男の影が出てこない。
過去にそういった出来事があったのか。
それならば俺が掛ける言葉は優しさではなく、勇気を持たせるものでないといけない。
『世の中って色々と不公平ではあるんですが、これまで生きてきて自身の身に起こった事すべて、現世に自分が生まれてくる際、そうなるよう自分自身で設定してから来ている。だから目の前で起こる物事はなるべくしてなったものなので、すべて自流の流れに沿ってそのまま受け入れればいい。これ、俺が今まで生きてきて辛かった際、そう考える事で自身への苦痛がかなり無くなったんです。 岩上22:34』
もし彼女が本当に俺の傍に来るのなら、優しさが百といった数値なら、九十九の優しさで接したい。
『それでは仕事行ってきますね。 岩上22:37』
新宿駅を歩いていると、若香からLINEが届く。
『大丈夫ですよ。イチローは最近疲れているのかもしれませんね。昼はいくら寝ていても夜の休みには及ばない。若香とイチローは自分の過去を話した。イチローを本当の親友にしたからです。そして、若香はこれらのことを誰にも言ったことがない。今日はイチローにこれを言います。若香は気分もよくなった。はい。イチローお疲れ様でした。夜はお湯を飲むことを覚えています。 朱婧瑶22:39』
『若香さんの過去。色々若香さんの事知れて、理解できてきて嬉しいですよ。 岩上22:43』
胸襟を開いて話す。
これは誰が相手でもいいという訳ではない。
それぞれ生きていれば、様々な形で人間は傷ついていく。
それでもその傷口に触れ合い、癒す事もできるはず。
『今後イチローにはどんな楽しいことも不愉快なこともある。いずれも若香に言えます。私は聞き手になります。イチローはよく働きましょう。若香もお風呂に入ってから寝ます。また明日。 朱婧瑶22:44』
インカジ『レディ』へ到着すると、店内は大忙し。
すぐに返事をしたかったが、それが許される状況じゃなかった。
隙を見てトイレに行き、手短に返信を打つ。
『若香さん、ゆっくり休んで下さいね。いつもありがとうございます。 岩上23:15』
慌ただしい中、二人の距離が一気に縮まったような気がした。
できる限り誠実にこれからは生きようじゃないか。
彼女の為にも……。

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