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なぜ、棟方志功と谷川俊太郎なのか? いわきアカデミア対話型鑑賞プログラム題材選定ストーリー

いわきアカデミアが今年度から新たに実施する対話型鑑賞プログラム『IWAKI ART JAM ~アートで「好き」を見つけて伝え合う。自分の「スキ」をこのまちでみつけよう』。

小学5年生から高校生までが対等な「鑑賞者」として集まり、自分の「好き」を言葉にし、他者と共有するワークショップです。

第1回・第2回の会場は「いわき芸術文化交流館アリオス」。

今回は、2人の巨匠の作品を題材にスタートします。

第1回は棟方志功の巨大美術陶板「大平和のしょう」、第2回は谷川俊太郎の組詩「アリオスに寄せて」です。

なぜ、数あるアートの中でこの2つの作品を選んだのか――。

その理由は、企画を立ち上げた私自身の思い出と、次代を担う子どもたちへの願いがあるからです。

今回は、募集要領には書いていない「題材選定のストーリー」を、noteの場をお借りしてお伝えさせてください。


成長のそばにあった、棟方志功の「緞帳どんちょう

8月3日に実施する第1回の題材に選んだのは、日本を代表する版画家・棟方志功の作品です。
現在、アリオス本館2階に設置されている巨大な美術陶板「大平和のしょう」は、かつて同じ場所にあった「平市民会館」の大ホールの緞帳どんちょうを大型の陶板で再現したものです。

私は幼少期から高校時代まで、行事のたびにあの大きなホールの椅子に座り、ステージが始まるのを待っていました。そのとき、いつも目の前にあったのが、棟方志功の手による力強い緞帳どんちょうでした。

不思議なもので、同じ緞帳どんちょうのはずなのに、自分が成長するにつれて全く違う受け止め方をしていました。

幼稚園の頃はなんだか怖く、小学生の頃はただただ圧倒される不思議な絵。
それが中学生になると緞帳どんちょうの細部や色彩のコントラストに目を奪われるようになり、高校生の頃には、その包容力のある絵から言葉にならないエネルギーを分けてもらえる気がしたのです。

自分の心が変わるたびに、作品が語りかけてくるメッセージも変わる。
それは私にとって、自分の成長とともに変わっていく「感じ方」をアートが教えてくれた最初の体験でした。

建替えに伴い、緞帳どんちょうから形を変えて設置された「大平和のしょう」。
この作品は、過去の記憶を今に伝え、さらにこれからの子どもたちへと受け継がれていく「過去から未来へつなぐバトン」そのものです。

今のいわきの子どもたちがこの作品の前に立ったとき、一体どんな発見をするのだろう。

離れて見たときと、近づいたときの感覚の違いを味わいながら、「今の自分がどう感じるか」を言葉にしてほしい。
そんな私自身の原体験から、最初の題材はこれ以外にないと考えたのです。


新しくバトンを渡す、谷川俊太郎の「詩」

続く8月4日に実施する第2回の題材は、詩人・谷川俊太郎の組詩「アリオスに寄せて」です。
アリオスの外壁にレリーフとして刻まれており、この場所のために書き下ろされた特別な4つの詩を深く味わっていきます。

一般的な対話型鑑賞といえば、絵画や彫刻といった「目に見える美術品」を題材にすることが多いと思います。「詩」を題材に選ぶのは、少し珍しいアプローチかもしれません。

それでもあえて詩を選んだのは、参加する子どもたちに、アリオスという「劇場」そのものを特別な視点で見つめ直してほしかったからです。

棟方志功の作品が、いわきの歴史を背負いながら未来へと手渡されていくバトンだとすれば、谷川俊太郎の詩は、アリオスという新しい劇場が誕生したからこそ生まれた「現在から未来へつなぐ、もう一つの新しいバトン」です。

また、子どもたちには、ただ建物の中に足を運ぶだけでなく、この詩を感じることで、「場」の持つ意味をじっくりと見つめ直してほしいと思っています。

言葉は、目に見えない感情や想いに形を与えてくれるものです。
文字から立ち上がるイメージをみんなで共有し、詩を声に出してその温度を感じる。
「目に見える絵画」と「形のない言葉」を鑑賞することで、「自分たちにどんなメッセージを投げかけてくれているんだろう」と、場そのものと対話する力が育まれると信じています。


自分だけの「スキ」を見つける

棟方志功と谷川俊太郎の作品。
この2つのバトンが交差する題材を鑑賞することは、いわきというまちの記憶と現在を、地続きで体験することでもあります。

いわきアカデミアでは、「社会で必要な考える力やコミュニケーション力を高める」ことを基本理念の一つに掲げています。
正解のない問いに対して「私はこう思う」、「あなたにはそう見えたんだね」と認め合える、心理的な安全性に満ちた居場所をつくりたいと考えています。

私自身が、平市民会館の緞帳どんちょうを見て成長してきたように、子どもたちにもこのワークショップを通じて、自分自身の感性に自信を持ってほしい。
対話型鑑賞という体験だからこそ、子どもたちの自由な発想や深い感性が引き出されるはずです。

そして、「いわきには自分の居場所がある」と感じてもらえたら、これ以上嬉しいことはありません。

第1回、第2回でじっくりと目と想像力を磨いた子どもたちが、11月8日に実施する第3回でいわきの駅前大通りへ繰り出したとき、いつもの見慣れた街並みがどんなふうに見えるのか、今から楽しみで仕方がありません。

まだ見ぬ君だけの「スキ」を、このまちで一緒に見つけに行きませんか?
皆さんとアートを通じて「対話」ができるのを楽しみに待っています。

▼参加申込みはこちらの記事から