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キリスト教:主な8つの教派紹介

キリスト教にはさまざまな教派があるので『キリスト教がわかる』(2002年出版)に基づき主要8教派を紹介。


⒈東方正教会

東方正教会は、ロシア正教とかギリシア正教として有名な教派。「東方」というのは、8世紀から13世紀の間に正教会の総主教区の一つであったローマ総主教区が、ローマ・カトリック教会、つまり「西の教会」になったことに対応してのこと。

東方正教会の立場からみると、ローマ・カトリックも東方正教会から分離した教派なので最も正当派、というか「本家」の教派が東方正教会。

なので、一番最初に紹介するのも「東方正教会」となる。

ラベンナ:世界遺産のビザンチンモザイク、サンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂(2025年5月撮影)

東方正教会的には、ユダヤ教は旧約聖書に預言されていた救い主たる、イエス・キリストを認めていないので、ヘブライの伝統を現代に至るまできちんと継承しているのも東方正教会だけ、という解釈。

この解釈は面白い。つまり彼らが言いたいのは、ユダヤ教においても最も正統派が東方正教会であって「イエス・キリスト」つまり預言者を認めないユダヤ教は本来のユダヤ教ではない、という立場。

最も正当たる東方正教会は、ユダヤ教の正統派でもあり、当然キリスト教の正統派でもある、ということです。

函館ハリストス正教会(函館:2025年10月撮影)

確かに歴史的に見れば、そのような解釈も成立します。

イエス・キリストの活躍したイスラエルも西欧地域からみれば、「東方(オリエント)」だし、古代ローマ帝国においてキリスト教を最初に認めた皇帝も、東方のコンスタンチノープル(現イスタンブール)に遷都したコンスタンティヌスなわけですから。

正教会の文化が花開くビザンチン文化では偶像崇拝が盛んですが、彼らに言わせれば、目に見えぬ神が「キリスト」という目に見える人となったのだから、絵筆で描かれなければ逆に、神が人となったことを否定することになる、という解釈を100年かけて編み出し、偶像崇拝を正当化。

ラベンナ:世界遺産のビザンチンモザイク、ガッラ・プラキディア廟堂(2025年5月撮影)

⒉カトリック教会

教会とは、キリストに出会い、キリストを人生の力、光、支えとして体験し、キリストを通して神に導かれていった人々の集まり

『キリスト教がわかる』57頁

ということになります。

こうした人の集まりの中心が十二使徒で、さらにその中心にいたのがペトロ。だからローマ・カトリックの総本山は、サン・ピエトロ大聖堂で、最初のローマ教皇がペトロ。ローマ・カトリック的にはペトロ自身もこの地で亡くなり、この地に眠るとなっています(考古学的には相当に確度の高いと言われる)。

サン・ピエトロ大聖堂(2007年8月撮影)

現代のカトリックでは、ヨハネス三世が召集した第二ヴァチカン公会議(1962−1965)により、世界に開かれた教会として啓蒙主義的な考え方を取り入れるとともに「諸宗教対話」と称して、東方正教やプロテスタント諸派はもちろん、他宗教の存在も尊重し、積極的な交流を図っています。

ローマ:サンタ・マーリア・マッジョーレ教会(2025年6月撮影)

日本では上智大学がカトリック系の大学。

⒊聖公会(アングリカン)

聖公会は、英国国教会の流れを汲む教会。日本では「立教大学」の教派として有名な教派。

主教制を採用している点はカトリック的。主教を通じて最初の信仰が継承されるとし、世界各地の聖公会でも、主教を中心にしたヒエラルキー的組織。

大英帝国の植民地政策の名残で、海外に多くの宣教師を派遣したこともあり、アメリカはじめ、アジア・アフリカにも多くの信者がいるという。

カトリックから分裂前の英国国教会は、実質的な初代ローマ教皇グレゴリウス(在位590−604)がイングランド出身の奴隷アウグスティヌス(『告白』著者とは別人)をイングランドに派遣し、彼が初代カンタベリー大主教となったのがそのルーツ。

その後ヘンリー八世(在位1509-1547)が自ら首長となってローマ・カトリックから英国国教会を分離独立。

「自らの教会が民族自立の動機から成立した」という歴史的背景から、フィリピンなど各国の独立運動を契機にカトリックから分離した教会に共感。

教義的にはカトリックとプロテスタントの中間くらいの立ち位置。

ニューヨークのカトリック教会「セント・パトリック大聖堂」(2015年8月撮影)

⒋ルーテル教会

マルティン・ルター(1483-1546)の宗教改革の結果として成立せざるを得なかった最初のプロテスタント(「抗議派」)の教会。

「信仰の基本は聖書のみ」なので、誰でも聖書を読めるよう、ラテン語・ギリシア語メインであった聖書をドイツ語に翻訳。

人は誰でも罪人だから、神に助けと救いを求めるしかない、という教え。いわゆる「恵みのみ」「信仰のみ」。

千葉県市川市:日本福音ルーテル市川教会(2025年9月撮影)

東方正教会やカトリックと大きく違うのは主教制をとらないことで「万人司祭制」という、神の前にすべての人は等しく隣人のために祈ることができる、という考え方。

また礼拝の中に音楽(コラールという讃美歌)を取り入れる事を重視したことから、ヨハン・セバスチャン・バッハなどの名作曲家を生んだのもルーテル派の特徴。

主にドイツや北欧に信者が多く、ドイツ移民の多いアメリカや一部南米などにもその教えは拡散。

ヘルシンキ:岩の教会(テンペリアウキオ教会)。
偶像なくシンプルな装飾がいかにもルーテル派らしい

⒌改革派教会

プロテスタントの二大教派は、上のルター派(ルーテル教会)と改革派
(Reformed)。改革派は、しばしばカルヴァン派と混合されるようですが、カルヴァン派とは、カルヴァンの影響を受けたすべての教派を指すので、改革派はカルヴァン派の教派ではあるものの、全部ではありません。

改革派とは「み言葉によってつねに改革される教会」という意味。

改革派教会は、つねに聖書を読み直し、伝統的教理を批判的に継承し直し、自分が生きる場所、時代にふさわしい新しい信仰告白をつくるという。

ベルンなどの自由な欧州の都市で生まれた改革派は、組織的には長老制度をとり、教会員の中から選任した信徒(=長老)が担って長老会議を組織(日本語では中会という)。

ベルン(2014年8月撮影)

長老と牧師は、一部兼務するようですが、牧師になるには別途専門的な神学の勉強が必要。確かに先に紹介したアメリカ映画「リバーランズ・スルー・イット」でもブラッドピットの父役は改革派の一派である長老派の牧師でしたが、説教のために必死に毎日勉強する姿が映像に映し出されていました。

その長老派ですが改革派の中でもスコットランド発祥が長老派(Presbyterian)で、一部ピューリタンの中にも長老派の人々が存在するし、フランスでは迫害されたプロテスタント=ユグノー派が改革派。

ちなみにトランプ大統領は信心深いようにはみえませんが、母方がスコットランド移民ということもあってか長老派を自称しているようです(父方はドイツ移民でルーテル派)。

なお、アメリカの福音派ですが、長老派のうち、保守的な人々は彼らに含まれるそう。

アメリカで「福音派(Evangelicalism)」と呼ばれる運動は、教派そのものではなく、聖書の権威・個人的回心・宣教の強調を特徴とする超教派的な潮流.

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カナダ バンフ セントポールズ長老派教会
(2011年9月撮影)

⒍会衆派教会

英国エドワード六世が推進した上からの宗教改革の中で誕生したのがピューリタン思想ですが、ピューリタンはエリザベス1世が確立したイギリス国教会体制のもとでは非国教徒とされ、迫害の対象に。

会衆派は、そのピューリタンから派生した教派。「自治を主義、自由を精神」とする立場で英国における産業革命にも大きな役割を担う。

アメリカでは「ピルグリムファーザー(巡礼の父祖)」の教派として有名。彼らは1608年にイギリスからオランダに逃れ、1620年にイギリス経由でマサチューセッツ州プリマスに上陸。

困難を厭わない彼らの旅は「巡礼」と呼ばれ、彼らが求めてやまなかった自由が合衆国の理念となって今に生きている。

アメリカが政教分離を旨とするのは宗教と政治を分離したいからというよりも、政治と宗教が一体化した英国国教会の反面教師として、政治から宗教が自由であるためです。

日本では新島襄が会衆派として有名ですから同志社大学も会衆派の大学ということですね。同志社大学が自治自由の精神を旨とするのは、このような会衆派の教義から生まれた大学だからでしょう。ちなみにハーバード大学イェール大学も会衆派の大学。

そして北海道大学(当時は札幌農学校)にやってきて「少年よ 大志を抱け(Boys Be Ambitious)」と唱えたクラーク博士。

北海道大学キャンパスにあるクラーク博士の胸像(2025年10月撮影)

クラーク博士も会衆派だからこそ、自治自由の精神を体現した言葉を北海道大学に残したのでしょう。

北海道大学博物館で紹介されていたクラーク博士の「自主独立の自修心」

「自由を精神」とする会衆派は、キリスト教の中でも珍しく同性愛者の権利を認める教派。

⒎バプテスト

過去に「米国のキリスト教史をたどる・・・」でもその思想をアメリカ「反知性主義」の文脈の中で紹介したバプテスト。

この中で紹介したようにバプテストは幼児洗礼を否定し成年洗礼を重視。

今日バプテストと呼ばれる教派は、17世紀初頭にイギリス国教会を離脱してオランダに渡り、そこで自らの主張に基づいて教会を設立したジョン・スミス(1570?-1612)に遡る。

ルターのいう「万人祭司主義」を徹底し、特定の教育を受けた者だけが祭司(牧師や神父)になるという考え方を否定。教義も各教会でバラバラで良しとする厳格な各個教会主義。

したがってアメリカ南部のバプテスト連盟が1979年にその理事会の中枢が原理主義的になった時点で、バプテストのバプテストたる所以が否定されたことで、当時バプテストだったジミー・カーター大統領が離脱したのはアメリカでは有名な話だそう。

⒏メソジスト

メソジストも「米国のキリスト教史をたどる・・・」で「読み書きができるパプテスト」として紹介。

メソジスト(「几帳面屋」の意味)は、18世紀イギリス産業革命がもたらした労働者階級の過酷な状況のなか、魂の救いを求めていた労働者の間で広まったジョン・ウエスレー(1703-1791)主導の運動が発端。

当初は、規則正しく生活することを定め、毎朝同じ時間に起床し、祈り、聖書を学び、礼拝を守り、困っている人たちを救う活動をしていたという。

ウエスレーは「世界は我が教区なり」を合言葉に世界中で福音を伝え、生涯に225,000マイル(36万2100km=地球9周分)を旅し、少なくとも4万回の説教をしたという。

ウエスレーは組織の天才とも言われ、組(バンド)→班(クラス)→会(メソジスト・ソサイアティ)を組織し、それぞれリーダーを訓練して運動を推進。

日本では江戸幕府が開国すると一番にやってきたキリスト教教派がメソジストで、のちに青山学院大学関西学院大学などを設立。

以上、他にもアナバプテスト、クエーカー、モルモン教などいくつかあり。その詳細は以下参照。

いずれにしても森本あんりが言うように、宗教はウイルスのようにその土地や時代によって変容していくので、生き物のようにこれからも多くの教派が生まれるかもしれません。

*タイトル写真:「受胎告知」フィリッポ・リッピ作(サン・ロレンツォ聖堂:フィレンツェ)(2025年5月撮影)











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