植物の組織培養をやりながら挿し木や挿し芽とさほどちがいはないはずだがとふと考えた
はじめに
現在、大学でやっているのは植物の組織培養。なにも難しいことはない。ある植物組織をニンゲン(この場合、わたしだが)の都合に向くように培養管のなかで育てる作業。その実習のお手伝いをしながらふと思うことがあった。
きょうはそんな話。
滅菌操作など
組織培養に用いる器具は基本的にいずれも細菌やウイルスのいない状態を保ちすすめられる。それにはさまざまな滅菌作業がもとめられる。何のことはない。家庭用の圧力釜でもこと足りる。それから昨今の流行り病でお世話になり世間の方々もふだん使いされる消毒用アルコールも多用する。
つまりはそんな環境のもとで植物を扱えばいい。慣れてしまえば何のことはない。大学に入りたての何でも初体験の学生さんたちに、そんな作業になじんでもらう。どこをどうすればよいのか最初のうちはつかみづらいようだ。慣れないうちは意外なところでうっかりをやりがち。
結果は予想のとおり。ときとして十数日のちの結果にあぜんととする。どこからともなく舞い込むカビの胞子を混入させて中を色とりどりにしてしまう。そこで操作のどこに問題があり、それをいかに見つけて解消するか実習をやる目的の半分はそこにある。これは植物のみならず微生物の培養でもおなじ。
刃物のあつかい
実習作業では植物の組織を切り刻む。刃物は滅菌さえ確実ならば何でも構わないが、やはり操作の都合上コンパクトなもののほうがいい。ここで登場するのが安全カミソリやメス。これらの刃物は引いて切る道具。切れ具合は半端でない。うっかり刃先に触れるべきでない、ヒトに向けない注意をうながす。
ステンレストレイ上の試料を小さく切リ分ける実習。押し引きする必要はないはずなのにノコギリでやるようにやってしまう学生さんや、なかには刃物そのものをあまり手にしたことのないと見受けられる方もいる。
「こうして引くだけでいいですよ。」とやってみせる。どのくらいで試料に触れるといちばんスムーズに切れるかどうか実際にやりながら身につけてほしい。試料の組織や細胞をズタズタにせずに、なるべく健全なかたちを保ちつつ望みのかたちに切り出せるまでになってほしい。
ものを移す
そしてさまざまな栄養素などを含んだ寒天培地の入った培養管へ植物組織をそっと置く操作。ここではこれまでのいろいろな経験がものをいう。小さな対象物をすくいあげ、あるいはピンセットや針先でもちあげ、培養管の奥底の寒天の上へ静置する。ただそれだけの作業でも手際よくやろうとすると、慣れないうちはなかなかそうはいかないもの。
たいていこの操作の途上で手間どると、クリーンベンチ内では滅多なことでは起こらないはずのさまざまな不都合まで生じやすい。そこでまずは実習では敢えて実験室の机上でひと通りの操作をやってみる。これとて効率よくやればうまく何十日のあいだカビなどを生やさず維持できる。
挿し木や挿し芽
よくよく考えると実際にふつうに挿し木などは屋外でほぼ滅菌操作などせずにおこなうし、それでも植物の種類や組織によってはなにごともなく殖やせる。周囲は細菌やウイルスに囲まれているはずなのに。
一方で、実験ではより確実におこなうための滅菌操作。実験室の環境は、科学の試行の場なのでことごとく余分なことは排除したい。さらに再現性が求められるので滅菌したうえで、ほかの要因を排除しつつ目的の操作を行うべきもの。この目的の違いはわかりにくいかもしれない。
おわりに
なにごとも経験がものをいう。失敗をつうじてどうすればうまくいくか、そしてどう扱えば確実にできるのか。要所をつかむための実習や実験を今日もお手伝いする。
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