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リフレクションコーチング|1on1をしても部下が育たないのは、振り返りが反省会になっているからだ


1on1をしているのに、何も変わらない

1on1をしている。

話も聞いている。

最近どうかも聞いている。

困っていることはないかも聞いている。

それでも、部下が育っている感じがしない。

次の1on1でも、前回と同じ話になる。

同じ悩み。
同じ詰まり。
同じ言い訳。
同じ反省。
同じ「次は気をつけます」。

この状態になると、上司は少しずつ疲れていく。

ちゃんと時間を取っているのに。
こちらは話を聞いているのに。
本人のためを思っているのに。

なぜ、変わらないのか。

その原因は、部下の素直さや能力だけではない。

1on1の中で、経験が学習に変わっていないのである。


振り返りが、反省会になっている

多くの1on1では、振り返りという名の反省会が行われている。

何ができなかったのか。

なぜできなかったのか。

次はどうするのか。

一見すると、まともな問いに見える。

しかし、この問い方は相手を閉じさせることがある。

特に「なぜできなかったのか」は危うい。

本人がまだ出来事を整理できていない段階で「なぜ」と聞かれると、人は観察ではなく防衛に入る。

理由を探す。
言い訳を避ける。
責められない答えを選ぶ。
上司が納得しそうな反省を言う。

そうなると、振り返りは学習ではなく、処理になる。

面談を終わらせるための言葉が並ぶ。

「準備不足でした」
「確認が足りませんでした」
「次は早めに相談します」
「もっと意識します」

どれも間違ってはいない。

でも、何も増えていない。

次に同じ場面が来たとき、本人の見えるものが増えていない。

だから、また同じところで詰まる。


本当に見るべきなのは、失敗理由ではない

リフレクションコーチングで見るのは、失敗理由そのものではない。

その場面で、本人が何を見ていたかである。

何を重要だと思ったのか。
何を危険だと思ったのか。
何を避けようとしたのか。
何を守ろうとしたのか。
誰の期待を気にしていたのか。
どの情報を軽く見ていたのか。

ここを見ると、失敗は単なるミスではなくなる。

本人の認知地形が見えてくる。

認知地形とは、人が何を見て、何を重要だと思い、何を選べると思っているかの地形である。

部下が動かないのではない。

動ける道が見えていないのかもしれない。

相談しないのではない。

相談してよいタイミングが見えていないのかもしれない。

考えていないのではない。

何を考えればよいかの枠が見えていないのかもしれない。

この見え方を扱わないまま、「次は気をつけよう」で終わるから、経験が積み上がらない。


リフレクションコーチングとは何か

リフレクションコーチングとは、経験を問い直し、感情・判断・行動・前提を整理することで、本人の学習能力と次の選択肢を増やす対話技法である。

短く言えば、経験を、次の選択肢に変える対話技法である。

ここで大事なのは、相手に正解を言わせることではない。

相手に反省させることでもない。

本人がその経験を、もう一度扱える形に戻すことである。

何が起きたのか。
何を感じたのか。
何を大事にしていたのか。
何を見落としていたのか。

次に同じ場面が来たら、何を変えられるのか。

この順番で見ていく。

すると、経験はただの過去ではなくなる。

次に見る場所を変える材料になる。


問いは、相手を開くことも閉じることもある

1on1で一番危ないのは、上司が「よい質問をしているつもり」になることである。

質問は、中立ではない。

問い方によって、相手の見える世界は変わる。

「なぜできなかったの?」と聞けば、失敗理由を探す。
「どこで迷った?」と聞けば、分岐点を見る。
「何を守ろうとした?」と聞けば、本人の価値観が見える。
「誰にどう見られることを気にしていた?」と聞けば、関係性が見える。
「次に同じ場面が来たら、最初に何を見る?」と聞けば、次の選択肢が生まれる。

問いは、情報を集めるためだけのものではない。

問いは、相手の認知地形を照らすためのものである。


現場で使う問い

まず、出来事を戻す。

「その場面を、最初から順に戻すと何が起きていましたか」
「どこから空気が変わった感じがありましたか」
「事実として確認できることと、推測していることを分けるとどうなりますか」

次に、感情を分ける。

「そのとき、一番強かった感情は何でしたか」
「怒りに見えるけれど、奥に不安や期待外れはありませんか」
「本当は何を大切にしたかったのだと思いますか」
そして、判断を取り出す。
「その瞬間、何を優先しましたか」
「何を避けようとしていましたか」
「本当は選べたけれど、選ばなかった選択肢はありますか」

最後に、次の選択肢へ変える。

「次に同じ場面が来たら、最初に何を見ますか」
「次は、どの一言を変えますか」
「完璧でなくても、次に試せる最小行動は何ですか」

これだけで、1on1の質はかなり変わる。

反省を引き出すのではなく、経験を再編集する場になる。


注意したいこと

リフレクションコーチングは、使い方を間違えると危ない。

相手を内省させる技術は、相手を追い詰める技術にもなり得る。

特に避けたいのは、気づきの強要である。

「あなたは本当は、こう思っていたんじゃない?」
「つまり、こういうことに気づいたんだよね?」

こう言われると、相手は考えるのをやめる。

自分の言葉ではなく、上司の言葉を受け取るだけになる。

もう一つ危ないのは、自己責任化である。

本人の受け止め方だけを扱い、情報不足、権限不足、業務量、評価制度、上司の任せ方を見ない。

これでは、組織の問題が本人の内省不足に押し込まれる。

リフレクションコーチングは、本人の内面だけを見るものではない。

本人の見え方と、組織の条件を一緒に見る技法である。


明日から見る場所

次の1on1で、すぐに大きなことを変える必要はない。

まず、一つだけ変えればよい。

「なぜ?」の前に、「どこが?」と聞く。

これだけでいい。

なぜできなかったのか。

ではなく、

どこで迷ったのか。
どこで止まったのか。
どこで怖くなったのか。
どこで相談しづらくなったのか。
どこで自分だけで抱えようとしたのか。

この問いは、相手を責めにくい。

そして、出来事を観察しやすい。

1on1は、正しいアドバイスを渡す場ではない。

相手が、自分の経験をもう一度見られるようにする場である。

振り返りは、過去を見ることではない。

次に見える世界を変えることである。

リフレクションコーチングは、そのための技法である。


参考リンク

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