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孤篷のひと 葉室麟 茶人 小堀遠州 作庭|夜明けの読書室 心を澄ませる

🕓 朝4時。まだ誰も起きていない。
庭に出る。鳥のさえずりに、今日も「生きている」と感じる。
墨を磨る。心の中が澄んでいく。
今朝はルービンシュタインのピアノが、僕のこころを整えてくれる。


おはようございます。

文庫本(右)と単行本

大切な友人に教わった、大事な一冊。大名であり茶人であり作庭家でもあった小堀遠州の生き様を描いた本だ。何度読み返しただろう。最初は通読し、そのあとは好きな章や、その時々に気になった話を拾い読みしている。

歴史の入門書としても秀逸だ。千利休をはじめ、秀吉、石田三成、藤堂高虎……名だたる人物が次々に現れる。世のことに疎い僕にも、「茶」や「庭づくり」、そして「禅」へ通じる道筋を、登場人物の生き様を通して静かに示してくれる。そこに語られることは、今を生きる私たちにも響く。舞台の多くが大好きな京都というのも嬉しい。昔日の京都と今の京都がページの上で重なっていく。たとえば千利休の死へとつながる「大徳寺の山門」の件。

おすすめはすべて――と言いたいが、なかでも心に残るのは「雨雲」だ。ダ・ヴィンチに比されることもある本阿弥光悦、鷹ヶ峰、名茶碗「雨雲」。創作ながら、光悦の母・妙秀の深い愛が静かに流れている。いつか、この母が愛した男のようでありたいと思わされる。次に挙げるなら「泪」。秀吉遺愛の茶杓「泪」に命を懸けた、古田織部の娘の信仰と人間愛の物語。どの章も、「生きる」とは何かをそっと手渡してくれる。単行本の帯にある「天下を泰平たらしめる茶を点てたい」という言葉のとおり、誰にとっても、そのひとの「茶」であり、「庭」があるのだろうと思う。

僕にだって、澄んだ涙を流したいときはある。

そんなとき、この本のあたたかな物語が、澄んだ涙とともに心を静かに澄ませてくれる。


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