第6回「答えを求めたくなる」ときの使い方
経営をしていると、誰かに答えを言ってほしくなる瞬間があります。
自分でも考えている。
情報も集めている。
周囲の意見も聞いている。
それでも決めきれない。
そういうとき、
「もう誰か、正解を教えてほしい」
という気持ちになることがあります。
例えば
・選択肢はいくつかあるが、どれが正しいのか分からない
・自分なりの考えはあるが、確信が持てない
・周囲に相談するほど、かえって迷いが増えている
・判断を間違えたくなくて、答えを探し続けてしまう
・本当は決めなければいけないのに、最後の一歩が踏み出せない
こうした場面では、単に知識が足りないわけではありません。
むしろ多くの場合は、
「何をもとに判断するのか」
「自分は何を優先したいのか」
「どこまでのリスクなら引き受けるのか」
が整理されていないことが、答えを求めたくなる状態をつくっています。
経営の判断では、
・事実として起きていること
・周囲の意見
・自分の不安
・期待している未来
・過去の経験
・失敗したくない気持ち
・責任を負う重さ
が同時に存在します。
本来は分けて考えるべきものが混ざると、判断は苦しくなります。
すると、自分で決めるために考えているはずなのに、いつの間にか「外にある正解」を探し始めてしまうことがあります。
しかし、経営には、最初から誰かが持っている正解がないことも少なくありません。
特に、承継後の経営、新規事業、組織の方向転換、投資や撤退の判断などは、会社の状況や経営者の意思によって答えが変わります。
だからこそ、実戦経営アドバイザーは
「こうすべきです」
と答えを代わりに出す人ではありません。
まず行うのは、答えを求めたくなる状態を整理することです。
例えば
・いま本当に迷っている論点は何か
・その判断で守りたいものは何か
・不安と事実はどう違うのか
・周囲の意見をどう位置づけるべきか
・自分が最終的に引き受けるべき責任は何か
・いま決めるべきことと、まだ保留できることは何か
を一緒に整理していきます。
多くの場合、必要なのは「答え」そのものではありません。
その前にある、判断の土台です。
ここが整理されると
・何に迷っていたのかが見えてくる
・他人の意見に振り回されにくくなる
・自分が引き受ける判断の輪郭がはっきりする
・完全な正解を待たずに、一歩を決めやすくなる
という変化が起きます。
経営者が欲しいのは、単なるアドバイスではないことがあります。
本当に必要なのは、
「自分で決めてもよい状態」
をつくることです。
実際には
「いろいろ聞いたが、逆に分からなくなった」
「答えをもらっても、腹落ちしない」
「最終的には自分が決めるしかないのに、決めきれない」
という形で相談されることも少なくありません。
それは優柔不断だからではありません。
経営の判断が重いのは、答えがないからではなく、引き受ける責任があるからです。
だからこそ、誰かの正解を探し続けるより、
自分が何を前提に、何を守り、何を賭けるのかを整理することに意味があります。
必要なのは、答えを受け取ることではなく、
自分で判断できる状態に戻ることです。
次回は、どんな人にこの支援が合いやすく、逆に合いにくいのかを整理します。
※本記事は、複数の支援経験をもとに再構成した内容です。実在の企業・人物とは関係ありません。
📩 判断に迷いがあるときの簡易チェック
次のような状態はありませんか?
□ 人に相談するほど、かえって迷いが増えている
□ 答えを聞いても、なぜか腹落ちしない
□ 自分なりの考えはあるが、確信が持てない
□ 間違えたくなくて、判断を先送りしている
□ 最終的には自分が決めると分かっているが、重さを感じる
もし2つ以上当てはまる場合、それは判断力の不足ではなく、判断の土台が整理されていない状態かもしれません。
私は、「こうすべきです」と一方的に答えを示すのではなく、経営者が自分の前提と判断軸を整理し、自分で決められる状態を整える支援を行っています。
60分の壁打ちでは
・いま何に迷っているのか
・何が事実で、何が不安や期待なのか
・その判断で守りたいものは何か
・いま決めることと、まだ保留できることは何か
を一緒に整理します。
まだ答えが出ていない段階でも問題ありません。
経営では、答えを探し続けるより、判断できる状態を整えることの方が先に必要なことも多いからです。
必要なタイミングかどうかを含めて、一度整理してみませんか。
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熊谷 篤(くまがい あつし)
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士
年間400件以上の経営相談に対応。承継後3年以内の後継者・創業者・第二創業の経営者を中心に、現場で「考え、決め、動ける状態」をつくる伴走支援を行っています。
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