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第8回60分の壁打ちで整理していること

60分の壁打ちというと、
「その場でアドバイスをもらう時間」
「相談に乗ってもらう時間」
というイメージを持たれることがあります。

もちろん、話を聞いてもらうこと自体に意味はあります。
ただ、実際にやっていることは、単なる相談対応ではありません。

私が60分で行っているのは、
経営者の頭の中にある論点をほどき、
判断できる状態をつくることです。

経営者の頭の中には、いつも多くのものが同時にあります。

例えば

・いま現場で起きていること
・数字として見えていること
・社員や幹部の反応
・自分の違和感
・やりたいこと
・気になっているリスク
・でも、まだ決めきれないこと

これらは、それぞれ重要です。
しかし、重要だからこそ、頭の中で全部が同時に動きやすくなります。

すると

何が事実なのか
何が不安なのか
何を今決めるべきなのか
何はまだ決めなくてよいのか

が混ざってしまいます。

その状態では、考えていても前に進みにくくなります。

だから60分の壁打ちでは、最初から「答え」を出しにいくわけではありません。
まず行うのは、混ざっているものを分けることです。

多くの場合、「問題を解く」というより、「何が問題なのかを特定する」ことから始まります。

例えば、次のようなことを整理します。

・いま本当に起きている事実は何か
・どこからが解釈や仮説なのか
・経営者自身が違和感を持っているポイントはどこか
・今回の時間で決めたいことは何か
・まだ保留してよいことは何か
・その判断で守りたいものは何か
・誰の意見を参考にし、誰が最終的に決めるのか
・次の一手として何を確認すべきか

ここが整理されると、相談前には
「全部大事で全部重い」
と感じていたものが、少しずつ輪郭を持ち始めます。

例えば

「問題だと思っていたが、まだ事実確認が必要なだけだった」
「迷っていたのは選択肢が多いからではなく、判断基準が曖昧だったからだった」
「決められないのではなく、今決めなくてよいことまで背負っていた」
「本当は、何を守りたいかは自分の中で決まっていた」

ということが見えてくることがあります。

60分ですべてを解決するわけではありません。
ですが、少なくとも

・論点が整理される
・判断の順番が見える
・次に何を確認すべきかが分かる
・自分が何に迷っていたのかが言葉になる

ここまで進むと、その後の経営判断はかなり変わります。

実際、壁打ちの場でよくあるのは、
こちらが何か特別な正解を渡したから前に進むのではなく、
経営者自身が話しながら、自分の判断軸を取り戻していくことです。

その意味で、60分の壁打ちは

「答えをもらう場」
というより
「自分で決められる状態に戻る場」

に近いと思っています。

経営では、誰かが代わりに決めてくれるわけではありません。
最終的には、経営者自身が引き受けて決めることになります。

だからこそ大事なのは、
正解らしきものを増やすことではなく、
自分の中で何を前提に判断するのかを整理することです。

60分の壁打ちでやっているのは、まさにその部分です。

「何となく重いが、何から整理すればよいか分からない」
「相談しているのに、むしろ論点が増えている」
「答えがほしいというより、一度頭の中を整えたい」

そういうとき、この時間は機能しやすいです。

必要なのは、立派な資料でも、完璧な説明でもありません。
むしろ、まだ混ざっている状態だからこそ、整理する意味があります。

60分で行っているのは、
アドバイスの提供というより、
経営者が自分の判断に戻るための構造整理です。

ある経営者の方は、毎月1回の私との時間を
「1か月で動き回った結果を客観視する時間」
と定義しています。

その方は、アイデアが豊富で行動力もあり、毎月状況が変化しています。
しかし、自分で動いているうちに「重要度」や「優先度」が曖昧になり、
「どうしたらよいか」という状態になってしまうことがありました。

そこで

・キャッシュが持つか
・事業が継続できるか
・新規事業をどの順番で進めるか

を整理することで、自信を持って次の1か月を過ごせるとのことでした。

次回は、壁打ちの結果としてどのような変化が起きやすいのか、もう少し具体的に整理します。

※本記事は、複数の支援経験をもとに再構成した内容です。実在の企業・人物とは関係ありません。

📩 判断に迷いがあるときの簡易チェック

次のような状態はありませんか?

□ 何が問題なのか、うまく言葉にできない
□ 論点が多すぎて、どこから考えるべきか分からない
□ 人に相談しても、整理されるより論点が増える
□ 決めたいことはあるが、判断基準がはっきりしない
□ 答えがほしいというより、まず頭の中を整えたい

もし2つ以上当てはまる場合、それは能力や経験の問題ではなく、論点や判断の順番が整理されていない状態かもしれません。

私は、「こうすべきです」と一方的に答えを示すのではなく、経営者が自分の前提・論点・判断軸を整理し、自分で決められる状態を整える支援を行っています。

60分の壁打ちでは
・いま何が混ざっているのか
・今回、何を判断したいのか
・その判断で守りたいものは何か
・次に何を確認し、どう動くべきか
を一緒に整理します。

まだ相談するほどか分からない、という段階でも問題ありません。
整理する前の混ざった状態にこそ、壁打ちの意味があるからです。

必要なタイミングかどうかを含めて、一度整理してみませんか。

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熊谷 篤(くまがい あつし)
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

年間400件以上の経営相談に対応。承継後3年以内の後継者・創業者・第二創業の経営者を中心に、現場で「考え、決め、動ける状態」をつくる伴走支援を行っています。

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