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【事例紹介④ サービス業】承継から3年――売上は伸びても“現場が疲弊”していた会社が再生するまで

※本記事は複数の事例を基にした再構成であり、個別の成果を保証するものではありません。


「売上は伸びているのに、従業員がどんどん疲れていく」
「会議で誰も意見を言わない」
「改善しようとすればするほど、現場が離れていく」──。

承継後に“良かれと思って”進めた改革が、
むしろ現場の疲弊を招いてしまう──。

そんなジレンマを抱えた承継者が、どのように組織を立て直したのか。

今回ご紹介するA社長の会社も、承継当初は売上こそ伸びていたものの、
現場の士気は低下し、組織が停滞していました。
しかし3年の伴走を経て、現場の雰囲気と意思決定の質が大きく変わったのです。


背景

A社長が承継したのは、地域で長年続くサービス業。
承継直後から、次のような課題を抱えていました。

  • 先代が顧客満足度を重視するあまり、業務フローが属人化

  • 承継者が「より良いサービス」を目指して改善を進めるも、現場が疲弊

  • 会議で意見が出ず、誰も意思決定に関わろうとしない

  • 「決めたことがまた変わった」と現場が不信感を抱く

  • 真面目で責任感のある従業員ほど、無力感を感じ、数人退職してしまった

「数字は悪くないのに、なぜ現場がこんなに疲れているのか分からない」
そんな悩みを抱え、私にご相談いただいたのが最初のきっかけでした。


最初の半年──“目的”の共有と現場の声の視える化

支援のスタート時点では、3か月程度でまず経営者と方向性を確認したのち、幹部・現場リーダーを交えたセッションを実施しました。

  • 各部署の業務フローを可視化し、「誰が」「何を」「どうやって」「何のために」「誰のために」行っているのかを整理

  • 業務の重複・空白・目的のズレを洗い出し、属人化を排除

  • 現場が「自分の意見が反映されない」と感じている構造的な原因を特定

  • 会議体を再設計し、現場の声を拾い上げる仕組みを構築

これにより、「改善が空回りしていた理由」と「現場が疲弊していた構造」が明確になりました。

次のステップでは、小さな改善プロジェクトを現場主導で試験的に実施。
社長が「決める」のではなく、現場が「提案し、決める」プロセスを設計しました。


1年後──現場が動き始め、自発的な提案が生まれる

半年が経過したころ、会社には目に見える変化が生まれました。

  • 業務フローと目的が視覚化され、「誰が何を判断すべきか」が明確に

  • 現場リーダーが自発的に改善案を提案するように

  • 会議で「みんなが同じ地図を見ている感覚が出てきた」と幹部が実感

  • 社長自身が「従業員と話すのが楽しくなった」と語るように

  • 業務の属人化が解消され、有給休暇の取得率が向上

  • 計画的な人材育成や人材配置が可能な状態に

ただし、すべてが順調だったわけではありません。
当初、現場主導のプロジェクトを進めようとした際、

「結局、社長の意向を忖度しなければならないのでは?」
という疑念が現場に残っていました。
そこでA社長はこう明確に線を引きました。

「最終決定は私がするが、提案と判断基準は現場に任せる」
小さな成功体験を積み重ねることで信頼を取り戻していきました。

主要会議では第三者の私がファシリテートを行い、参加者全員の意見が出る場づくりを徹底しました。

古参幹部の一部は当初「今までのやり方を否定するのか」と反発しましたが、若手リーダーが成果を出し始めると、

「数字で見ると確かに改善している」
という実感が共有され、徐々に協力的になっていきました。

A社長はこう語ります。
「これまでは“自分が決めなければ”と思い込んでいましたが、伴走してもらうことで視点が整理され、現場に任せる勇気が持てました。小さな一歩が会社全体を動かすと実感しています。」


3年後──数字の改善と組織の変化

伴走開始から3年後、現場だけでなく経営者自身の意識も大きく変わりました。

  • 業務フロー図とマニュアルの整備
     → 現場の作業が数百項目あることが可視化され、事業部長も驚くほど。
     → 現場責任者が「社長が見てくれる」と実感し、
      現場も「責任者が私たちの仕事に興味を持ってくれた」と喜ぶように。

  • スキルマップの作成
     → 従業員が「どのスキルを伸ばせばよいか」を理解。
     → 一人しかできなかった作業を複数人で分担できるように。

  • 営業利益率の改善
     → 無駄な業務を削減し、限界利益を意識した改善が進行。

  • 離職率の大幅低下
     → 「ここで働き続けたい」と語る従業員が増加。

ある現場リーダーはこう話してくれました。
「以前は努力しても誰も見てくれてないし、評価されていない気がして、不満が溜まっていました。なので真面目に取り組んでいる人ほど潰れるか辞めていくかでした。しかし今は社長が現場に関心を持ち、話をしてくれるのでやりがいを感じます。」

さらに、辞めていった若手が

「今の新社長のもとでなら」
と幹部候補として出戻ってくるという嬉しい現象も起きています。


まとめ

承継後の経営は、知識やスキルだけでは解決できない「現場の壁」に直面します。
今回のA社長のように、売上が伸びても現場が疲弊していた状態から、現場が自発的に動く組織に変えることは、決して特別な話ではありません。

大切なのは、改善を急ぐのではなく、現場と対話し、「共通の目的地」を言語化すること。
その一歩が、会社全体を動かすきっかけになります。

もちろん承継者の取り組みはこれだけでは終わりません。
今後も「より進んだ改善」と「新規事業の立ち上げ」を並行し、
現場を巻き込んだ実戦的な伴走支援を続けています。


※事例は複数事例を組み合わせるなど一部加工しています。
実在の企業・人物とは関係ありません。また、成果はあくまで一例であり、
すべての企業に同様の結果を保証するものではありません。
相談内容により、公的機関の専門家や他の士業をご紹介する場合があります。


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📌 あなたの会社は大丈夫?

サービス業の「よくある落とし穴」チェックリスト

  • □ 月1回以上の定例会議で、特定の人のみが発言し参加者の8割以上が発言しない

  • □ 業務フローが属人化している

  • □ 改善しようとすると現場が疲弊する

  • □ 離職率が高い

  • □ 従業員が「何を求められているか分からない」と感じている


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著者プロフィール

熊谷 篤(くまがい あつし)
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

年間400件以上の経営相談を行い、
承継後3年以内の承継者を中心とした伴走支援を実施。
VCでのIPO支援や、年商100億円企業の改善支援など、
多様な現場で成果を創出。

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