③【新人基礎】対認知症も:プロとしての「言葉使い」
■ 免責事項
本記事の内容は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく個人的見解です。実際の現場では、各施設の接遇マニュアルや指導者の指示を優先し、患者さんの不利益にならないよう柔軟に対応してください。
1. はじめに:丁寧すぎる敬語が、患者さんとの間に「壁」を作る理由
新人の頃は失礼がないようにと必死になりますが、実はその「完璧な敬語」が、患者さんから見れば「余所余所しい、何を考えているかわからない人」に見えてしまうことがあります。
臨床で目指すべきは、マナー講師のような完璧さではなく、**「相手に届き、相手を安心させる言葉」**です。
2. 相手によって言葉を切り替える「柔軟性」を持とう
今の私が大切にしているのは、相手の反応を見て言葉の難易度を即座に変えることです。
まずは礼節を持って接し、もし相手が聞き取りにくそうだったり、理解が難しそうであれば、即座に分かりやすい表現へスライドさせる。
「敬語を使うこと」が目的になっていないか、常に自分をチェックしてみてください。
3. 急性期で必要な見当識の確認。いきなり質問攻めにしていませんか?
相手に「こんなことを聞いて申し訳ありませんが、皆さんに聞いているのですが、訊かせてください」という心の準備(枕詞)をしてもらうだけで、不快感を与えずにスムーズに評価を進めることができます。この「一言のクッション」が、その後のやり取りにも影響します。
また、ここがどこだかわからない、意識が戻ったばかりで状況がつかめない方には「大変でしたね、ここがどこかわかりますか?」と聞き、わからなそうであれば「大変そうでしたので覚えていらっしゃらないのも無理もないかもしれません。これこれこういうことで入院をしているんですよ。大変ですが、無理せず少しずつ頑張っていきましょう」などラポール形成と見当識の再獲得を図っていきます。
4. 混乱している方の心に届く「パズー」のような距離感
特に認知症やパニック状態にある方に対して、正論や難しい説明は逆効果です。
そんな時、私は「天空の城ラピュタのパズー」になったつもりで声をかけます。
難しい理屈ではなく、短くて温かい、家族のような距離感。
「何をしに来たか」を説明する前に、「あなたの味方であること」を言葉のトーンで伝える。この使い分けができるようになると、臨床の景色はガラリと変わります。
■ 最後に
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 「言葉遣い」は、単なるマナーではありません。患者さんの不安を和らげ、信頼関係(ラポール)を築き、リハビリの効果を最大化するための、立派な臨床技術です。
この記事が、明日からの皆さんの臨床の助けになれば嬉しいです。
次回は、病棟での関係構築、そして言葉遣いの次に重要となる、具体的な臨床場面での立ち振る舞いについて解説します。
【新人PT必読④】リハ室へ運ぶだけ、と思っていませんか?「基本動作リハ」と現場の落とし穴
を公開予定です。離床や車椅子移乗、歩行練習といった「基本動作練習」を単なる作業にしないための、新人が陥りがちな罠と、ベテランが大切にする視点をお伝えしますので、ぜひ続けてご覧ください。
また、現場での関係構築の基礎ができたら、次は具体的な臨床知識を深めていきましょう。以下のシリーズも現場ですぐに活かせる内容になっています。
[▶ 【臨床での振る舞いシリーズ】接遇・目標設定・他職種連携の実際]
[▶ 【高次脳姿勢定位障害のある方への関わり】
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