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【034】 Oh come on up, ニルス 旅に 出かけよう

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(*写真はガンカモ目ガンカモ科シナガチョウ)

Oh, come on up, Nils 
旅に 出かけよう 
準備なんか いらない
春を探しに 空を行けば
初めて見るもの ばかり
『ニルスのふしぎな旅』(作詞:奈良橋陽子)

ガチョウは世界最古の家禽とされ、その羽毛、卵、肉が重宝された。主人には慣れやすく、見知らぬ人には激しく鳴くため、番鳥にもなる。かつ飛べないので逃げられない。

家禽や家畜、ペットは人工動物ゆえ、野生動物のように学術的に種を特定することは困難である。って言うか誰もやろうとしない。便宜上、「ガンカモ科シナガチョウ」と書いたが、資料により色々あって一つではない。

イヌなどは、チワワもセントバーナードも、食肉目イヌ科イヌ属イエイヌとして同じ種であり、分類すらされていないのだ。

ガチョウの品種は大量にあるが、ざっくり三系統を覚えれば十分。

1、エムデン種(Emden goose)
原種はハイイロガン。ユーラシア西部で主流。
ドイツで食肉用に改良が重ねられた。
エムデンはドイツの地名。

2、ツールーズ種(Toulouse goose)
原種はハイイロガン。
肝臓を肥大化させ、フォアグラ用としてフランスで開発。
ツールーズはフランスの地名。

3、シナガチョウ(Chinese goose)
原種はコクガン。ユーラシア東部で主流。
嘴の上部に瘤があり、上質な羽毛が特徴。

この「原種」とやらもいろんな説があり、正解は一つではない。ただ西洋の民話に出てくるガチョウは、ほぼエムデン種と思って間違いない。

ガチョウは、アヒル、ニワトリよりもかなり格上の家禽である。理由は、完全草食だから。アヒルはミミズやカエルも食うし、ニワトリも残飯でもムシでも食う雑食だ。西洋人が食う肉は、草食動物>雑食動物、肉食動物は食べない、という明確な基準があるのだ。

ガチョウ肉は最高級品であり、マッチ売りの少女が炎の中に幻影を見たのがガチョウのロースト。野坂昭如の『マッチ売りの少女』は、釜ヶ崎三角公園で、マッチの炎が灯る時間だけ「ご開帳」して見せる路上娼婦の話。

では『ニルスのふしぎな旅』について。1906年、スウェーデンのセルマ・ラーゲルレーヴの原作。女性初、スウェーデン初のノーベル文学賞の受賞者で、かつてはクローナ紙幣の肖像でもあった同国を代表する文化人だ。

当時のスウェーデンは方言が乱立し、「標準語」「標準的な文体」が存在しなかった。そこで政府はセルマに国語教材としての標準語の確立を依頼、ニルスの執筆となった。また国体強化のため、スウェーデンの地理を隈なく学習できるよう、ニルスが国中を旅するのである。

ではモルテンの話。

伊:マルティーニ
西スペイン:マルティネス
ポルトガル:マルティンス
仏:マルタン

英:マーティン
蘭:マールテン
独:マルティン
スウェーデン:モルテン

【023】 つば九郎はスワローではない」で説明したように、日本でツバメと呼んでいるトリ、西洋では Swallow, Martin, Swift の三つに分類される。ではモルテンは Martin(ツバメ)なのか? いや、ガチョウである。

Martin は、ローマ神話の軍神マーズから派生した男名。有名人は聖マルティヌス。4世紀に現在のハンガリーあたりで生まれ、現代でも仏独の守護聖人であり、マルティン・ルターの名付けの元ネタだ。しかしツバメの Martin との関連性は不明である。

聖マルティヌスの日(11月11日)は、農業の最終日であり一年の苦労をねぎらう祭りの日。西洋ではこの日に聖マルティネスゆかりのガチョウを食べる習慣がある。

ニルスとモルテンは、聖マルティネスの日の二日前に帰宅。モルテンは危うく殺されて、一家のご馳走になるところであった。

ニルスの日本初の和訳は、1919年発表、香川鉄蔵の『飛行一寸法師』。国立国会図書館デジタルコレクションで画像ファイルを読むことができる。残念ながら原作が二巻なのに対して、『飛行一寸法師』は一巻のみの翻訳である。

人語を話すトリの想創話。古くはイソップ寓話などでたくさんあるが、原作者が明確な作品としての世界初は、1843年発表、デンマークのアンデルセン『みにくいアヒルの子』だと考える。二番目はニルスではなかろうか?

そして三番目は日本人作家の想創話だと考えている。
誰のどんな著作だろうか?

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