2026/01/10 さよならのあとに残るもの 〜決めたはずなのに揺れる心〜
2026/01/10
きりっと冷えた朝の空気の中で、ほろ苦い香りが一気にひろがる。
冷蔵庫から取り出した紙パックが、思いの外ひやりと吸いつき、少し驚く。
温めた牛乳を細く垂らしていくと、マグカップのコーヒーが、じわじわと柔らかいベージュに変化していくのを眺める。
ゆっくり眺めていられるのは、今日が休日だから。
そんなちょっとした特別を楽しむ。
朝の寒さをよそに、カフェオレの湯気と香りだけが、自分のまわりに小さな、誰にも邪魔されないあたたかな居場所をつくり出している。
今日は、いくつかの「終わらせること」が待っている日。胸の奥に小さな重たさが残っていた。
「終わり」を伝える時間
ピアノ教室へ向かう道。
何度も通った道なのに、今日は少し違って見える。
辞めることを、先生に直接伝え、退会届を出す。
事前にメールで連絡はしていたけれど、面と向かってお話しするのは気が気ではない。
長女はきちんと挨拶をして、落ち着いた様子で話していた。丁寧に話を聞いてくださる先生の声を聞いているうちに、いろんな感情が巡っていたのだと思う。
「もう少し一緒にできると思っていた」という先生の言葉に長女の目に涙が溜まった。
先生が嫌いなわけじゃない。
レッスンがなくなると思うと、寂しくなる。
自分でもわからないけど、涙が出た。
そう、あとで話してくれた。
辞めることを決めたのは、長女自身。
でも、終わることは、やっぱり寂しい。
3歳から続けていたピアノ。
悲しくないわけじゃない。
たくさん迷って、悩んで決めた。
終わりを選ぶと、必ず、残る気持ちがある。
次女はピアノを続けていくことを選んだ。
レッスンは変わらず毎週末ある。
長女だって先生に会いたくなったら、会えるのだ。
ピアノだって、弾きたくなったら弾いたらいい。
そう伝えると、「うん」と頷いていた。
手を動かす午後
ピアノ教室の帰りに買い出しをして、義実家へ。
ラベリングをしたファイルを渡してあったので、義母が自分である程度進めていた。
どこに振り分けていいかわからないという書類を仕分けし、必要なものと、もう役目を終えたものを分けていく。
夕方、義母が作った肉じゃがをお裾分けしてくれた。
甘辛い匂いが、家の空気をやわらかくする。
次女は来週のグレードテストに向けて、帰宅後もピアノを弾く。どこか誇らしげ。
そんな次女を、長女はそばで眺めていた。
それぞれのペースで、それぞれの場所に立っている。
「辞める」という決断をしたからといって、すっきりと割り切れるわけじゃない。寂しさや迷いが残っていても、それは自然なこと。
むしろ、涙が出るということは、それだけ大切な時間だったはずだ。
さよならは、前に進むため
やめることは、決して失敗じゃないと思う。
疲れたら休んでいいし、離れる経験が新たな何かを連れてくるかもしれない。
今の自分に合わなくなったものと、いったん距離を置くという選択。
それは、すごく勇気がいるけれど、前に進むための整理なのだと思う。
涙が出るほど、大切だった。
だからこそ、終わりを選ぶのは、簡単じゃない。
前に進もうとしているのに、涙が出る。
その矛盾を抱えたまま、前に進んでいく。
それも成長なのかもしれない。
あなたにも、終わらせたのに、心が追いつかない出来事はありますか?
そのとき、自分にどんな言葉をかけましたか?
長女の涙は、大切な時間への感謝だったのだと思う。
人は少しずつ次の場所へ向かっていく。
いろんな感情を抱えて、新しい一歩を踏み出していけばいいのではないかと思う。
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