職場の雑談を記録し続けた3年間──メモ帳に残された3つの対話
自己紹介ページです。
これまで何度かnoteの中で、僕が47歳のときに心身の不調から3ヶ月間休職し、復職後に職場の雑談を3年間記録し続けたという話をしてきました。
当時、日々の会話を書き留めていた3年分のメモ帳は、今でも大切に手元に残っています。
これまでは「記録していた」という事実だけをお伝えしてきましたが、今回はそのメモ帳の中から、当時の空気感がそのまま残っている会話を3つご紹介したいと思います。
(1)〇〇群3大いい人
ヤマダ1尉:「今度、応援でうちの職場に来てくれるキムラ3曹は、誰から聞いても異論がないいい人の代表だよね」
サトウ2曹:「タナカ、〇〇群で、いい人3人言ってみろ。キムラ、マツダ……あと一人は誰だ?」
タナカ士長:「う〜ん、ヤマモト2曹ですか?」
サトウ2曹:「ぜんぜん違う!はい、誰だ?」
タナカ士長:「ヤマダ3曹ですか?」
サトウ2曹:「違う!あいつは腹黒いから違う!」
*近くにいるヤマダ3曹が苦笑いをしている
タナカ士長:「う〜ん、誰ですか?」
サトウ2曹:「目の前にいるだろ。サトウ2曹が!〇〇群の三大聖人と言ったら、キムラ、マツダ、サトウなんだよ。これ今度の試験にも出るからな。必須項目だぞ」
(2)宇宙部隊
ヤマダ1尉:「今度、宇宙部隊が発足するみたい。サトウ2曹、発足したらそっちに移るかい?」
サトウ2曹:「えっ、俺そこに移ってなにやればいいんです?」
ヤマダ1尉:「えーと、そうだな……宇宙ゴミの処理」
サトウ2曹:「ゴミ? ゴミ部隊? じゃあ、私、ゴミ曹ですね。ゴミか……」
サトウ2曹:「ヨシダ2尉、じゃあ、宇宙部隊僕といっしょに行きますか? ヨシダ2尉はゴミ幹部として」
ヨシダ2尉:「じゃあ、俺ら、ゴミ部隊1期生だな」
(3)午後の訓練に出れない理由
サトウ2曹:「俺、午後の訓練、子どもがインフルエンザで休むっていう設定だから」
イシダ士長:「なんですか、その設定は……」
サトウ2曹:「これは、想定の中の想定なんだよ」
イシダ士長:「じゃあ、私も熱発で休むっていう設定にします」
サトウ2曹:「さらに言えば、ホンダ2尉も休むっていう設定だから。だから職場にはイシダしかいないっていう設定で訓練をやるから」
イシダ士長:「なんですか、そのありえない設定……」
サトウ2曹:「そういえば今日の隊メシ、サンマなんだよな。俺、サンマ食べるとじんましん出るんだよな。だから午後の訓練出れないから」
これらは、日々の張り詰めた業務の合間に交わされていた、他愛のない雑談の一部です。
お笑い芸人の方がネタ探しのために日常会話をメモすることがあるように、僕もまた周囲の言葉を3年間、淡々とノートに書き留めていました。
当時の僕は、ただ面白い会話を集めたかったわけではありません。
内向型である僕にとって、それは周囲の環境に適応するための観察でもありました。
人はどんな話題で笑うのか。
どのように言葉を返せば会話が続くのか。
なぜ同じ内容でも場が盛り上がる言い方と盛り上がらない言い方があるのか。
そうしたことを知りたくて、僕は会話を記録していました。
そして、記録を重ねるうちに気づいたことがあります。
それは、雑談とは単なる暇つぶしではないということです。
そこには、人が場の空気を和らげる工夫や、仲間との距離を縮める技術、関係性を維持するための知恵が数多く含まれていました。
例えば今回紹介した会話も、内容そのものに大きな意味があるわけではありません。
しかし、それぞれのやり取りの中には、相手の言葉を受けて膨らませたり、自分をネタにしたり、さらに別の人を巻き込んだりする工夫が見られます。
今振り返ると、僕がメモ帳に残していたのは雑談そのものではなく、人と人との関係をつなぐ技術だったのかもしれません。
現在の僕は自衛官を定年退職し、介護という異なる環境で働いています。
今の職場では、今回紹介したような漫才のような掛け合いが日常的に行われているわけではありません。雑談の内容は、その職場の空気感も影響しているのだと感じています。
雑談の内容は、職場の環境でそれぞれ。
それでも、あの3年間で培った「言葉を観察し、構造を捉える」という視点は、今も僕の中に残っています。
私たちは仕事の技術を学ぶことには熱心ですが、雑談の中に隠れているコミュニケーションの技術については、あまり意識することがありません。
けれども、人間関係を支えているのは、案外こうした何気ない会話なのかもしれません。
そして、あのときのメモ帳は、そのことを僕に教えてくれた貴重な教材だったように思います。
【余談】
この記事のイラストはチャットGPTに頼んで作成してもらったものです。
僕の記事のイメージ通りになったと思い、AIには感謝したいと思います。
