人生を懸けるものはありますか|カラコルムで出会ったモンゴル書道と一匹のさそり、ポーランドからきた女性 2026モンゴルGW10日間一人旅
モンゴルで見た一枚の書道作品が、帰国してからもずっと頭から離れない。
そこにはこんな言葉が書かれていた。
「些細で数多の勝利から我を救い、ただ一つの偉大な勝利を与え給え」
世界の書道
モンゴル書道のことは何となく知っていた。
映画「聖地には蜘蛛が巣を張る」で虜になってしまったイスラム書道をきっかけに、世界の書道というかカリグラフィーを調べた時期があった。
マレーシアのイスラム美術館にも行ったくらい、文字がパワーを持つこと、美しく雄弁になることが衝撃的だったのだ。ちなみに千夜一夜物語にも書道の達人の王子様が出てきたりするくらい、イスラム書道は昔から文化として豊かなものな様子。
下記はマレーシアのイスラム美術館。建物もだし展示も素敵なので機会があればぜひ!
そこでモンゴル書道を知り、旧モンゴル文字についても知った。モンゴル書道は流れるようで美しく、これはしっかり書き順もあるやつに違いない、美しいものだと感じたのを覚えている。
そしてそこから数年。モンゴル旅行を決めてからカラコルムに行くまで、モンゴル書道を思い出すことはなかった。カラコルムでモンゴル書道の美術館を訪れたとき、ふっと頭によみがえってきた。あのときのあれだ!

Erdenesiin Khuree
そのモンゴル書道の美術館の名前は Erdenesiin Khuree 。この書道美術館を訪れたのはカラコルムの2泊3日ツアーでのことだった。
上はホームページ。なんとWikipediaまである。
敷地内にはゲルがいくつかあり、その中で書道の展示や、モンゴル文字・書道に関連するアートピースが展示されている。モンゴル書道を体験できるところもあり、作品を買えるコーナーもある。
私たちツアー参加者を案内してくれたのはErdenesiin Khureeを運営するAgataさん。ポーランド出身、大学でモンゴル・チベット専攻を修了し現在モンゴルはカラコルムにてこのErdenesiin Khureeを運営しつつモンゴル書道に従事している。Agataさんがモンゴル書道の歴史や展示、モンゴル書道のありかたについて解説してくれた。
モンゴル書道
モンゴル書道はモンゴル語で “Монгол уран бичлэг” といい、美しい文字という意味がある。(これを聞き取れた時、ロシア語がわかることが本当にありがたいと思った)
古代モンゴル文字に基づいた書法をもち、文字は「頭」「歯」「幹」「腹」「弓」「尾」と呼ばれる6つの主要な筆運び(線?)で構成されている。つまり動物に見立てているのね。
旧モンゴル文字
モンゴル語は現在キリル文字で表記されている。これは色々な背景があっての国としての決断だったようなのだけど、その一つに識字率向上の狙いがあった。その結果としてモンゴルは高い識字率を誇るようになったけど、旧モンゴル文字はメインストリームから外れる形になってしまう。
美術館 Erdenesiin Khuree の展示と体験

ホワイトボードの向かって左側に貼られているのが、モンゴルで使われてきた文字。①~⑧までまとめられているけれど、きっと歴史の中でまだ発掘を待っている文字もあるだろうし、分類上同一とされているけど実はちょっと違うものもあるだろうし、モンゴルではきっと8以上の文字が使われてきたんだろうなあ。

モンゴル文字や書道、あるいはモンゴルの文化に着想を得た展示のゲルも。

フェルト製の半紙に水をつけた毛筆でモンゴル書道を体験してみる時間もあった。一筆書きで流れるように筆を運ぶので、やっぱり難しい。迷いがあるとすぐに線に出てしまう。初心者も初心者なので迷いしかなく、もうべこべこになってしまう。

モンゴル書道|さそりと人生と
12星座をテーマにした連作の書道作品で、とても心に残っているものがある。それが、タイトル画像にもしたこの作品。

このサソリを表現するモンゴル文字が何と書いてあるのかは分からないけれど、この作品の下に書いてある鉛筆手書きの部分は頑張って解読した。
“Хилэнц ялeв” Aaр саар олон ялалтаас аварч намайг хайрла, аугаа их ганц ялалт авчирч хайрла
意味はたぶんこんな感じ。
『さそりが勝った』些細で数多の勝利から我を救い、ただ一つの偉大な勝利を与え給え。
小さな成功たくさんよりも(そんなことで一喜一憂せずに)本当に大切な真の成功が欲しいってことかな?これって愛とかもそうだよね。これを見て、解読して、意味を調べてからずっと、今でもこの言葉とこの書道について考えている。
さそり座の神話に絡めて人生の理を示しているんだろうか。作者の信条だろうか。
この作品がいつかふっと腑に落ちる時が来るのかもしれない。その時を楽しみに生活を続けていくことにする。
情熱を傾けるもの、愛するもの

Agataさんは大学時代の専攻対象であるモンゴルの文化や文字を、自分の人生をかけて情熱を注ぐものとして選び、モンゴルに住み、仲間と共に書道に従事し、2025年からこのErdenesiin Khureeのエグゼクティブディレクターをしている。
自分の人生に、情熱を傾けられるものがあるということ、それと共に人生を共に生きていこうと決断できて実行できること、その仲間がいるということ。その情熱の先が、自分の国の伝統的な文化であるということ。あるいは自分が興味を持ち専攻した対象であること。
書道作品だけでなく、美術館にかかわる人たちがもつ背景がとても雄弁で、作品鑑賞ももちろんだけど、モンゴルで脈々と書道の文化を受け継いできた人たちの息遣いを感じるような美術館だった。自分一人でツアーを組んでいたら、候補には上げても行くのは断念していたかも。このツアーに決めて本当に良かった。
別の日に行ったカラコルム美術館もとても素敵で展示盛りもりで最高だった。カラコルム、美術館や博物館が好きな人はぜひ時間を作って美術品に行ってみてほしい。想像以上に楽しめて、もっと展示を見たいけど、ほかのアクティビティがあるからもう行かなきゃという幸せなジレンマを感じられるはず。
▼2026年GWモンゴル旅のマガジン▼
いいなと思ったら応援しよう!
旅の資金、特に現地のチップや教会、寺院、学校、歴史的施設や建造物への寄付やドネーションに使わせていただきます。
引き続き読んでいただけたら嬉しいです😌